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番外編 モヒカンと獣人種

今日は13話を昼12時、番外編を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は13話)。

 路地裏の一角で揉め事が起きていた。


「テメェら! ヒューマン(劣等種)の分際で調子に乗ってんじゃねぇぞ、コラ!」

「オマエ達は冒険者なんてやらず、農奴として土でも弄っていればいいんだよ、このミミズ野郎共が!」

「な、なんでぼく達があ、貴方達にそこまで言われないとならないんだ!」

「そ、そうだ! そうだ! おれ達が冒険者で何が悪い!」


 エルフ女王国の国境に近い――むしろ国境線ギリギリに作られたドワーフ王国にある街で、獣人種達と人種(ヒューマン)の若者達が揉めていた。


 揉めて――というより、ライオンと虎の獣人種が、駆け出し冒険者らしい若者×2人の人種(ヒューマン)に一方的に絡んでいた。

 2対2とはいえ、二足歩行のライオン、虎の容貌を持つ獣人種冒険者vs農村から出てきたばかりの駆け出し人種(ヒューマン)冒険者。

 争いになったらどちらに軍配が上がるか、火を見るよりも明らかである。


 ライオンと虎の獣人冒険者がその辺りを考慮して絡んでいるとも言えた。


 そんな不幸な人種(ヒューマン)冒険者×2に救いの声がかかる。


「おいおい、こんな所で油を売っていたのかよ!」

「たく、若い奴らはすぐにさぼりやがる!」

「俺様達に迷惑をかけるとはいい度胸じゃねぇか!」

「早速、反省会を開かないと駄目だな!」


 声に振り返ると、全員がモヒカンに黒い眼鏡をかけた如何にも怪しい風体の人種(ヒューマン)冒険者達が、獣人種と若者の間に割って入る。

 モヒカン達が若者の壁になるように獣人種と対峙した。


 赤い髪色のモヒカンが肩に小鳥を乗せつつ、告げる。


「俺達の舎弟に話があるから、今日はこの辺りで失礼するぜ」

「えっ? あ、うん?」


 モヒカンのインパクトに飲まれ、獣人種冒険者達が混乱する。

 その隙にリーダー以外のモヒカンが若者達の背を押し、離脱を図った。

『舎弟』云々は出鱈目で、モヒカン達は若者を助けるため口八丁で切り抜けようとしているのである。


 ――しかし、そうは問屋が卸さない。


「ちょ、ちょっと待って! 何を勝手に終わりにしてるんだよ!?」

「こっちの話はまだ終わってねぇぞ!」

「チッ! さすがに簡単には上手くいかねぇか。野郎共! プランオメガだ!」

『ヒャッハー!』


 この掛け声に獣人冒険者は驚き、一歩後退る。

 リーダーを含めた5人のモヒカン達が正面から対峙する。

 リーダーが代表して告げた。


「こちらは俺達を含めて7人、そっちはたった2人だ。争うにはちょいと分が悪いと思うが? どうする?」

「な、舐めるなよ、ヒューマン(劣等種)のくせに!」


 人数差はあるが、ライオンと虎の獣人種としては一方的に絡んでいた手前、『人数が増えたから』という理由で引き下がれず、強気の態度を崩さない。

 モヒカン達としても無駄な争いを避けたかったため、人数を全面に出して警告した。これが『プランオメガ』の作戦内容だ。

 ちなみに『プランオメガ』に意味は無い。響きが格好良かったからモヒカン達がそう名付けただけである。

 しかし効果がなく内心舌打ちをしてしまう。


 一瞬即発の空気が漂う――が、それを破る第三勢力が姿を現す。


「そこまでだお前達! これ以上、騒ぐなら俺様達が容赦しないぞ!」

『!?』


 その場の全員が声のする方へと振り返る。

 皆の視線の先には偉丈夫な熊獣人、手下の猿、狸、狐、ネズミ獣人が立っていた。


 熊獣人が腕を組み挑戦的に笑う。


「話を盗み聞く限り、不当に人種(ヒューマン)達に絡んだようだな。それ以上ごねるようなら、俺様達は人種(ヒューマン)側につくが、どうする?」

「お、同じ獣人種同士なのにどうしてヒューマン(劣等種)に付くんだ、おい!?」

「フッ、決まっている――お前達には、兄貴に教わった『騎士道精神』が欠片もないからだよ!」


『決まった!』とばかりにドヤ顔で熊獣人が言い放つ。


 彼ら熊獣人達は以前ライト達に絡み、ゴールドに『騎士道精神』を叩き込まれた者達だ。

 現在はゴールドの教え『騎士道精神』に則り、今回のような問題を解決して回っている。

 結果、以前と比べて彼らの評判は非常に良くなった。

 これもゴールドが彼らに『騎士道精神』を注入したからである。


 他の者達からすれば『騎士道精神?』と疑問で首を傾げる状態だが。


 ライオンと虎の獣人種もさすがに形勢が不利だと理解し、引き下がる。


「クソがッ……、覚えてろよ! 行こうぜ」

「お、おう」


 路地裏の角を曲がり完全に2人の姿が見えなくなった所で、モヒカンリーダーが熊獣人に頭を下げる。

 一緒に新人冒険者達も頭を下げた。


「危ない所を助けてくださってありがとうございます」

「あ、ありがとうございました!」

「なんのなんの。むしろ、新人冒険者を護ろうとする気概、アンタ達も見た目と違って『騎士道精神』に溢れているじゃないか! 是非、兄貴に会ってより深く『騎士道精神』について学んで欲しいぐらいだ!」


 熊獣人は意味不明な発言をしつつ、鷹揚な態度を取る。

 助けたからといって謝礼金をねだる素振りもなく、熊獣人達は爽やかに去っていった。


 その後、新人冒険者達がモヒカン達にお礼を告げ、僅かばかりの金銭を謝礼として払おうとする。

 モヒカン達は固辞して、むしろこのまま食堂へ移動。駆け出しの彼らにご飯をご馳走しつつ、『冒険者としての心得』を長々と説明した。


 本人達曰く『助けたのにすぐ死なれたら寝覚めが悪いからな、ヒャッハー!』とのことだ。




 ☆ ☆ ☆




 新人冒険者を助け、『冒険者としての心得』を長々と説明した日の夜。

 モヒカン達が宿屋に帰ると、リーダーが小鳥に向かって長々と報告をする。


 小鳥はアオユキの従魔だ。

 故に小鳥を通してアオユキ――『奈落』に情報を伝達することが出来るのである。


「――依然、エルフ種カイトはダンジョン奥地に居ると考えられています。そのため4階層のジャングル以降は視界が悪いので、奇襲を恐れて潜る冒険者が減っているようです」


 エルフ種カイトとは、元『白の騎士団』団員で、『ますたー』の血を引く者だ。このドワーフ王国ダンジョンで人種(ヒューマン)を中心に『冒険者殺し』をおこない指名手配。

 ライトが倒し、情報取得のため『奈落』へと連れ去り、すでに討伐されている。

 その際、冒険者ギルドには『カイトはダンジョン奥地に向かっていたようだ』と偽情報を流している。

 その結果、未だに冒険者達は存在しないカイトを恐れ二の足を踏んでいるようだった。


「『人種(ヒューマン)絶対独立主義』に関して――エルフ種はエルフ女王国首都陥落の話を聞いて意気消沈している者と激怒している者に分かれています。ドワーフ種はエルフ種を嫌っているのか、酒場でそれをネタに盛り上がっていました。人種(ヒューマン)は話を半信半疑に聞いている感じですね。魔人、竜人種(ドラゴンニュート)は見かけず反応は不明です。問題は獣人種です」


 モヒカンリーダーが強い懸念を込めて告げる。


「なぜか『人種(ヒューマン)絶対独立主義』以降、獣人種の大部分が街中問わずピリピリしています。弱そうな人種(ヒューマン)冒険者を見かけたら因縁を付けるほどに……。以前はヒューマン(劣等種)と蔑む程度で、ここまで露骨な苛立ちを表に出すことはなかったのですが……その点に注意してください。以上、報告を終わります」


 一通りの報告を終えると、小鳥は窓へと移動。

 モヒカンリーダーが木製窓を開くと、『情報は伝え終わったし、仕事が終わったので以後はアフターだから』と言いたげに夜にもかかわらず飛び去ってしまう。

 モヒカンリーダーはその姿が見えなくなるまで見送ると、木製窓を閉めた。


 ベッドに腰掛ける他モヒカン達がリーダーに声をかける。


「リーダー……さっきの報告にある通り、最近獣人達がピリピリしてますけど、やっぱり原因は『人種(ヒューマン)絶対独立主義』ですよね? でもなんで関係ない獣人がピリピリしてるんでしょうね?」

「関係ならおおいにあるさ」


 モヒカンリーダーがテーブルにある水差しから、コップに移し水を飲む。

 口元を拭ってから、続きを切り出す。


「今まで6種の中で一番無能だからと見下してきた人種(ヒューマン)が、エルフ種を下して『人種(ヒューマン)絶対独立主義』なんて掲げるようになった。このまま放置したら、獣人種が一番無能の最下層になる。奴らはそれが怖いのさ」

「今まで自分達がしてきた人種(ヒューマン)差別を今度は自分達が受けるかも……っていう怯えの裏返しで、強気の態度を取っているってことですか?」

「そういうことだ」


 モヒカン達は思わず黙り込む。

 彼らの頭の中で最悪の想像が過ぎる。


「リーダー……最悪、このままだと獣人種が暴発しませんかね?」

「可能性は高いな……今はまだ大丈夫だが、時間が経てば経つほど確実に獣人種関係が焦臭くなるだろうな」

「だとすると俺達、次は獣人連合国辺りに潜り込んで情報収集ですかね」

「タフな仕事になりそうだぜ」

「だろうな。だが全てはライト()様のため。ライト()様のためなら、俺達は戦場だろうが、ダンジョンの底だろうが行くだけよ」


 リーダーの言葉に他モヒカン達がサングラス越しでも分かるほど決意に満ちた瞳で同意の声をあげる。

 個室だがあまり大声をあげると、隣室に聞こえるためあくまで抑えた音量でだ。


 確かに彼らのレベルは高くない。


 しかしライト()に捧げる忠誠心は、『奈落』の誰にも負けないつもりだ。


 リーダーが2杯目の水を口にする。


(とはいえ、今後どうなっていくのやら――)


 彼は胸中で未来を憂う。

 せめて仲間モヒカン達が誰1人命を落とすことなく、使命を全うできることを祈るしかなかったのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


と、いう訳で明日から『5章 裏切りドワーフ種 ナーノ復讐編』を開始します!

ですが、流石に毎日2話更新は体力的に限界に達したので、明日からは1日1話更新にさせて頂ければと思います。

ただ1日2話更新は皆様にご好評なので、不定期ではありますが、どこかのタイミングで一部1日2話更新をさせて頂ければと思います。

これも明鏡の体力との相談になるのですが~。


個人的に言えばラストまで2話更新が出来れば良かったのですが……流石に無理でした(笑)。

とはいえ1ヶ月半以上1日2話更新が続けてこれたのも、ひとえに皆様が読んで下さり応援して下さったからこそです! 本当にありがとうございます!

皆様が読んで下さっているお陰で力が湧いてきて、お陰でここまで書き続けることが出来ました。ただ明鏡の体力が続かなかったという訳で……少しペースダウンしつつこれからも頑張って書いていければと思います。。

と、とりあえず、これからは1日1話、不定期で1日2話にする予定ですが、どうぞ最後まで『【連載版】無限ガチャ』にお付き合い頂ければと思います!


今日は13話を12時に、番外編を17時にアップしております!(本話は番外編です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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モヒカンも熊獣人達も良い人!モヒカン達には死なずに活躍して欲しいです
カードの人達ってレベルは固定で上がらないと以前説明がありましたが、どういう基準でリーダー決めてるんだろう。レベルは同じでもステータスには当たり外れがある感じですかね?それとも、一つレアリティが高いモヒ…
モヒカンもライトが特別訓練コースを作って、もっとレベルを上げれるようにしたらよいのに。
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