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8話 極秘謁見

今日は7話を昼12時、8話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は8話)。

 真っ白な『巨塔』から一瞬で、黒い世界へと移動する。

 壁際に光が灯されているため暗くはない。

 壁や天井、床がどれも黒く鏡のようにツルツルとしているのだ。そのため世界全体が黒く見えるのだ。


 リリスは知らない。

 自分が現在、世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』最下層に移動したことを。


「さぁ、リリス様、こちらですわ」

「…………」


 魔女風衣装の『巨塔の魔女』、エリーにうながされ歩き出す。

 向かう先は彼女の主が待つ玉座だ。


 コツコツと床を鳴らし、数分ほどで巨大な扉の前に到達する。

 巨大な材質不明な金属扉で、表面に細かいレリーフがデザインされていた。緻密で、豪快、計算し尽くされたデザインは、地上の職人では絶対に作り出せないほど隔絶した技術によって作られていた。


『巨塔の魔女』が立ち止まり、友好的な微笑みを浮かべつつも釘を刺す。


「この扉の先に、いと尊きお方がいらっしゃいますわ。くれぐれも失礼な態度を取らぬようにお願い致しますわね?」

「……ッ!?」


『巨塔の魔女』とは今日、短期間で多くの会話を交わした。しかし今のは初めて聞く声音をしていた。友好的な微笑みにもかかわらず瞳は一切笑っていない。

 狂信。

 少しでも意に沿わぬ行為をすれば例え王女だろうが、貴族だろうが、確実に殺されると直感でリリスは理解する。


 彼女はコクコクと何度も無言で頷く。


『巨塔の魔女』は『よく出来ました』と言いたげに満足げな笑顔を作り、道を譲る。

 同時に巨大な扉がゆっくりと動き出す。

 軋む音一つ立てず、滑らかな動作で扉が開く。


「――――」


 扉が開いた先には神話の世界が広がっていた。


 リリスの息と思考が止まる。

 目の前に広がる光景が、彼女程度の頭では理解できない隔絶した世界だったため、息と思考が同時に停止してしまったのだ。

 一瞬、彼女は死んでいたに等しい。

 それだけ驚愕する光景がリリスの前に存在した。


 霞んで見えないほど高い天井に、王城すらすっぽり入りそうなほどの広間に整然と怪物達が待機している。

 リリスが進む先に真っ直ぐ絨毯が続き、最奥には黄金と宝石、貴金属で彩られた玉座が鎮座していた。背後の壁には巨大な旗が飾られている。

 玉座の手前、階段前には3人の美少女達が並ぶ。

 さらには巨大なドラゴン、巨人、三つ頭のある巨体の獣、毛先一本まで真っ白な巨大な狼、etc。

『巨塔』で何度も目にした美女、美少女の妖精メイド達が規則正しく並んでいる。他にも異様に背の高い女性、右側が赤く、左側が青い髪の美女、長い槍のような筒を手にした少女に、黄金の鎧を纏った騎士、口元を隠した褐色美少女――多種多様で一見すると統一性の無さを感じるが、『巨塔の魔女』エリーから感じた同質のモノが全員から漏れ出ている。


 絶対的忠誠心。


 望まれたら満面の笑顔で自身の心臓を、自らえぐり出し捧げるほどの狂信すら超えた圧倒的な忠誠心をメイドの1人からすら感じ取る。

 彼、彼女達の絶対的忠誠心を少しでも損ねたらタダでは済まないと理解する。


(少しでも失礼な態度を取れば、私は問答無用で殺される……ッ)


 玉座まで延びる赤い絨毯。

 その両脇に並ぶ神話の怪物達は、1匹でも地上に出現すれば王国が終わるか、永遠に癒えない傷を作り出すことが出来るだろう。

 玉座に座る人物は、そんな怪物達から圧倒的忠誠心を向けられていた。


(玉座に座っているのは……人種(ヒューマン)の子供? 12、3歳ぐらいかしら)


 黒髪で、遠目でも分かるほど可愛らしい顔立ちをしている少年だった。

 背は低く、黄金の玉座も体格的にはまだ合っておらず、座ると足が届いていないが、容姿が優れているせいで可愛らしさが強く出ている。

 座っているのがただの人種(ヒューマン)の子供ならば、だ。


(あれはただの人種(ヒューマン)の子供なんかじゃない……怪物の中の怪物だわ……っ)


 リリスは魂で理解する。

 遠目でも分かるほど圧倒的な絶望と力の化身。

 あの玉座に座るのは確かに神だった。


(『巨塔の魔女』様の仰る通り、神――それ以外、表現しようがないわね。神話の女神に焦がれる邪神だと言われても信じるわ)


 威圧感、雰囲気に完全に飲まれてカタカタと足だけではなく、リリスの全身が震える。


『巨塔の魔女』エリーがうながす。


「さぁどうぞお進みくださいまし。ライト神様(しんさま)がお待ちかねですわ」


 昼間の会議でローブで顔を隠していたため、口元しか見えなかったが――会議の席の笑みが愛想笑いだったと今なら分かる。

 現在は神の威光に触れて、敬愛に満ちた妖艶な笑みを浮かべているからだ。


「…………」


 ここまで来てリリスに拒否する権利は無い。

 彼女は王族としての気概とプライドで恐怖心を押さえつけ、倒れそうになる足を堪えて前へと歩き出す。


『…………』


 両脇に並ぶ怪物達が興味深そうにリリスを見つめる。

 彼女はその視線だけで冷や汗、脇汗が酷いことになる。

 この怪物達が腕を動かすどころか、鼻息一つでも自身を殺害できることが近くを通ってよりはっきりと理解できた。

 内心で怯えても仕方ないだろう。


 千里もあると錯覚しそうなほど長い絨毯を歩くと、『巨塔の魔女』であるエリーと同じぐらい美しい美女、美少女が3名並んでいた。

 リリスは自然に彼女達の数歩前で止まる。

 1人は人種(ヒューマン)王国で自分達を迎えに来たメイと名乗った美女だ。

 その隣に青い髪の神秘的なネコミミ美少女。

 リリスを追い越し、『巨塔の魔女』エリーが銀髪の元気そうな美少女の隣へと並んだ。


(……跪いた方が良いかしら?)


 リリスが胸中で逡巡する。

 一般的に王族である自分が他国の王等に膝を折り、臣下の礼を取るのは外交上非常に不味い。

 例え今回が極秘の非公式謁見で、戦力、財力、人材――どれひとつ勝てる要素がなくてもだ。


『…………』

「……ッ!」


 背後、正面の美女、美少女達から無言のプレッシャーがかかる。


『なぜ跪かないの?』と。


 レベル9999を筆頭に、高レベルの者達が集まっている。

 本気で威圧した場合、リリスの心臓、精神は耐えきれず自ら『死』を選ぶだろう。

 まだ軽い苛立ち程度だが――彼、彼女達が本気で怒り出すのは時間の問題だ。


 リリスが国のメンツと自身の命を天秤にかけて跪くか葛藤していると、意外な所から言葉が飛ぶ。


「――僕が呼んだ客人に無礼は許さないよ」


 玉座の黒髪少年の一言で、周囲からの威圧はまるで最初から無かったかのように霧散する。

 一部は顔色を悪くし、必死に敬意の態度を取り続ける。


 少年は居住まいを正し、リリスへと声をかけた。


「夜分遅くにお呼び立てして申し訳ない。人種(ヒューマン)王国第一王女リリス殿。僕がユメの兄、ライトです」


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

また今日は7話を12時に、8話を17時にアップしております!(本話は8話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
「――僕が呼んだ客人に無礼は許さないよ}だとしたら、なぜにこんな圧迫面接が必要なんだろうか? 恐れさせる理由なんてないだろうに…、今後の展開で必要なのか何なのか。。。先を読むとしましょう。
[良い点] どことなくオバロチックな気が (*´﹃`*)
[良い点] 「――僕が呼んだ客人に無礼は許さないよ」 [一言] 今回の話のこのあたりの部分。 明鏡さんらしい情景描写力が発揮されていてたいへん良かったです。 最近わりと辛辣な感想を書いておりましたが、…
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