4話 各種族の人種への態度
今日は3話を昼12時、4話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は4話)。
――少し時間を戻す。
『巨塔』に視察に来た人種王国第一王女リリスが、『UR、2つ目の影』で偽者と入れ替わり、本物は『巨塔』に残って僕と色々な会話を重ねた。
その中で、彼女の口から有用な情報を得る。
『巨塔』執務室でテーブルを挟み互いにソファーに座り話し合う。
「ライト様のお話が本当ならば、ドワーフ王国を簡単にこちら側に引き込めますね」
「……リリス様、何か根拠はあるんですか?」
「はい、もちろんです!」
彼女は元気よく返事をして、その根拠を説明する。
「ドワーフ種は自身の選んだ道を究めるのを是とする種なんです」
過去の偉大なる文明を再構築しようとする者、剣や防具を製作の探求、細工、食器、マジックアイテム、etc――。
なのに過去繁栄した魔術文明が滅ぼされたからという理由で、各国は技術進化について制限しているらしい。このことはドワーフ種にとっては相当なストレスであろう。
魚に泳ぐな、鳥に飛ぶなと言っているようなものである。
「表だって逆らわないのは私達人種や獣人種はともかく、エルフ種、魔人種、竜人種をまとめて敵に回すのは分が悪く、最悪ドワーフ種そのものを滅ぼされかねないためでしょうね」
「……なるほど。確かに滅ぼされるよりは抑圧の道を選ぶでしょうね、誰でも」
僕は彼女の言葉に頷く。
リリスは力強く言葉を続ける。
「はい、間違いなく誰であろうともそう考えるでしょう。ちなみに人種王国では他国から望まれ……忸怩たる思いですが自国民を奴隷として売る場合があるのですが……5種の中で一番扱いが良いのがドワーフ種なのです」
リリス曰く――彼女自身、最初は『幼い子供を炭坑で働かせる』イメージを抱いていたが、ドワーフ達曰く『炭坑は子供の遊び場じゃない。素人は引っ込んでろ!』と言われてまず炭坑等の中に入れられないらしい。
ドワーフ種が人種奴隷を求める理由は、自分達の身の回りを世話させるため、雑事を任せるため等だとか。
「幼い頃、シックス公国会議に出席した際、ドワーフ種王族とお話しを交わす機会があったのですが……。ドワーフ王は『さっさと王を止めて、仕事や研究に専念したい』が口癖で……。幼いながらに衝撃を受けました」
リリスが遠い目をして過去を語る。
そこには確かな実感が込められていた。
故に日常の家事などならともかく、危険な仕事などに行使されることが少ない。
ドワーフ種は自身の探求以外に興味がないのだ。
極論人種どころか、他種にも興味が無いのではないだろうか?
当然、ドワーフ種全員が全員という訳ではない。一定数『ヒューマンが』と見下す層もいるらしい。
だが、職人系の仕事に就いているドワーフ種は、激しい差別をする傾向が著しく減るとか。
「なので珍しい鉱石や武器、アイテムなどを献上すれば意外と話を聞いてくださると思いますよ?」
――以上がリリスの見解である。
(ドワーフ種受付嬢に最初の頃は『ヒューマン』と見下されていたが……貴重なアイテムを納品するようになったら、180度手のひらを返されて大歓迎されたっけ)
つい地上で『SSR、道化師の仮面』を被り冒険者として活動を始めた頃のことを思い出す。あれも自分の職にとって有益な相手かそうでないかで判断していたのだろう。
――ちなみにシックス公国会議などを経験している王族であるリリスから見た各種族の人種に対する態度を聞く。
獣人種――人種をとにかく下に見る。粗暴な人物が多かった。
エルフ種――『嫌っている』というより憎しみに近いらしい。『もっとも容姿が人種と近いため同族嫌悪の発露ではないか?』とリリスは考えていた。そのせいかエルフ女王国に送られる人種奴隷は家畜として扱われていた。
魔人種――人種は手軽な労働力、家畜扱いらしい。正直、彼らにとって人種など眼中になく、彼らはむしろ竜人種の方を敵視している場面が多かった。敵視といっても憎しみや怨念的なモノではなく、彼らは竜人種をライバル視している風だった。
竜人種――自分達こそが6種族の中で一番優れていると、会議の席でも自然にそういう態度をとっていた。悪気は一切無し。秘密主義的側面が強く竜人帝国に送られている人種がどういう扱いを受けているのかいまいちハッキリとしていない。
以上だ。
メイはリリスのこの話を思い出し、僕達の次の標的をドワーフ種、ドワーフ王国にするのが良いのではないか、と提案してきたのである。
そして僕は彼女の提案に乗り、次の目標を『ドワーフ種ナーノへの復讐と、ドワーフ王国への接触』に決定したのだ。
☆ ☆ ☆
『奈落』地下執務室。
僕はメイと2人で、『ドワーフ種ナーノへの復讐と、ドワーフ王国への接触』で会議をおこなう。
アオユキはモンスターを介して『奈落』&『巨塔』周辺の監視、エリーは『巨塔の魔女』として周辺に出来つつある元奴隷人種達の街開発の手伝い。
ナズナは……妹ユメの遊び相手兼護衛についてもらっていた。
僕は執務室席に座りながら、メイから提出された計画書に目を通す。
「――やっぱり人種王国の時のように、エルフ女王国を通してドワーフ王国上層部に僕らと面会するよう働きかけるのは止めておいた方が良いか」
「はい。人種王国の場合、『人種を人道的に扱っているか』の建前で『巨塔』を視察して頂きました。しかし現在の『巨塔』が、ドワーフ王国上層部に接触するのは目立つ上、各国が納得する建前を作るのも難しいかと。逆に目を引きつけるため表だって行動することがメリットになる場合もありますが……今回はやや目的からずれますので」
「……『巨塔』としてドワーフ王国と接触したら、竜人種などから下手な誤解を受けたくないという理由で、面会を拒絶される可能性も高いからね」
話をする前に、相手の嫌がることをしては意味がない。
僕達の目的は元『種族の集い』メンバー達へ復讐し、『ますたー』とは、なぜ僕が殺されそうになったのかの真実を知ることだ。
ドワーフ王国がどの程度『ますたー』の情報を持っているか、関与しているかが分からない内に強硬手段に出る必要はない。僕の故郷を襲った存在もあるし、情報を得て物事を進めるには段階というものがある。
もちろん、あまりに酷い場合は国ごと丸ごと滅ぼすつもりだが……。
まずそのためにも情報を集める必要がある。
「ならメイの案通り、ネムムにドワーフ王国に乗り込んでもらい直接ドワーフ王と顔合わせて極秘会談を開き、彼らの持つ情報深度を判断、その上で彼らの過去の行いが酷くなかった場合は裏で協力関係を結べないか話し合ってみるか。協力してくれるならよし。拒絶して敵に回るのもよしさ」
「もし敵に回った場合は如何しましょうか?」
メイの問いに僕は大らかな態度で微笑みを浮かべ答える。
「悲しいけどその場合はエルフ女王国のように心を折るなり首をすげかえるなりして、裏から支配するだけだよ。どちらにしろ結果は変わらないさ」
「さすがライト様」
メイは僕の言葉に同じように微笑みを浮かべる。
こうしてドワーフ王国の将来を左右する会議が、『奈落』地下深くでおこなわれたのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
今日は3話を12時に、4話を17時にアップしております!(本話は4話です)
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