ちょっくら世界を救ってくる ①
二人がログアウトすると、ラプラスとデイズが帰ってきた。
その数時間後に、モンキッキ、キャツラ、オイリ、ピーチも帰ってくる。街で襲われたという報告もあるが、そういう世界になったとだけ軽く説明しておいた。
「あ、ゼーレ。そういえば話したいことがあるんでした。ちょっとこちらへ」
と、ワグマが私だけを手招いて個室に入れられた。
ワグマは椅子に座り、少し神妙な顔をしている。
「どうしたんだよ」
「その、ニャルラトホテプを倒した後なのですが」
「ん? ああ」
「しばらく、私とあなたはゲームにログインできなくなります」
と、告げてきた。
ワグマは仕方のないことだといわんばかりの顔。まぁ、私もなんとなくは思っていたが。阿久津家である以上、私たちはいい大学に入ることにはなっている。
さすがに受験するので、勉強に時間を割かないといけないということもある。ゲームなんてやってる暇じゃねえんだよな本来は。
「来年の春までか」
「はい。受験、ありますからね」
「阿久津家である以上、ね。跡継ぎも大変なもんだな……」
「ですね。なので、ニャルラトホテプを倒したらログインできないです。そのことは一応この後皆様にも話しますが……。大方、受験勉強に入るでしょうしログインする時間はほかの皆さんもぐっと減るでしょうし」
「オイリは?」
「あれは無理やりにでもやらせます」
オイリは自分から勉強しようとしないしな。
頭は悪くない。悪くないが、よくもない。普段からほとんど何も考えてないからだろう。大体の話を右から左へ聞き流している感じだ。
「アルテミスはまぁ、やるだろうな」
「あれは勉強しないでも普通に受かりますから。素行以外は」
「素行で言うなら私も悪い、ってか私のほうが悪い」
「まぁ、大丈夫ですよ。阿久津家というブランドがありますし、大体受かります」
阿久津家のブランド力はすごいな。
とまぁ、ワグマからの相談はそういうものだった。ログインできなくなることを覚悟しておいたほうがいいということだ。
「ログインできなくなるというのはなんとなく察してはいたようで何よりです」
「そりゃこのシーズンだろ。そろそろ夏休みだし、本格的に始めないとそろそろまずい時期だろ。どの受験生も」
「そうですね」
この夏休みから、私たちの地獄は始まるのだ。
「まぁ、それより目先の問題だ。ニャルラトホテプは人を操れると思う。だから一人で挑んだほうがいいとは思っているが」
「となると、ゼーレ単騎で挑むわけですよね」
「そうなるな」
ワグマとアルテミスを勝手に動かして私を殺した。となると、他人の体を操る能力があるとみて間違いない。
複数人で挑むと、そういう危険も出てくる。
「再戦するのはまた王城行けばいいんだろうか」
「だと思いますよ? あの本が多分あの混沌とした世界の入り口だと思います」
「オッケー。じゃ、ちょっくらこの混沌とした世界を治してきますか」
世界は混沌に包まれるべきではない。




