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12話 ストーンゴーレム

今日は11話を昼12時、12話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は12話)。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!


『マスケット銃』の銃口が天井へ向けられ、スズの魔力で作り出された魔弾が吐き出され続ける。

 彼女の魔弾は1分間に約1000発発射することが可能である。

 つまり10数秒で数百の魔弾を発射することが出来る。さらに発射するだけではない。

 発射後の魔弾を彼女は操作できるのだ。


「!」

『おら! 石材共、粉々ニ砕ケロ!』


 僕に任されたせいかスズ&ロック共に非常に気合が入っていた。

 発射後、上空に待機させていた魔弾を操作。

 文字通り雨霰と降らせ、襲いかかろうとするストーンゴーレムの群を撃ち抜き、砕き、破壊していく。


 最も素早く接近してきた狼タイプの身体を砕き、無力化。

 さらに、遅れて近づいてくる人型、カマキリ、熊タイプのストーンゴーレムを次々打ち砕いていく。

 森から姿を現していたストーンゴーレムはパッと見て100体を超えていたが、スズ&ロックによってほぼ一瞬で倒されてしまう。


「な、なんちゅう『インテリジェンスウェポン』だ……あれだけいたストーンゴーレムの群を一瞬で倒すなど……」


 スズ&ロックの戦闘を初めて目にしたダガン達が驚愕し、一部弾丸発射音に腰が抜けたのかその場に尻餅をついていた。

 スズ達のバックアップに回っていたメラが、呆れたように肩をすくめる。


「ケケケケケケケ! これだけ大規模な過去文明遺跡から突然姿を現したストーンゴーレムだから、地上のと違うのかと思ったが全然たいしたことないな。もう少し面白みを持たせてほしかったぜ」

「……メラ、その心配はなさそうだよ。どうやらこの地下のストーンゴーレムは地上のとは少々違うようだ」


 つまらなそうな愚痴を漏らしていたメラに対して、僕は最初に倒されたストーンゴーレムを指さす。

 破壊された筈の狼タイプのストーンゴーレム達――それらがもぞもぞと壊された箇所が集まり、自己修復を開始していた。

 狼タイプだけではない。

 人型、熊、カマキリやその他破壊したストーンゴーレム達が再生を開始し、再び立ち上がろうとしているのだ。


 この現象にダガン達が驚愕の声をあげる。


「!? ど、どうなっておるんじゃ! 普通、ゴーレムはコアが破壊されれば動きを止める。まして再生するなど聞いたことがないぞ!?」

「しかも倒したゴーレム全部が動き出すじゃと!? あれだけの攻撃を受けて1体もコアが破壊されなかったなどありえんぞ!」


 一般的にストーンゴーレムなどのゴーレム系モンスターは、核となるコアを破壊すれば活動を停止する。

 だいたいコアは体の中心にあるため、ゴーレム系モンスターを相手にする際の基本は胴体を狙うのが一般的だ。

 コアを破壊すれば、ゴーレム系モンスターの動きは止まる。コアを壊したのにも関わらず、破壊された胴体や手足などが再生される事例は今までは報告されていない。


 僕は興味深そうに顎に手を置きながら、観察する。


 さらに森の奥から数百体のストーンゴーレムがわらわらと姿を現した。

 通常の冒険者一行なら、一瞬で倒せるであろう戦力である。


「さすが過去文明遺跡、地上のゴーレムとは一味違うね。どうやって再生しているんだろう? 倒したゴーレムの全部が再生して動き出すってことは、コアも再生しているのかな?」

「ら、ライト殿! 落ち着いている場合ではないぞ! このままでは儂らはストーンゴーレムの群に圧倒されてしまうぞ!」


 ダガンの慌てた声音に、僕は彼らを安心させるような笑顔を返す。

 この程度の物量で僕達を圧殺するのは不可能であるが、護衛対象をこれ以上怯えさせてる訳にもいかない。


「スズ、ロック」

「(こく)!」


 スズが頷くと、今度は直接銃口をストーンゴーレムの群に向け発砲!

『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!』と群が瓦礫の山になるまで魔弾を発砲し続ける。


 ――スズは魔力を追加して魔弾に多種多様な属性を付与させることが出来る。例えば猛毒、出血、混乱、視界暗転、呪い、麻痺、催眠、幻覚、衰弱などのバッドステータス。逆に回復、肉体強化、毒回復、魔術強化などの付与もおこなうことが出来るのだ。

 1発でもかすればバッドステータスを与える凶悪な魔弾を作り出すことが出来る訳だが、当然その場合は相応の魔力を消費する。

 いくらスズとはいえ属性を付与した魔弾を休みなく撃ち続けるのは不可能だ。


 だが逆に言えば何も付与していない魔弾なら、どれだけであろうとも発砲し続けることが可能である。

 ノーマルの魔弾ならスズの自動回復能力と釣り合うため、彼女(?)の体力が続く限り発砲し続けられるのだ。

 スズは伊達にレベル7777ではない。

 三日三晩でも戦闘は可能だ。


 故にこの程度のストーンゴーレムが何万体襲いかかって来てもまったく脅威ではなかった。


 ――最悪の場合はナズナを投入すれば、辺りに見える空間ごと叩き潰すことすら可能である。そのため僕達側は誰も脅威として見ていなかった。


 だがまあ、脅威として見ていないのと、これ以上の再生突撃に付き合うのは別の話である。


「メイ、形が残っている1体を手元に運んでくれ」

「畏まりました」


 彼女が軽く腕を振るうと『魔力糸(マジック・ストリング)』によって、形がまだ残っている狼型ストーンゴーレムを糸で包み込み手元まで運ばれる。


 上半身が砕かれ3分の2状態になっている。

 ダガン達も恐怖心より、好奇心が勝ってわらわらと狼型ストーンゴーレムに集まり出す。

 僕は杖でゴーレムの胴体中心を砕きながら、コアを探すが……。


「コアが無い? 普通、ストーンゴーレムは胴体中心にコアがある筈なのに……」

「本当じゃ、無いぞ?」

「胴体ではなく下半身にあるのではないか?」

「いや、下半身が砕けても動くヤツがいた。恐らくコアはわしらが考えている以上に小さいのでは?」

「いやいや儂の考えでは――」


 ドワーフ種達は襲われているのも忘れて、ほぼ半壊したストーンゴーレムを前に喧々囂々と自説を説き始める。

 だがどの説も仮説でしかなく、状況を打開する決定打にはならない。


 さらに森林奥からだけではなく、背後の草原から地響きを立ててストーンゴーレムの群が迫ってきていた。

 もちろんスズ&ロックの相手にはならない。


 マスケット銃から吐き出される際の発砲音は五月蠅いが、特に危機感を覚えることなくストーンゴーレムの群を破片へと変えていく。

 残る問題は再生するストーンゴーレムに対してどう対処するべきかだが……。


(いっそ『無限ガチャ』カードでストーンゴーレムを氷漬けにしようか?)


 再生するなら氷漬けにして身動きを止めればいいだけだ。

 その場合、僕達はともかく、ダガン達が寒くて風邪を引きそうなのが心配ではあるが。


「……? そういえばどうして手元にあるストーンゴーレムは再生しないんだ?」


 現在進行形でスズ&ロックが破壊したストーンゴーレムが再生して、こちらに攻撃をしかけようとしていた。

 なのに、コアの存在を確かめるために破壊したまま僕達の所に持ってきたストーンゴーレムは、再生する様子を見せない。


 僕の指摘にダガン達も気付き、さらに熱い議論を交わすがやはり決定的な答えは出なかった。

 僕自身も黙り込み考えてしまう。


(あちらとこちら……何が違うんだ? 僕達の側にいるから魔力が漏れ出て再生を阻害しているとか? いや無いな。なら近付くだけで下手すれば動きが止まってしまうし。第一コアも無いから魔力で干渉も何もないよね。もっとはっきりとした違いがあるから再生しないんじゃないかな……ぁっ)


 そう、答えは一目で分かるほどの違いがあるからだ。


「メイの『魔力糸(マジック・ストリング)』で作られた布の上にあるから再生しないのか……?」

「ライト様?」

「ご主人様?」


 殴り合い一歩手前の議論を重ねるドワーフ種達を除き、側にいたメイとナズナが僕の独り言に反応する。


「コアが無い理由も、再生する理由も多分だけど予想がついたよ」


 僕の言葉に、熱い議論を交わしていたドワーフ種達の動きが止まる。

 彼らの瞳には『素人が、本当かよ。まったくやれやれだぜ』といった先程までの熱い話し合いが嘘のように冷めた瞳で肩をすくませる者もいた。

 そんなドワーフ種達を前に僕は気付いた持論を聞かせるのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日は11話を12時に、12話を17時にアップしております!(本話は12話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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[良い点] 面白いです
[一言] 地面の中にコアがあって、そこから無線かものすごい細い糸でつながってるとかかな? それなら突然出現した理由にもなるし
[良い点] >冷めた瞳で肩をすくませる者もいた。 オイオイオイ 死ぬわあいつ
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