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VENGEANCE  -THE CRIMSON HOOD-  作者: 七鏡
VENGEANCE STORYS
33/54

IN A BAR

馬車の御者台で、俺は馬を操り、王都までの道を行く。

まあ、今は途中の宿場町の酒場で一休み中なんだがな。

俺の名前はジェームズ・ドロワ。通称ホークアイと呼ばれる弓の名手だ。

親父の唯一、倒せなかった『VENGEANCE』を倒そうとしたのだが、これが見事に負けてしまった。

俺は次こそ勝つために、奴の近くにいることにしようと思った。それに、俺はヤツの強さにほれ込んでしまった。別に、女として好きになったというわけではなく、戦士としての敬意、と言うやつだ。

そんなこんなで転がり込んだわけだが、彼女らの敵であるヒュドラーの計画をつぶすため、王都の方に移住する、と言う話になった。その情報を渡したのは、俺本人なのだが。


そう言うわけで、女性に御者をやらすわけにもいかず、俺が御者をしているわけで。まあ、夜目も効くし、俺の視力は人間としては桁外れの性能を持っている。まあ、これは俺の血筋が大いにからんでいるわけだが。

女性ばかりで少し肩身が狭くて、おまけに話し相手で相棒のツァールまで、VENGEANCEの恋人のサクヤ嬢に奪われていて、話す相手もいない。

と言うわけで、少し、俺の昔話に付き合ってくれないか。酒代は驕るからよ。



俺の生まれた一族は、鷹の一族と呼ばれていてな。狩りを生活の糧とする一族だ。

とはいえ、凄腕の弓の腕も視力も、ほとんど一生田舎の生活の中で使われる。

それに不満を持つ村の若者は、時に傭兵として村のある森林や山を出ていく。俺の親父もそんな一人、ってわけだ。

親父は傭兵としていろいろと戦場を渡り歩き、いつしかホークアイと言う異名を持つまでになった。

百発百中。鷹の目のごとく、獲物を逃がさぬスナイパー。それが親父だった。

金をもらい、仕事をしていたが、金のほとんどは村に送られ、親父は金に興味なかったらしい。

飽くまで親父は狩人でしかなくて、名声も金も、問題ではなく、ただ強いものを狩る、という本能に従っているだけであった。


まあ、そんな親父も片目を失くしてからは、落ち着いたらしく、美人の奥さんをもらって、俺が誕生する、と言うわけだ。

生まれた俺を親父は厳しく育てた。

まだ赤ん坊の俺に弓を持たせて怪我をさせては、お袋に怒られていたようだ。

とはいえ、俺への指導を親父はやめなかった。親父曰く、俺は親父以上の狩人になれる器らしく、腐らせるにはもったいない、と言うことだった。

俺は特にやりたいこともなかったし、親父の言う狩人のロマン、というものに憧れていた。

哀しいことに、俺は狩人の息子、というわけだったのさ。

15のころには親父はもう教えることはない、と言った。そして、俺に言ったのさ。

「世界を見てこい」ってね。

俺も、いつまでも親元にいるつもりはなくてな。親父もお袋も、それは承知していた。

16の誕生日に、俺は生まれ育った家を出た。そして、俺を待っている獲物どもを探しに行ったのさ。


色々な相手を狩ってきた。

森の主や、山賊。それに、俺と同じような出自の狩人とかな。

だが、それを倒しても、俺の中の狩人は満足できなかった。

もっと、もっと強い奴を。そうやって、俺はさ迷い歩いた。



ある時、ヒュドラーとかいう組織の虐殺の現場を視ちまってなあ。そこでスカウトされたんだが、俺は別に殺しに快感を覚えているわけではないし、奴らの言うことをさっぱり理解できなかった。

俺は奴らを返り討ちにしてやった。それはいいんだが、俺も奴らに追われる身になった。

このころには俺も、ホークアイ、と言う異名をつけられていて、そこそこ有名になっていたからなあ。

それで、逃げる最中に聞いたわけだ。

「VENGEANCEだけでなく、ホークアイと言う厄介な敵まで」ってね。

それで思い出したわけだ。親父が唯一狩れなかった存在をね。


どうせなら、そいつを倒したい、と思ったんだな。俺はそうして、打倒VENGEANCEを目指すわけだ。

結果はまあ、知っての通り。

だが、あいつの強さ、ってのがなんなのか。俺にはわかる気がする。

あれの中には、強い念がある。『復讐』のな。

どれだけきれいごとを言っても、人には穢い面がある。

恐れ、憎しみ、怒り。それらがな。どんな善人も悪人も等しく、影を持つ。

あいつはそれを受け止めている。そして、それでも、人の善意を信じているんだろうな。

まあ、でも出会って少しの俺の言うことなんて、何の意味も説得力もないんだがな。

とはいえ、これからあいつがどんな道を進むのか、俺には興味がある。

あのヒュドラーとかいういけ好かない連中に対する恨みは相当あるらしいしな、楽しくなりそうだ。



さて、と。俺の話はこれで終わりだ。まあ、詰まらねえ話だったろ。

ま、ただで酒が飲めたんだから、別にいいだろう?

それじゃあ、話を聞いてくれてありがとよ。



ああ、あと。

ナイフを忍ばせるんだったら、もっとうまくやれよ。あと、殺気ダダ漏れ。

そんなんじゃあ、俺どころかVENGEANCEにも、刃は届かないぜ。

俺は優しいから殺さねえが、あいつはおっかねえからなあ。返り討ちだぜ、あんた。


それじゃあ、本当にサヨナラだ。二度と会うことはねえだろうが達者でな。

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