修学旅行・函館編 ⑦
頭にぐるぐる包帯を巻き、旅館に戻ってきた。
先生は監督不行きで警察に叱られたが、それ以外のお咎めはなし。行かせたのは先生だけどな。まぁ、私が勝手にいったことにしたからなんだけど。
「先生、これで貸し一つっすね」
「天下の不良ともあろうものが怪我なんてするから……」
「私のせいじゃねえっすよね?」
「そりゃそうだ。悪かったな。それよりお前を殴った犯人だけどな、あれは高校生くらいの女の子がものすごく好きな奴らしい」
先生曰く、犯人は女子高生を誘拐して閉じ込めておきたかったということだった。そう思っていた時に、目の前に高校生集団がいたから一人攫おうと考えていたらしい。
頭がおかしい。が、その男にとって不運なのは私がいたこと。
「お前修学旅行楽しめてるのか?」
「毎日なんかに巻き込まれてるから楽しめてないんすけど??」
修学旅行、毎日そういう何かに巻き込まれている気がする。
強盗団に不良共に盗撮魔に誘拐犯に……。修学旅行でいろいろと事件に巻き込まれすぎなんだよな。私は死神探偵じゃねえんだけど?
毎日何かに巻き込まれてるし、まじでゆっくりできねえ。
「はぁ……。しょうがねえな」
と、萩原先生が溜息を吐く。
「今日の礼もあるし、好きなの奢ってやるよ。何食いたい?」
「ラーメン」
「わかった」
警察署からの帰り、私はラーメン屋にいくことにした。
道中にゆーすーというラーメン屋があり、中に入る。食券式のようで、私は豚骨ラーメンの大盛りの食券を買い、カウンター席に座る。
「みんなには秘密な。昼ごはんはこれでいいだろ?」
「まぁ……これ食ったら昼はいらないでしょ」
「そうだな」
ラーメンを頼んで数分後、豚骨ラーメンが来た。
脂がスープに浮かんでいるほど、ギトギトしていそうなラーメン。だが、この脂がいいんだよな。私は割り箸を割り、麺をすする。
「うま」
「そうか」
先生もラーメンをすすっていた。
「ま、俺が言えた義理じゃねえけど、あまり無理すんなよ。お前はもう不良はやめたんだろ? 血の気が多いのは結構だが、社会に出て喧嘩なんてして見ろ。すぐに捕まるぞ」
「そうっすよね」
「暴力沙汰は世間様は好まないからな。まぁ、正当防衛なら許されるけど、やりすぎると過剰防衛になるから気をつけろ?」
「うっす」
そこらへん、結構わかりづらいんだよな。どこからが過剰防衛かは。
「社会に出たら引率する先生もいねえから、てめえで起こしたものはてめえで責任を取らなきゃならん。高校生だったら親や俺たち先生が連帯責任で取れるけどな」
「責任ねぇ……」
「まぁ、お前自身責任感はあるし、そこら辺の不良とは違って話も通じるからな。一応、市ノ瀬の家庭環境はある程度知ってはいるからな。グレるのも理解はしている。子どもの性格は第一に家庭環境によるからな」
先生はまじめな話ばかりしている。いつもおちゃらけているくせに。
だがしかし、先生だって理解者ではあるわけだ。私の。おちゃらけているように見えて、結構根は真面目。こういうのをいい先生だというのだろう。
今更気づいてしまったが、先生は私が喧嘩をしたと聞いても頭ごなしに怒ってないんだよな。むしろ笑って同調してくれている。
「人の性格ってだいたい子供の時に決まるんだよ。家庭環境や周囲の環境でガラっと変わる。お前がそういうのに巻き込まれるのはお前の性格も起因しているかもしれないぞ?」
「私の性格っすか?」
「お前……普通に厄介ごととか受け入れるだろ。そういうのが呼び寄せるんじゃねえか?」
「あー」
たしかに、しょうがねえと受け入れている気がする。
「厄介ごとを受け入れてくれるから厄介ごとが自ら来るわけだ。たまには反発してみろ。嫌なもんは嫌ってはっきり言え。お前は家庭環境の割にはお人よしすぎる」
「……うっす」
私はラーメンを食い終わる。
お人よしだなんて初めていわれたな。




