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隣の席のギャルっぽい子が私のことしゅきらしいので付き合ってみることにした  作者: にゃー
6月

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第15話 バランス感覚


 羽須美さんの奥ゆかしい中学時代を知ってから一夜明けて。

 今日も曇天が続く午前中、二限のあとの休み時間に、私は定規を持って羽須美さんに声をかけた。


「羽須美さん」


「なに?」


「ごめん、ちょっと立ってもらっていーい?」


「?はい」


「ありがと。では失礼して」


 小首をかしげながらも立ち上がってくれた彼女さんへ近づく。今日もすらりと伸びた姿勢の、その足元。チェック柄の指定スカートのすぐ目の前にしゃがみ込んで、太ももに定規を当てた。


「……ふぅぃ!?」


「うーむ。膝上11cm」


 何がと言うとそれはもちろんスカート丈の長さの話。めっちゃミニってわけではないけど、膝上肌面積の存在はしっかり感じられるくらい。定規越しに触れた肌はしっとりしていて、普段からこうなのかそれとも湿気の影響もあるのか。デートで手を握ったときはどうだったっけか……意外と覚えていないもんで、改めて、あのときは私もけっこう一生懸命だったのかもなぁなんて思ったり。


「く、く、黒居ひゃ……?」


「あ、ごめん。ありがとー」


 太ももを見つめたまま少し考え込んでしまって、上から降ってくる震え声で我に返る。体を離してもう大丈夫と身振りで伝えたら、羽須美さんは腰が抜けたように椅子に座り込んだ。やはり顔は赤い。私も自分の席に戻りつつ、次いで、近くで下谷さんと戯れていた上山さんに声をかける。


「上山さーん」


「どしたー黒居ー」


「スカート何cm?」


「膝上14cm!」


 みじけぇ。


「怒られない?」


「怒られる!」


 だよねぇ。抱えられて乳に埋もれてる下谷さんも同じくらいらしい。

 わたしにも普通に聞けばよかったんじゃ……って呟いてる羽須美さんに向き直り、今一度その膝辺りを凝視。こっちもまぁ、座るとわりと短めに感じるではある。視線に気づいてもじもじしだした彼女にも、同様の質問をば。


「羽須美さんは怒られない?」


「え、あ、普段はだいじょぶ、かな。服装検査の時とかは、もう少し長くするけど」


 我が校の校則では一応、スカート丈は膝上10cmまでってことになってる。だから上下コンビは当然として、羽須美さんも厳密には校則違反になっちゃうんだけど……


「ふむふむ。先人の知恵様々だねぇ」


「だね」


 +1cmくらいまでなら、普通に過ごしてる分には見逃してもらえる(気づかれない?)っていうのが、女子のあいだで代々密かに受け継がれている情報だったりする。+2cmを超えた辺りから先生によっては注意が飛んでくるかも、って感じらしい。ただし定期的にある服装検査の際にはしっかりチェックされるから、羽須美さんも言った通りそのときはちゃんとしなきゃだ。定期的っていうのがまたね、学校側からの“お前ら分かってるよな?”ってメッセージが読み取れるよね。

 ちなみに膝上15cmを超えてくるとわりかし厳しめの指導が入るらしくって、上下コンビの14cmはそれをギリギリ回避する、“廊下ですれ違ったときとかに注意はされるけどガチで叱られはしないライン”みたい。この辺の攻防も、学校側と生徒側の暗黙の了解めいたものを感じる。

 あ、私は膝上5cmの超安全圏だぜ。見てる感じだと5〜7、8cmくらいが一番多い気がするなー。


「髪の色もオッケーなんだよね?」


「うん、これくらいまでならギリギリ」


 話の流れに合わせて視線も、紺色のブレザーを通過して下から上に。今日も艷やかな羽須美さんの髪は明らかに地毛ではないけど、校則に明記されてるような“過度に派手な髪色”には当たらないライトブラウン。思いっきし金髪!とかメッシュ!インナーカラー!みたいなのは流石に駄目っていうか、確か上山さんが最初の頃にそれやって怒られてた気がする。今じゃもう少し大人しい色合いだ。

 

 それからそれから、化粧も軽めのものなら黙認。キメッキメのギャルメイクとなると流石に引っかかることが多いって話だけど、羽須美さんはその辺もうまくやってるみたい。今日も程よく華やかだ。例によって上山さんはそっち方面でもたまに注意されてる。……こうしてあげつらってみると、上山さんって問題児みたいだなぁ。実際は先生たちからも可愛がられてるけども。


「…………」


「…………あの、あんまりじっくり見られると、なんていうか……」


「あ、失敬失敬」


 まあ、何を突然に羽須美さん校則チェックなんかしはじめたのかって話なんだけど。

 中学時代の話を踏まえつつこうして見ると、大枠でルールを遵守しながら自分のしたい格好もしてる、そんな器用さがあるんだなぁと思いまして。それで素行自体は良い上に勉強もしっかりできてるんだから先生たちも目くじら立てる理由がないし、ほんと絶妙なバランス感覚というか。そういうところも、一緒にいて“良い塩梅だなぁ”って思える一因なのかもしれない。


「羽須美さん」


「な、なに?」


「ぐっ」


「……?ぐっ……?」


 とりあえずサムズ・アップしてみた。首を傾げつつ同じように返してくれるのが、なんだか心地よかった。

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