イベント終わり
戦いが終わり、私は周りを見る。
アルテミスの隣にはワグマたちが立っていた。
「っし、ワグマ。またやるか?」
「いえ……。遠慮しておきます」
戦意がない。
なんだつまんねえの。
「じゃあなに? 普通に競争すんの? だとしたら私は妨害させてもらうけどよ」
「いえ……お先にどうぞ」
「なんだよ、お前なんか変だぞ?」
「先ほどの戦いを見せられておかしくならない人なんていません! あなた、本当になぜそこまで戦いが……!」
「あー、好きこそものの上手なれだろ」
「好きすぎます!」
三度の飯より好きだし。
まぁ人に誇れるようなものではないけどな。
「流石の私も少し呆気に取られてしまうよ。ゼーレ君。君の強さは明らかに異常だ」
「自覚はある」
「さっきのはゼーレが本気で戦わなくちゃいけないほど強い敵なの?」
「いや……。私一人ならなんとかなるけどな。アルテミスがいたから。庇いながら戦うのは苦手なんだよ」
庇って戦うことをしてこなかったからな。いつも一人で戦って、一人でぶちのめしてきたし。
守る戦いはしたことがない。
「私はつくづく足手まといだねェ。まぁ、自覚はしていたがね」
「嫌がらせとかなら私より秀でてんだろ。足手まといとか私は聞きたくねえよ」
「…………」
「オイリ、どうした」
「……私も足手まといとか思ってない?」
「はぁ? なんだよ今更」
「だって私、戦闘職なのにそこまで強くないし……。そこまで力になれてるわけでもないし……」
と、オイリが珍しく消極的になっていた。
まぁ、私の戦闘を見たからというのと、オイリは少し悩んでいる節があった。
オイリ自体底抜けにポジティブだからすぐに切り替えていたようだが。
オイリが足手まとい、か。
「んなわけねーだろ。私もワグマも暗くなりがちだからな。底抜けの明るさが私たちを取り持ってんだよ。足手まといなんかじゃねえ」
「ほんと!?」
「犬みたいで可愛いですしね」
「ワンっ!」
私が励ますとすぐに元気が出たようだった。
オイリはいつものように明るい笑顔を見せる。ワグマは私の腰をひとつき。
「私はそこまで暗くなってません」
「またまたぁ。最近何か考え込んでんのかすげえ暗い顔してたぞ?」
「……そうですか。まぁ、確かに考え事は最近ありますが」
「なんか悩んでんのかよ」
「……ゼーレはすぐにわかることになりますよ」
と、ワグマがそう言う。
すぐにわかる?
「どういうことだ?」
「さ、アルテミスたち。先に行っていいですよ。勝ってくださいね。私たちが勝ちを譲ってあげるのですから」
「ふぁいとー、おー!」
というので、私は走り出した。
中央までもうあと少しの距離。最大の障害は撃破して、何も邪魔するものがいない。
私たちは全力で走ると、なにか遺跡のようなものが見えており、その遺跡には白い旗が立っていた。
「ゴール、みたいだねぇ。白い旗をとって勝利! 決めちゃってくれよ、ゼーレ君」
「ああ」
私は白い旗を取った。
《第一島サーバー、ゴール到達者が現れました》
と、アナウンスが流れた。
私たちが一位。なんとか死なずに来れた。
「ふぅ、勝てた」
「道中、不安要素はあったが無事勝てて何よりだよ」
「不安要素全部お前じゃねえか……」
「はっはっはっ。まぁ、大目にみてくれたまえ。それより、賞品がもらえるんじゃないかな? あそこにあるデカい箱……。あれがそうだろうねェ」
「んじゃ、開けてみっか」
私はでかい宝箱を開けてみる。
中に入っていたのは。装備だった。白衣のようなものと、ものすごく長い鉢巻。
ご丁寧にアルテミス様、ゼーレ様と書かれており、私は鉢巻の方のようだ。
私は鉢巻を巻いてみる。
そして、装備を調べてみた。
無頼漢の鉢巻というもので、残り体力が少ないほど攻撃力が上がるというもの。
鬼神スキルでも上がるらしく、鬼神スキルで体力削れば、攻撃もその分上がるのだとか。
「すげえ鉢巻だな」
「私のこの白衣……。錬金術の失敗は無くなるようだ。それに、どんなに適当に作っても全て高品質のものになるというものだ。叡智の白衣……。ふふ、私にふさわしい!」
「そうだな。似合ってる」
「ゼーレ君もその鉢巻姿似合っているよ」
「ありがとよ」
こうして、イベントは私達の勝ちで幕を閉じたのだった。




