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隣の席のギャルっぽい子が私のことしゅきらしいので付き合ってみることにした  作者: にゃー
8月後半

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第43話 打ち上げ花火


 私の彼女さんこと何でもできる羽須美さんは、出店でもその能力を遺憾なく発揮した。

 金魚すくいをやらせてみたらワンプレイでじゃぶじゃぶ水揚げしまくった挙げ句「あ、ウチでは飼えないので……」とぜんぶリリースして店主のおじさんのプライドを粉々にしたり。射的をやらせてみたらこれまたワンプレイで一番大きなぬいぐるみを撃ち落としつつ「黒居さんこれいる?」「うーむ……私はいいかなぁ……」「だよね。すみません、ぬいぐるみは結構なので、代わりに端っこのあのガム貰っていいですか?」とか言って私にガムくれたり。見ているだけで面白かった。


 しかしまあ、そんな感じで遊び回っているうちに時間はあっという間に過ぎて、気付けば花火大会三十分前のアナウンスが聞こえてくる。そこかしこのお客さんたちからも、花火だ花火だって浮足立った声が上がり始めた。公園内に何ヶ所か良い感じの見物スポットがあるらしくって、それらを目指してか人波の流れが変わっていく。


「私たちも場所取りに行く?」


 今日のお祭りの目玉なわけだし、のんびりしてるといい場所ぜんぶうまっちゃうかもしれない。そう思って羽須美さんの手を引こうとしたら、逆にきゅっと握り直された。


「わ、あーし、良い場所知ってるから。行こ」


「おっ」


 少し緊張気味に、でも足取りに迷いはなく、人の波とは逆の方向へと進んでいく羽須美さん。手を引かれて半歩後ろを行きながら、こういうのも良いなぁなんて思ったりした。


 


 ◆ ◆ ◆


 


 そうして羽須美さんに案内されたのは、高台や展望でもなく、かといってよく開けた平地ってわけでもなく。木々に囲まれた人気のない場所だった。

 

 林の中をいくちょっとしたハイキングコースの中間休憩地点みたいなところで、円形に切り開かれた小さな空間内に、切り株を模したベンチが二、三ぽつぽつと置かれているだけ。道中と同じく林のただ中にあるわけだから、お世辞にも見晴らしが良いとは言えない。


「えーっと……ここ。で、このくらいの角度が良い感じ……だったはず」


「ほぁー」


 真ん中のベンチにハンカチを敷いて並んで座り、からだの位置取りまでオーダー通りに。完全に私たちしかおらず、照明も最低限、聞こえてくるのは虫の鳴き声くらいのものだ。スマホを見れば花火開始までまだ少し時間があった。ガム食べよ。


「羽須美さんもいる?」


「あ、じゃあいただきます」


 まあ羽須美さんが取ったやつなんだけどね。ミント味で口の中をスッキリさせつつ、空を見上げてみる。四方から伸びる木々に囲まれて、正直あんまり開放感はない。


「ここ、穴場ってやつ?」


「……うん。小さい頃、家族で来た時に見つけたんだけど」


 お祭りの人ごみに酔っちゃって、でも花火も見たいってぐずってたロリ羽須美さん。ご両親がそれをなだめながら他のお客さんを避けるように歩いているうちに、偶然見つけた場所なんだって。


「以降はここで見るのが恒例になってね?」


 当時も毎年来ていたわけじゃないけれど、少なくとも羽須美さんたち以外の人と鉢合わせたことは今までに一度もないらしい。まさしく、羽須美家秘密のスポットというわけだ。


「まあここ数年はお祭り自体行ってなかったから、あーしも久しぶりではあったんだけど……」

 

 今でも変わっていないか。穴場として有名になっちゃったりしてないか。花火の打ち上げ場所は例年通りか。そういう諸々を夏休みのあいだに調べて、それで今日、私を連れてきてくれたってわけだ。こーれは、期待大だねぇ。


「あ、そろそろかも」


「おっと」


 もうあと一分くらい。ガムを包み紙に出して、改めて羽須美さんに指定された方を向く。斜めに見上げる夜空は変わらず、木々の枝葉に縁取られていて。その内側を彩るみたいに、最初の花火がどっと咲いた。


「おぁーっ……!」


 丸くて大きくて黄色っぽい、まあオーソドックスなやつ。だけどもそれが、いま見える空のど真ん中に姿を現したものだから、迫力もひとしおだ。いくつか同じサイズのものが単発で打ち上げられていって、そのたびに視界が明るく。かと思えば今度は、赤、青、緑とカラフルで小玉なやつらがどんどこ連続で打ち上げられていって。切り取られた小さな夜空の中で、重なるように次々と咲いていく。


「おぉー……っ」


 こういうときってなんか、たまとかかぎみたいなかけ声があった気がするんだけど……残念ながら私の口からはもう、おーとあーしか音が出ていない。いやーなるほどなるほど、これは確かに穴場スポットだ。広々とした空をバックに見る花火とはまた違う、木々で囲んだ枠の中だけに咲かせるような、なんだか贅沢な感じがする景色。誰もいないのも相まって、花火を閉じ込めて羽須美さんと二人占めしてるような気分になる。


「ほぁー……」


 なんて感心しているあいだに花火側もどんどん勢い付いてきて、金色のすだれ花火やら、その中でぱらぱらと弾ける色とりどりの小玉やら、目にも耳にも楽しませてくれる。べつに私、花火は好きでも嫌いでもないって感じだったんだけどなぁ。もうすっかり目が離せなくなってしまっている。

 三重に打ち上げられたすだれ花火が、ばらばらばらーって小気味良く散っていって。それで静かになったものだから、あ、終わっちゃったかなー……って思った次の瞬間。ひときわデカいのが一発、どかーんっと空気を揺らした。


「ぅぁー……っ!」


 私と羽須美さんの夜空を隙間なく埋め尽くすみたいな、大きな大きな一輪。カラフルで、ド派手で、そうとにかく大きくて眩しくて、散り際さえもまるでこちらに降り注いでくるかのような大迫力。

 今度こそ最後だったらしいそいつで、また空が静かになって。私も羽須美さんも、少しのあいだぼーっと余韻に浸っていた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヒロインの超人化が留まるところを知らない…! [一言] 主人公、後半ぼへーっと口開けてるだけじゃないか いや、ぼへーは言い過ぎだけど、感嘆音しか出てない 来年もこの調子だと口塞がれちゃ…
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