13話 多くの疑問点
今日は13話を昼12時、番外編を17時にアップする予定です(本話は13話)。
人種王国第一王女リリスを迎え入れて、1週間が経過した。
彼女と今後について色々議論を重ねている。
お陰で貴重な意見もちらほらと得ることが出来た。
とはいえ流石に彼女も長期滞在しているため、そろそろ本国に居るリリス(偽)と入れ替わるそうだが。
他にも1週間、時間を掛けてユメの記憶を読んだお陰で、村壊滅の犯人に繋がる大きな手がかりを得ることが出来た――が、同時に大量の疑問ももたらされた。
ユメの記憶を読んだ『禁忌の魔女』エリーが、青い顔をして執務室に来て報告をする。
彼女から衝撃的な情報が伝えられた。
「れ、レベル9000台の人種がぼ、僕の村を滅ぼしただって!?」
「あ、あくまで妹姫様の記憶を確認した限りはですわ」
エリーの報告に、僕は驚きで執務室の椅子から思わず立ち上がり前のめりになる。
同室しているメイも、珍しく瞳を大きく広げて驚きの表情を作っていた。
エリーがなぜ村を襲撃したのが『レベル9000台の人種』だと判断したのか説明してくれる。
「妹姫様が兄上様とお逃げになる際、視界の端に空へ浮かぶ人影をとらえていましたの」
人影は上空に居て、村を攻撃しているようだったらしい。
シルエットから羽根や角、尻尾、耳も長くなく、身長は低くもなかった。極々一般的な体型だった。このことから獣人種、竜人種、エルフ種、ドワーフ種、魔人種ではなく、人種だと判断したとのことだ。
「レベルに関しては説明が難しいのですが……妹姫様の目を通して、相手のレベルを推測させて頂きましたの」
エリー曰く、記憶を通して相手の力量を計るのは当然難しい。水中でレンズ無しに魚の種類を判別するようなモノだとか。
流石に詳細な判別は付かないが……大きさや色ぐらいは分かる。
「立ち振る舞い、漏れ出る魔力の残滓などからレベル9000台かと推測しましたの。ただ、あくまで推測でしかないので外れている可能性も高いですわ」
「…………」
そう言っているが、『禁忌の魔女』エリーが漏れ出る魔力の残滓などから判別したのなら、外れている可能性はそこまでないだろう。
僕は執務室の椅子に座り直し、考え込む。
暫くしてから口を開く。
「エリーの推測が正しいなら、いくつもの疑問が出てくるね……」
人種がどうやってレベル9000台になったのか?
人種がどうして同じ人種の村を滅ぼしたのか?
人種なら、地上の人種差別を知っているはずなのに、どうして人種に敵対するのか?
レベル9000台が正しいなら、彼、彼女は『ますたー』ではないか?
『ますたー』だとしたら、どうして僕の村を襲ったのか?
レベル9000台が正しいなら、なぜにぃちゃんとユメは逃げ切ることが出来たのか?
人種であること、『ますたー』であることを装って他種が村を襲撃した可能性は無いのか?
――僕は思わず独り言を漏らす。
「『人種がどうやってレベル9000台に~』は、僕にも言えることだけど、地上ではほぼ不可能だよね? そして『ますたー』についてだけれども、仮に襲撃者が『ますたー』だとしたら、どうして村を壊滅させたんだろう。彼・彼女達にとっても、僕、つまり『ますたー』候補になり得る者については、出身の村を壊滅させなければいけないほどの存在だったということか? つまり『ますたー』は僕達にとっても敵になるってこと……?」
しかもレベル9000台が正しいなら、にぃちゃんとユメが逃げ切れたことについても理由が分からない。
仮に僕が故郷の村を滅ぼそうとした場合、確実に全滅させることが出来る。
生存者など絶対に出さない自信があった。
にもかかわらず、にぃちゃんとユメは逃げ切り生存しているのだ。
記憶を探る禁呪で見ただけとはいえ、エリーが相手の漏れ出る魔力の残滓などからレベルを大幅に外すとは考え辛い。
例えばレベル5000だとしても、村人を逃さず殺し尽くすのは難しくないのだ。
もしくは村を襲撃した者がわざと2人を見逃したとか?
だとしたらなぜ2人を見逃したのか? 理由が分からなくなる。
「……村を壊滅させた犯人を突き止める重要な手がかりを得たけど、同時に多くの疑問も出たね。正直、こんがらがって頭が痛くなるよ」
「も、申し訳ありませんですわ……」
「ごめんね。別にエリーを責めている訳じゃないよ。僕の言い方が悪かったね」
顔色を悪く心底申し訳なさそうに頭を下げるエリーに、僕は慌てて声をかけた。
エリーを責めるつもりは、微塵もない。
情報に喜びこそすれ、責めることは絶対に無かった。
「とりあえずエリーのお陰で両親、故郷を滅ぼした者の手がかりを得ることが出来たんだ。元『種族の集い』メンバー達への復讐もだが、両親や村人達の仇も絶対に取る。絶対にだ……ッ」
僕は遠慮無く胸中でグツグツと煮えたぎる殺意、怒り、復讐心を執務室に溢れ出させる。
この場に居るのがレベル9999のメイ、エリーのみだから、感情を表に出すことが出来る。彼女達ならば僕の怒りの感情を浴びて冷や汗を流す程度で済む。
仮にこの場に一般人が居たら、僕から溢れ出た悪感情のみで心臓を自ら停止、死を選んでいただだろう。
ピリピリとひりつく空気を破りメイが提案する。
「ライト様、でしたら次の目標は『ドワーフ種』など如何でしょうか?」
「…………」
僕が視線だけをメイに向けて問う。
彼女はいつも通りの無表情で説明する。
「今回エリーがもたらした情報から、『ますたー』についてより深く情報を得る必要が生じました。また以前、エルフ女王国女王リーフ7世の記憶を読んだ際、『ますたー以外に危険視する存在が居る』可能性が示唆されました。もしかしたらライト様の故郷を滅ぼしたのはその存在かもしれません」
(確かにその可能性もある、か……)
メイの指摘に、僕は頷く。
エリーがリーフ7世の記憶を読んだ際、4年に1度おこなわれるシックス公国でおこなわれる5種族会議の席で、『ますたー』に関する情報交換を各国首脳が秘密裏でおこなっていた。
その席でリーフ7世が『ますたー以外の可能性も棄てきれない。殺しておくのが云々』という呟きを耳にしたのだ。
彼女はさらに話を続ける。
「この存在に関して情報を知っている種は、ドワーフ種、魔人種、竜人種の3つの内のどれか。又は3つの内複数種が情報を知っている可能性があります。……そして人種のリリス姫様との会談で得た情報から、ドワーフ種の場合その特性から、餌さえあれば争うことなく私達の陣営に取り込める可能性が高いと知ることが出来ました」
ドワーフ種の持つ特性……その貪欲な知識欲。
それを利用しようというのだろう。
「故に元『種族の集い』メンバーの1人、ドワーフ種ナーノへの復讐も兼ねて、『ますたー』と『ますたー以外に危険視する存在が居る』情報を得るため、ドワーフ王国と接触するべきかと具申致します」
上手くいけばドワーフ王国と争わず楽に情報を得られるかもしれない。
さらにドワーフ王国を裏から支配するか味方につけることが出来れば、僕を裏切ったドワーフ種ナーノの処遇など如何様にも出来る。
「……目には目を、歯には歯を、裏切り者には裏切りの罰を、か。面白い。ドワーフ王国がナーノを裏切るように仕向けるのも一興かもしれないな」
元『種族の集い』であるナーノは、自らの所属する国から裏切られ切り捨てられた時、どんな表情をするのだろうか。
僕はメイの提案を聞き、心底愉快気に笑みを作ったのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
この13話で人種王国編は区切りとなります。
次の話はドワーフ編前の区切りとしてモヒカンの番外編を書かせて頂きました。
モヒカン達の活躍を是非お楽しみに!
また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
13話を12時に、番外編を17時にアップする予定です!(本話は13話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




