12話 ユメの記憶調査
今日は11話を昼12時、12話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は12話)。
僕は人種王国第一王女リリスとの会議を終えた後、『奈落』へと戻る。
人種王国視察団は、視察を終え既に帰還済みだ。
帰還する際、本物のリリス王女でなく、『UR、2つ目の影』で作り出した偽者が戻っている。
本物のリリス王女は引き続き『巨塔』に滞在し、今後について多々話し合いをしていく予定だ。
執務室の椅子に体を預けながら、僕はメイとエリーに言葉を漏らす。
「リリス王女の要望はちょっと意外だったけど、僕達の目的の一部真実を知るためにいつかは各国とぶつかるんだ。その過程でついでに彼女を少しだけ助ければいい。何より、人種の扱いには僕も思うところがあったからね……」
『種族の集い』時代、差別を受けた経験もあるため、一般常識的にも人種の地位があまり良くないことは知っていた。
とはいえ、まさか自国の王様ですら決められないとは知らなかった。
あまりにも扱いが悪すぎる。
少しぐらい人種の地位向上、差別軽減のため手伝いをしても罰は当たらないだろう。
「問題はユメから聞いた過去の内容だね……」
昨日、妹のユメとようやく再会を果たした。
『UR、2つ目の影』で彼女の偽者を作り出し、本物と入れ替え済み。
その後、『奈落』へと本物のユメを無事に保護した。
ユメのために作り出した彼女の自室で、『村の壊滅について』の話を聞いた。
村が襲われたのは僕が村を出て、半年後ぐらいだったらしい。
ユメ曰く――。
『夜中に大きな爆発する音がして、とうちゃん達もみんな目を覚ましたの。外へ出たら、何度も爆発音がして……あちこちでみんなの悲鳴があがって……』
辛い過去を思い出し、ユメの表情が強ばる。
『爆発音が収まるまでずっとエルスにぃちゃんがユメをギュッとしてくれて。収まったらそのまま抱っこして逃げてくれたの。でも、途中で暗くて分かんなくて川に落ちちゃって――気付いたら姫様に助けてもらったんだよ』
川とは、村を出て近くにある支流のひとつだ。
雪山の溶けた水が流れ、本流と合流しそのまま海まで流れる。
途中、人種王国、シックス公国近くを通るため、一番上の兄エルスにぃちゃん、ユメがそのまま流された結果、助かったのだろうか?
だが話では、リリス王女は『首都内部でユメを助けている』のだ。さらに一緒に流されただろうエルスにぃちゃんはどこに行ったのか?
また村で起きた謎の爆発音は?
誰かが何人かで、または軍隊などが村を襲ったのか?
謎は深まるが、これ以上ユメからは直接は聞き出すことが出来なかった。
彼女は今年で10歳。
事件が起きたのが約2年半前だ。
さすがに昔過ぎて細かいことは覚えていないし、辛い記憶のため積極的に忘れている部分もあるだろう。
僕としてはユメが無事だっただけでありがたい。
彼女が無事なら、僕達の一番上の兄であるエルスにぃちゃんも生きている可能性が高いということだ。
一応、これ以上の情報を得るために、今夜エリーの禁術でユメの記憶を読むことになっている。
彼女の記憶を読む禁術には色々助けられてきたが――カイト、『白の騎士団』、エルフ女王など激痛に悶え苦しんでいる者達のイメージしかない。
僕は執務室の席から体を起こし、前のめりになりつつエリーに告げる。
「故郷の村襲撃やエルスにぃちゃんの情報を得るため、今夜ユメの記憶を読んでもらうわけだけど……出来る限り妹が苦しまないようにお願いするね?」
「もちろんですわ! ライト神様の妹姫様であるユメ様に苦痛を与えるようなマネは、絶対にいたしませんの。ライト神様、どうぞご心配なくですわ」
エリーは力強く断言してくれるが、不安が拭えない。
僕の気持ちを察して彼女はやんわりと記憶を読む禁術について説明してくれる。
「記憶を読む禁術は――例えるなら本人の記憶を纏めた『本』を読むようなものですわ」
カイト、『白の騎士団』、エルフ女王の場合、痛めつける意味で『本』を乱暴に扱った。
時間を短縮するためページもパラパラと雑にめくり、ページを折り曲げ、千切って一箇所に集めて、欲しい情報を得るためわざと痛みを与えて刺激もした。
しかし、今回は触れただけで破れる古書を扱うように1枚1枚丁寧にめくって、欲しい情報があってもゆっくり、本人を刺激しないように時間をかけていくらしい。
「他にもライト神様の恩恵『無限ガチャ』カードを併用し、妹姫様には深く眠って頂き、痛みをまったく感じさせないことをお約束致しますわ! ……ただ丁寧にやるぶん、情報の収集にかなり時間がかかってしまう可能性が高いのですが……よろしいでしょうか?」
「もちろん、構わないよ。どれだけ時間がかかっても良いから、ユメが痛みや苦しみを感じないようにして欲しい。『無限ガチャ』カード、『奈落』や『巨塔』の人材も制限無しで使っていいからね。エリー、期待しているよ?」
「ンンゥ――ッ! ありがとうございますわ、ライト神様! わたくし、必ずご期待に添えるよう、全力を出させて頂きますの!」
エリーは僕の『期待している』という言葉が嬉しかったのか、体を喜びで震わせると元気よく返事をする。
彼女はスキップでもしそうな上機嫌で、ユメの自室へと向かった。
エリーが言うのだから時間はかかるが無痛で記憶を読むことが出来るだろう。
僕は彼女を信頼して、エリーの背中を見送ったのだった。
そして、人種王国第一王女リリスを迎え入れて、1週間が経過した頃。
ユメの記憶を読んだ『禁忌の魔女』エリーが、青い顔で執務室に顔を出し報告をする。
彼女から衝撃的な情報が伝えられた。
「れ、レベル9000台の人種がぼ、僕の村を滅ぼしただって!?」
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は11話を12時に、12話を17時にアップしております!(本話は12話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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