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第六十五話 アンジュン辺境伯包囲網(2)

 イーシ王国 王城


「バンボン男爵、通信使の役目ご苦労であった」


 謁見の間で、コーキ宰相はバンボン男爵を迎えていた。この広間の最奥の玉座にはイーシ国王が座っている。そして、タンソウ侯爵とユーイ伯爵も同席していた。


「コーキ宰相、アンジュン辺境伯からの文を読み上げよ」


「封緘がしておりますが、この場でお読みしてもよろしいでしょうか?」


「良い。金貨80万枚はアンジュン辺境伯だけで用意できる金額では無い。おそらく泣き言をつらつらと書いているのだろう。そうであれば逆賊として討伐の詔勅を出す。アンジュン辺境伯領はタンソウ侯爵とユーイ伯爵、それにイーボチヤ伯爵で好きに分割するが良い」


「それでは・・・」


 コーキ宰相はペーパーナイフで封緘を開け、中から便箋を取り出す。そして恭しく読み上げ始めた。


「国王陛下の忠臣であるレイン・アンジュンは、陛下のご命令の通りバート連邦を挑発し戦いの口火をあちらから切らせることに成功いたしました。そして、ドワーフ族を撃退しイーシ王国の威信を示したことをここにご報告いたします。しかるに、バート連邦より不当な恫喝をされたことによって、その責任の全てを私レイン・アンジュンに押しつけるのはいかなる仕打ちでありましょうや?・・・・」


 その内容を聞いていたタンソウ侯爵とユーイ伯爵は、眉間にしわを寄せみるみるうちに渋面になる。聞いていた話と違うと。


「コーキ宰相、これはどういうことですかな?我々はアンジュン辺境伯が独断でバート連邦と紛争を起こし、あまつさえ謀反を計画していると言われたのでここに参上したのだ。話がまるで違うでは無いか!」


「い、いえ侯爵閣下。これは、その、お、おそらくアンジュン辺境伯の謀略にございます。国王陛下がそのようなご命令を出すことなどあり得ません。そうでありましょう、陛下」


 返答に窮したコーキ宰相は国王に助けを求めた。


「そのような命令は出しておらぬ。アンジュンの虚言じゃ。もはや弁解の余地はない。コーキ宰相。アンジュンの爵位を剥奪し、逆賊としての討伐を命じる!」


 ――――


 アンジュン辺境伯領


「信長様、国王はアンジュン様の討伐を決定したようです。タンソウ侯爵とユーイ伯爵の軍が王都方面から、イーボチヤ伯爵が側面から侵攻してくる模様です」


 信長の執務室でユウシュンが信長に報告をする。王都や各領主の元に送り込んでいる間諜からの情報だ。信長は情報の重要さを身にしみて知っている。イーシ王国の各地に間諜を忍ばせているのだ。そして、そのトップとしてユウシュンを据えていた。こういった仕事は、やはり人族の国をよく知っている者の方が適任だった。


「くくく、予定より少し早いがいいだろう。準備をしろ!イーシ国王を逆さ磔にしてやるぞ!」


 信長はすぐさま蘭丸達幹部と主要な家臣を全員集めた。そして皆の者に檄を飛ばす。


「予定より1年近く早いが、その時が来た!我らの戦力は十分に整っている!6万のドワーフ兵を撃退して損害は無しだったからな!オレ達は誰よりも強い!イーシ国王を打ち倒してみんなが腹一杯飯の食える国にする!」


 それを聞いた家臣達は雄叫びを上げた。信長がこの領地を支配するようになって1年と少しが経っている。この1年間でアンジュン辺境伯領は見違えるほど豊かになった。民は富み、家臣達も俸禄が増えたのだ。それなのに国王は自分たちを討伐すると言ってきた。我々の豊かな農地と富を奪うためだ。それならば戦おう。誰のためでも無く、自分の生活のために!


「ユウシュンとシュテン、ガラシャはオーガ族と1000人の兵を率いてイーボチヤ伯爵領を制圧しろ。戦端を開く前に降伏勧告を忘れるな。それで降ればよし、降らなければ13歳以上の領主一族の男子を皆殺しにして首を町の広場に並べておけ。力丸はバート連邦と獣人族の国境を固めろ!虫一匹通すな!残りは主力として王都を目指す!いいか!敵は王城に有りだ!」


「「「「「オオオオオオオオオーーーーーー!」」」」」


「ガラシャ様、ついに信長様がこの国を支配するときが来たんですね」


 ガラシャの隣に立っていたエーリカが、少し上気した顔で話しかけてくる。


「そうね。信長くんがこの国を支配したら、奴隷を外国に渡すようなことも無くなるわ。間諜の報告だと、バート連邦に数十人の幼い女の子が性奴隷として渡されたそうよ。とても許せることじゃない。そんな事をする連中にはお仕置きをしないとね」


「はい、ガラシャ様。信長様が支配する世の中になれば、みんな幸せになります。私は、それに従わない者達を血祭りにあげれば良いんですよね!民主主義ってなんて素晴らしいんでしょう!」


「えっ?エーリカちゃん、それ民主主義じゃ無い」


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― 新着の感想 ―
いよいよ人族対人族&オーガ族の戦闘開始! それにしても、エーリカに間違った民主主義を教えたのは誰だろう。信長だろう!!
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