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【6/12書籍発売】転生令嬢は乙女ゲームの舞台装置として死ぬ…わけにはいきません!  作者: 星見うさぎ
第2章

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リアム殿下は考える2

 

 事態を把握する前に、感じたのは不謹慎にも喜びと安堵だった。


「――どうか、あの子を見逃してはくださいませんか」


 メルディーナの兄、イーデンがリアムに向かい頭を深く深く垂れる。


「あの子は私の愛する、大切な妹なのです」


 大切な妹――。その言葉に胸が熱くなる。どう見ても言葉だけで取繕っているだけのようには見えなかった。


(ああ、メルディーナ、あなたは愛されない人間などではなかったのです……)

 リアムにとって、それが何より嬉しかった。

 しかし………。


「……代わりに私の首を捧げます」



(――首?)


 よく分からないながらにイーデンと言葉を交わす。


「今、メルディーナ嬢はどこに?まだ体も万全ではないでしょう。すぐに戻られますか?」


 しかしリアムがそう呑気に首を傾げた時には、彼女はもう城のどこにもいなかったのだ。




 ひたすら混乱し、驚くイーデンと話し、互いの誤解がやっと解けたときには少し時間が経ってしまっていた。事態に気付いたとき、リアムは焦った。

 自分たち獣人が人間の国に入ることが命がけであることと同じようにとまでは言わないが、やはり長年の確執によって獣人たちも人間を嫌悪し、警戒している。


(もしもメルディーナが人間であることを誰かに悟られ、捕らわれでもしたら……)


 その想像はリアムの焦燥を駆り立てるに十分だった。

 彼女に気付いた者が、彼女を害さないとは限らない。むしろ良くないことになる可能性の方が高かった。


(早く見つけなければ……)


 だが、メルディーナはどこを探しても見つからなかった。


 獣人は鼻が利く。勘もいい。獣人同士ならいざしらず、こちらの特性を知らないメルディーナはすぐに見つかると思っていた。まして何年も共に過ごした相手なのだ。リアムには自信があった。


(すぐに見つけて、誤解を解いて、今度こそ城でゆっくり過ごしてもらいたい)


 その為に、彼女を客として迎えることを良しとしない城の者たちへの説得も同時に行う。王太子である兄が味方になり、共に動いてくれた。


 それでも……見つからない。

 あれから彼女が姿をくらますきっかけとなった妹のジェシカは部屋にこもりきりだ。


(だが、ジェシカだけが悪いわけじゃない。私の考えが甘かったのだ)


 もっと、ジェシカや周りの者たちに先に説明しておくことだってできた。

 メルディーナが目を覚ます前にイーデンとゆっくり話をすることだってできたし、目が覚めた彼女の側にいてやれば今のようなとんでもない誤解を生むこともなかったかもしれない。



 やっとヒントが与えられたのは、とある田舎から流れてきた一つの噂話を耳にした時。

 噂を持ち込んだのは、人の村とのやりとりもする商人だった。


「田舎の村で、なんでも瘴気が原因で村人の多くが倒れる事件があったそうですよ」

「なに?そんな報告はなかったが?」


 王太子が過敏に反応する。当然だ。田舎の村とはつまりここよりも余程自然の多い場所。自然が多ければ必然的に自然を愛する妖精たちも多くなり、瘴気は薄くなるものだ。それが多くが倒れる程の瘴気?偶然か、誰かの陰謀か、それ以前にその村はどうなったのか……。


 おまけに話を聞いてみると、その村とはルコロの隣の名前もない小さな村らしい。

 ルコロの隣なら……守りの森の近くだ。ここアーカンドでどこよりも神聖なその場所。

 もしも本当にそんな問題が起こったのならば、すぐに報告が上がるはずだった。何より守りの森付近で瘴気が大きくなりすぎれば、すぐに国中に影響が広がってもおかしくはないのだ。


「それが、なんでも1人の女がその全ての瘴気を一瞬で払い、村を救ったらしいです。ふふふ、何よりも面白いのは、村人の何人かがあれは人間の聖女様だったと言うんですよ!このアーカンドに国が把握し許可していない人間がいるわけがありませんし、万が一無許可に入り込んだ人間なら獣人を救いはしないでしょうに」


(まさか――)

 リアムの脳裏に、メルディーナの優しい笑顔がよぎった。



 そして、守りの森でついにリアムはメルディーナを見つけることになる。


 守りの森……そこはアーカンドでも特に聖なる力の漲る場所。真っ白な体を持つ聖獣が力を分け与えている場所。少しでも瘴気を放つ者は目を眩ませられ、獣人でもその場所を見つけられるものはほとんどいない。


 まさか、人間であるメルディーナが守りの森にいるとは、思いもしなかったのだ。



 そこで妖精たちに囲まれ、穏やかに笑うメルディーナに、リアムは自分の正体も、城は安全だから戻ってきてほしいとも言えなかった。


「リアム、メルディーナ嬢は見つかったんだろう?どこにいる?連れて来ないのか?」


「兄上……もう少し待ってくださいますか。その間に反対する者たちの説得をお願いします」


 せめてあの新たな聖獣の誕生までは、このまま――。

 ……あのタマゴが孵った後、メルディーナはそのまま森にいることを望むかもしれない。



 そうして日々を過ごしていたある日、いつもの様にメルディーナに会いに行こうと守りの森へ向かっていた時、あの禍々しい魔力を纏う人間の女を見つけたのだ。


 メルディーナとは全く違う、連れている人間に「聖女」と呼ばれている恐ろしい女。




 気がついたときには、無我夢中で走り、リアムはメルディーナの前にその身を投げ出していた。





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