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4話 感動の再会

今日は3話を昼12時、4話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は4話)。

(ば、馬鹿な!? ただの移動に長距離転移アイテムを使用するなんて!? 『巨塔の魔女』はどれだけの財を抱え込んでいるんだ!)


 人種(ヒューマン)王城の庭から見覚えのない真っ白な建物内部へと一瞬で世界が切り替わる。

 こんなマネは長距離転移アイテムしか出来ない。


 長距離転移アイテムは王族、貴族、トップの高レベル冒険者、豪商などが、『いざ』という時に身の安全を確保し、その場から逃げるために常備する代物で、ダンジョンや遺跡から極稀に出るマジックアイテムである。

 そんな稀少な物を、ポンと移動に使うなど常識的に考えてありえない。


 人種王国第一王子のクローが驚愕するのも無理はなかった。

 反対に王女リリスは『巨塔の魔女様のお力は本物だったんだ!』と興奮気味の笑みを零す。

 兄妹で違う表情を浮かべていた。


 メイは彼女達の反応など気にせず先へとうながす。


「こちらは『巨塔』1階内部となります。謁見の間は3階になります。どうぞこちらへ」


『巨塔』1階は樹齢1000年は超えている大木のような太い柱が規則的に並んでいる。

『白の騎士団』との戦闘後、『巨塔』を中心に人種(ヒューマン)が生活環境を整えることが決定してから、客人を迎えることも想定し内部を改造した。

『白の騎士団』戦闘前は、物理的に各階は繋がっていなかったが、現在は階段でそれぞれ上り下り出来るようになっている。


 ライト達は4階まで階段で上がるのが面倒なため転移カードでちゃっちゃと移動してしまうが。


 この日のため3階に謁見室と、従者達の待合室を作り出していた。

 元々エリーの魔術&『無限ガチャ』カードを組み合わせて作られているため、内部を弄るのはそう難しい話ではない。


 階段を上がり、謁見室へ。

 扉の前に透明な羽根が生えた妖精メイド×2名が待機していた。

 どちらもタイプが違う美女、美少女で、同行している男性陣が思わず見とれるほどだ。

 とはいえ妖精メイド達の美しさもメイには及ばない。


 メイが振り返り、言葉をかけてくる。


「こちらが謁見室となります。人種(ヒューマン)王国第一王子クロー様、第一王女リリス様のみお入り下さい。中で『巨塔』の主である『巨塔の魔女』様がお待ちしております。こちらの者達がご案内いたしますので。他騎士、従者の皆様は別室で待機して頂ければと」

「……お心遣いありがとう。では皆、声がかかるまで下がっていてくれ」


 妖精メイド達に見とれていたクローが、メイの言葉に意識を復活させて部下達に指示を出す。

 リリスもお礼を告げると、彼女達の意識は謁見室内部に居る『巨塔の魔女』へと向けられる。


 メイは自然な態度で従者達をうながす。


「皆様、どうぞこちらへ」


 第1王子、第1王女が外れ、残り10名となる。

 そのまま廊下を進み角を曲がると、従者達の休憩室があった。

 扉は2つあり、どちらの前にも美しい妖精メイド×2名ずつが待機している。


「手前が男性用の休憩室。奥が女性用の休憩室となっております」

「ちょっと待って欲しい」


 リリスを護衛するため付いて来た女性騎士が手を上げる。


「なぜ男性用、女性用に分けるんだ? わざわざ分ける意味が無いと思うのだが」

「異性の視線があっては心からお休みになるのは難しいと考え、準備させて頂きました。それ以外の他意はございません」


 メイが軽く手を上げると、妖精メイド達が扉を開く。


「どうぞ、『巨塔の魔女』様達の会談が終わるまでご休憩してください。ご要望があればご遠慮なく仰って頂ければ幸いです」

『…………』


 今更『男女同室で』と口に出す雰囲気ではない。

 下手にそんなことを口にすれば『自分達は貴女方を信じていないし、安全を疑っている』と叫ぶようなものだ。

 ドラゴンを従え、長距離転移アイテムも易々と使う相手に今更逆らっても勝てる筈がない。

 ならば相手のメンツを立てた方が建設的である。


 男性騎士達と女性騎士が目線で会話をし室内へと入って行く。

 王族の護衛としてこの場に居るのだ。

 腕も立ち、頭の回転も速い者達ばかりである。

『何かあれば騒ぎを起こし、連携して切り抜けよう』と視線だけで会話をする。


 女性陣も隣部屋へとうながされる。

 女性騎士が率先して内部へと入る。念のため奇襲を警戒し、意識と体を戦闘状態にして内部へと足を踏み入れた。


「…………」


 テーブルにソファー。窓は無いが観葉植物、絵画、壺などが品良く配置され、テーブルには見たことがない果物、菓子類が美術品の如く並べられていた。

『従者をもてなす』と言うより、王侯貴族の接待部屋と言った方が納得できるレベルだ。


(人やモンスターが隠れる場所、怪しい気配は無いようだな……)


 女性騎士がざっと室内を確認した。

 リリスの護衛として抜擢された彼女は、並の人種男性騎士では手も足も出ない強さを誇る。

 リリスはよく貧民向けの炊き出し等で城外へと出る。今回のように女性騎士が前に出て、危険の有無を確認することがままあった。

 第一王女が貧民地区に赴くのは、安全を考えれば護衛としてはあまり推奨できないおこないだが、女性騎士はリリスの正義感を好意的に受け止めていた。


 それ故、初めて行く場所の危険度確認は手慣れた作業だった。

 隠れる場所が無いのも大きいだろう。

 彼女のハンドサイン後、メイド達が部屋へと入る。


 メイもそのまま部屋へと入り扉を閉めた。


「――!?」


 扉が閉まった直後、違和感に気付く。

 いつの間にか部屋の奥に1人の少年が立っていたのだ!


(馬鹿な! ありえない!? 隠れる場所など一つもなかったぞ! 第一あんな分かりやすい場所に立っていられたら見逃す方が難しい! なのにどうして!?)


 女性騎士は驚愕しつつも剣に手を伸ばし誰何し、すぐさまメイド達を護れる位置に着く。


「何やつ! 名を名乗れ!」


 部屋の奥に立つ少年は女性騎士が誰何しても反応しない。

 黒髪、美少女と見間違ってしまいそうなほど整った顔立ちの人種(ヒューマン)で、着ている衣服も質が良い。

 彼の目は女性騎士ではなく、メイド達に向けられていた。


 正確にはメイド達の中で一番幼い少女――ユメに向けられていた。

 少年は大きな瞳を涙で潤ませ、掠れた声音を漏らす。


「ユメ……ッ、無事だったんだね……ッ」

「に……にーちゃん?」

「ユメ……ッ!」

「にーちゃん!」


 メイドのユメが女性騎士を追い越し駆け出す。

 女性騎士、メイド達は混乱して反応し切れなかったのだ。

 黒髪少年も涙をこぼしながら、彼女へと駆け寄る。


 2人は正面から抱き合い互いに涙を流し合う。


「よかった! ユメが無事でよかった!」

「にーちゃん! にーちゃん! にーちゃん! ユメもにーちゃんにあいたかぁだぁぁッ!」


 突然、目の前で始まった感動の再会。


 しかし女性騎士、メイド達は最後まで感動シーンを鑑賞し続けることは出来なかった。


「っぅ、これ――!?」

「…………」


 女性騎士が背後を振り返る。

 この時点で彼女が目にした最後の光景は『SR、睡眠』を使用したメイの姿だった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

また今日は3話を12時に、4話を17時にアップしております!(本話は4話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 別に眠らせなくても空気を読んで邪魔しなかったと思うが… ぎゃーぎゃー騒ぎ出したならともかく まあ、見られるのが恥ずかしかったのかな
[一言] 王族たちは人間性が擦り切れてボロッボロになってるので大丈夫かなと思ってたのですが、人間国の騎士たちはまだ元気いっぱいですね。 変な野心を抱いて巨塔乗っ取りとか他国に情報を売ったりとか考えなき…
[気になる点] 女騎士は何故 9999レベのメイに気付けたのか…
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