修学旅行・函館編 ⑤
カメラを持った男は逃げようと露天風呂らしきところに向かおうとしていた。
私は近くにあった桶をぶん投げると、男の頭にぶち当たり、そのままこけて温泉に入ったのだった。私はクラスメイトに旅館の人を呼んでといい、私は男を無理やり引っ張って脱衣所まで連れて行く。
「離せ!」
「あ? 女湯に忍び込んでおいてその言い草はねえだろ」
「こんの……!」
と、暴れていると、旅館の女将さんがやってきた。
女将さんが驚いた顔をしている。どうやらこの男はここの旅館の従業員らしい。
「俺はただ清掃を……」
「してるわけねえだろ。私たちが風呂に入る時間は決められてるんだぜ? むしろ、清掃ならば朝方にやるだろうが普通」
「そうですね。それに、清掃ならばそのカメラはなんでしょうかね?」
男は苦しい言い訳をするが、もう逃れられない。
女将さんは警察を呼び、覗き行為として連れていかれる。男はクソと悪態をつきながらパトカーに乗せられて行ってしまった。
「申し訳ありませんお客様方。当方の従業員が多大なご迷惑を……。少々温泉に入る時間をずらしてもらえないでしょうか。ほかにもカメラが仕掛けられてるかもしれません。私たちが徹底的に調べる時間をくださいませ」
「は、はい」
と、温泉を楽しみにしていたクラスメイトは落胆して、そのまま部屋に戻っていったのだった。
私もとりあえず戻る……わけがない。とりあえず服を着たいのだが……。服がない。着てきたはずの浴衣がいつの間にかなくなっていた。
携帯は部屋の中で、さすがに素っ裸で旅館を移動するわけにもいかず。
「あ、あのー」
「どうなさいました?」
「誰か私の着替え持って行ったみたいで……。申し訳ないのですが着替えを持ってきていただけると」
「かしこまりました」
くっそ、だれだよ持って行ったの……。
私はとりあえず持ってきてもらうまで時間があるので、ほかにカメラが設置されていないかを確認するのを手伝うことにした。
女性従業員が素っ裸で捜索に加わった私を見て驚いている。
「こういうのって大抵人目の付かないとこにあんだよ。あれは多分設置しようとして脱出が間に合わなかったってクチだからほかにもあるだろうしな……。となると、怪しいのはここだけではなく更衣室もあり得る。例えばこんなとことかに」
私は怪しいところをまさぐっていると、なにか硬いものに触れ、それを取り出してみるとカメラだった。
水中カメラということで、水に落としても大丈夫なやつ。覗きに全力を注ぎやがって。きっちり撮ってんじゃねえか。
「お客様! 浴衣の用意ができました!」
「あ、あざっす。あとこれ。カメラ一個見つけたんで」
「あ、ありがとうございます?」
私はカメラを手渡し、裸のまま浴衣に着替えたのだった。
下着を履いてないのですーすーする。早いとこ部屋に戻って下着を履こう。そう思い、速足で部屋に向かおうとすると、男湯ののれんをくぐってきたのは田中たちだった。
「風呂上がりか?」
「あ、ああ?」
「なんか騒がしかったね」
「なんかあったのか?」
「あー、なんか盗撮騒動がね。警察に連れていかれたけど」
「また事件かよ……。よく絡まれるなお前……」
「私が引き寄せてるわけじゃねえと思うけど。それより私行く……」
と、言いかけた時だった。
緩かった浴衣の帯がほどけ、はらりと浴衣が崩れ落ちたのだった。
「————ッ!」
「見んじゃねえ!」
私は三人をぶん殴る。
「いっでえ!」
「なんで裸……ぶふぉっ!」
「鼻血出すんじゃねえよ! 誰かが私の着替え持っていきやがって下着すらねえんだよ。だから浴衣の下裸なの。言わせんな」
「いいものをありがとう……」
「忘れろよすぐに。忘れねえと殺す」
「……わすれまひゅ」
くそ、なんて恥辱だ。




