85.門番を鍛える
メイちゃんにKAmizonで買った、子供服をきせた。
「お母様っ、うちに帰りましょうっ!」
リシアちゃんがメイちゃんを抱っこしながら言う。
「めーは早く、ままとおねーちゃんといっしょに、うちにかえりたいですー!」
世界樹幼女精霊のメイちゃんも、お姉ちゃんとの新生活を待ちわびてるようだ。
「ちょっとお出かけする前に、片付けておかないといけない問題があるんだよね」
「なんですか、ミカ?」
「この世界樹の門番についてだよ」
『樹木王のことぉ~?』
元魔神のニーズヘッグが、尻尾を【?】にする。可愛い。
「そ。あいつ、私を見てびびって、門を簡単に開けたんだ。それじゃあ困るのよね」
メイちゃんの本体はあの世界樹だ。
私が目を離したすきに、世界樹に同じように侵入者が入って、メイちゃん本体に攻撃されてたら嫌だ。
ということで、メイちゃんを連れて帰る前に、門番のバカッぷりをどうにかしよう、って次第。
私たちは異空間を通って、奈落の森へと帰ってきた。
『メイ!? なぜここに!?』
樹木王……見上げるほどの大きな人面樹だ。
「ミカ神さま。ここは、アタシが説明をば」
ルシエルが私に変わって、樹木王に説明。
さぁ……と樹木王の顔から血の気が引く(樹木だけど)。
『メイ! おぬしが……そんなツラい状況にいたことなんて、ついぞ知らなかったのじゃあ!』
どうやら樹木王は中の状況(ニーズヘッグの毒でメイが死にかけていたこと)を知らなかったらしい。
「めーはしにかけてましたっ。ままがいなかったらばいやーだったんだよっ!」
「まあまあ。メイちゃん。落ち着いてね」
よしよし、と頭を撫でて上げる。
「ままがよしよししてくれたから、よしっ!」
メイちゃんは樹木王を許してあげるようだ。 優しい子。
「君のとこのセキュリティ甘すぎて、お母さん的には心配」
『面目ない……』
「だいいち、レベル350ごときで、可愛い娘を守れるの君?」
「いや、ミカ神様。何度も言うが、レベル350はとんでもないバケモノだぞ……」
ルシエルが樹木王をフォローする。
まあ、三桁レベルってけっこーすごいらしい。けど、ね。
「魔族が攻めてきてたら、どうするつもりだったの? 魔族は闘気っていう、自分のレベルを瞬間的に上げる技術があるんだよ?」
樹木王は、いわば門番だ。
メイのところに、悪いやつがいかないようにするのがお仕事。
でもこやつは、私を見ただけでびびってしてしまい、私を中に入れてしまったのだ。
これが私だったから良かったものの、悪しき魔族だったら、どうなっていたことか。
『わしは……わしは、強くなりたい……!』
「いやあんた十分強いから……」
『わしはレベル3桁のカスじゃぁ!』
「そう言われるとそれ以下のアタシら悲しくなるんだけど……」
樹木王が私を見て、目礼する。
『たのむ! 最高神殿!』
あ、いちおう私の素性は樹木王に明かしてる。
『わしを……強くしておくれ! メイを……守れるように!』
「その言葉が聞きたかった」
私も樹木王には強くなって欲しかったのだ。
「それじゃ……これから樹木王改造計画スタートってことで」
『よろしくおねがいしますじゃあ!』
まず、手っ取り早く強くなる方法はというと、あれだ。
「樹木王。君を眷属にして、名前と、役割を与える」
『おお、よろしいのですか!?』
「うん。強くなって欲しいしね。いい?」
『無論ですじゃあ! 最高神さまの眷属にしていただけるなんて、光栄ですじゃぁ!』
私は《眷属になろう》を立ち上げ樹木王に名前と役割を与える。
「君は……もっくん! 樹木王のもっくんだ!」
ルシエルが「えー……」と私を見つめていた。
「なにか、ミカの名付けのセンスに、問題でも?」
「いえ! 滅相もございません! 森の神よ!」
モリガンがルシエルに圧をかけていた。
そんなこんなしてる間に、樹木王が存在進化したらしい。
眷属としての名前、そして役割を与えることで、魔物を存在進化させることができるのである。
「こ、これが……わしか!?」
緑色に輝く、きれいな人間がそこにはいた。
外見年齢は20くらいか。
背が高くて、すらりとしていて、
耳が長い。
葉っぱとツタで作った服を身に纏っている。
体の凹凸は少なく、性別がわかりにくい。
「人面樹が進化して、森精霊になったようですね」
~~~~~~
【起死回生】の門番もっくん
【種族】森精霊
【レベル】1000
~~~~~~
「体に力がみなぎってきます……! これなら……!」
「いや、まだだね」
「まだ?」
「うん。君は確かにレベル四桁になった。しかし、魔族は闘気を使ってくるうえ、レベルも基本的に皆高い」
闘気を使うと、レベルが倍以上になる。
魔族って基本人間や魔物よりレベルが高いのだ。
「この程度で満足してはいけませんね!」
「いや……レベル四桁ってもはや英雄クラスを越えてるからな……!」
とルシエルがもっくんにツッコむ。
「わしはそんな低い次元の話をしてるんじゃあないのじゃあ!」
「じゃあそれ以下のアタシっていったい……」
ずーん、と落ち込むルシエル。まあまあ。
「最高神さま! どうか、もっとわしを強くしてください!」
「OK。ってことで、おいでみんなー」
■から、ふぇる太&ふぇる子、四神の青嵐、朱羽、白猫。
やんちゃ組がやってくる。
『おれ、参上だぜ!』
『最初に言っておくけど、あたしはかなりつよいわよ!』
びしっ! とふぇるふぇるたちがかっこいいポーズをつけている。
KAmizonプライムでなんか見たようだ。
「みんな、今日は元気に遊ぼうの回です」
『うおおー! あそぶぜー!』
『わおおおん! あそぶわよー!』
ふぇる太たちがぴょんぴょん跳ねている。
「みんなあのでっかい樹木に注目」
もっくんはドライアドに進化した。
でも、本体である樹木王の体は、そこにある。
あくまでもっくんは、あの樹木の意志として、顕現してるだけだ。
「あの樹木めがけて、好きに攻撃しちゃってください」
『わかったぜー! うぉおおおおおお!』
ふぇる太は、炎神フェンリル。
全身から炎を吹き出し、そして突っ込む。
『ふぇる太クライマックスあたーく!』
「火はやめろ! 森だぞここはぁ……!!!!!」
ルシエルが止めようとするも、ふぇる太が炎の推進力を利用した、タックルを、もっくん本体にぶち当てる。
ズゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
木が燃える……が、一瞬で元に戻った。
「あ、あれ……? 燃えてない……?」
「起死回生が発動したんだよ」
あれ、とリシアちゃんが首をかしげる。
「それって……たしかキエリュウ一族が使っていた能力では?」
「そう。私、魔族の能力を術式解析で解析して、それを全知全能の全能スキルで、もっくんに付与したの」
全能は、私の都合良い能力を、眷属に付与するスキルだ。
あのキエリュウ……ええと。何番目のキエリュウかわすれた(興味ない、皆同じだし)けど、使っていたじゃん、起死回生。
それをもっくんに付与して、使えるようになった。
「すごい……魔族の強力な能力を、使えるようにするなんてっ」
「さすがです、ミカ!」
娘と友人が喜んでいる。
メイちゃんはリシアちゃんの腕の中で爆睡していた。
もっくんはふぇる太の一撃を受けて、一度死に、そして復活したのだ。
~~~~~~
【起死回生】の門番もっくん
【種族】森精霊
【レベル】1200
~~~~~~
お、良い感じ。
「強くなってる実感がありますじゃ!」
『ミカやん、これええんか? なんか弱いモノイジメしてるみたいなんやけど……?』
朱羽(最近進化して流ちょうにしゃべれるようになった)が、私に尋ねる。
「大丈夫。強くするための修行だから。仲間のためとおもって、じゃんじゃんやっちゃって」
『まあ、ミカやんがそう言うならええけど……』
ということで……。
「さ! もふもふたち、もっくんを強くするために、思いっきしやっちゃって」
『『『おー!』』』
それからもふもふ達の特訓が始まった。
どがぁあああああああああん!
ちゅどおおおおおおおおおん!
ぱきぃいいいいいいいいいん!
ずどどどどどどどどどどどどど!
さすがやんちゃ組、有り余るパワーをもっくんにぶつけていた。
もっくんはそのたびに死に、強くなっていく。
「これ拷問じゃあ……?」
とルシエル。
「もっとじゃあ♡ もっと撃ってこいよぉおおおお♡ んぉおおおおお♡」
「あえぐな……! 気持ちわるいわ……!」
ルシエルから突っ込まれる間も、もっくんはやられ続けた。
で、かなり強くなった。
「よし、こんくらいかな。あとはテストだね。あーあ、都合良く魔族こないかなぁ……」
と、そのときだった。
『キエリュウ一族が一人! 【デオチ・デ・キエリュウ】推参! わが最強の能力、【絶対不敗】をもって、妻のかたきをとらせてもらうぞぉ!』
よし、魔族が来たぞ。
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