76.領民を進化させ、女神像を一瞬で作らせる
温水プールで他の皆の洗礼をしたあと……
「うーむ……」
「どうしたのじゃ、主よ」
水着姿のふぶきが近づいてきた。
私たちはすでにプールから上がって、水着の上から、パーカーを着ている。
「いやさ、守りをもっと固めないとなぁって思って」
「守り……? 十分ではないかの……?」
「いや、さっきイチワ・デ・キエリュウのやつが天井壊していったでしょう?」
今、天井はサツマ君の手によって、完全に直されている。
「また魔族がきて、建物を壊されても困るじゃん?」
魔族は転移門という技術を持ってる。
神出鬼没なのだ。
また来る可能性がある。
「さすがに三度でてきたら擦りすぎじゃとツッコまれるのじゃ……」
誰に……?
「イチワ・デ・キエリュウは消えたけど、他の魔族が襲ってくる可能性はあるでしょ?」
究極闘気砲で威嚇射撃したけど、イチワ・デ・キエリュウが逆襲に来たし。
「ということで、守りを固めておきたい」
「黒姫に頼むのかの?」
玄武の娘、黒姫は結界のエキスパートだ。
「建物を結界で覆っても、結界内部に転移門を出されたら意味ないかなって」
「確かに。ではどうするのじゃ?」
困ったときは全知全能で検索……って、マジか。
「女神像作るのがおすすめって書いてある」
「女神像……?」
読んで字のごとく、女神の像だ。
「精巧な女神像には、神の力が宿ります。それを設置すれば、超安全な結界が構築されるでしょう……と」
「なるほど……確かに、神の像には魔除けの効果があると聞くのじゃ……」
現実でもそういうのあるしね。
「精巧な女神像なんて、どうやって作るんじゃあ……?」
「あてがあるのよ。おーい、リシアちゃーん」
子フェンリルたちとプールで戯れている、幼女に声をかける。
リシアちゃんはこっちにやってきた。ふぇる太の上に乗っかりながら。
「もうすっかりふぇる太おっきくなったねー」
『おれは成長期なんだぜっ!』
それにしても成長しすぎでしょう……。
普通にクマかと思った……。
「呼びましたかっ、ミカお母様っ!」
「領民の中に、【ダヴィンチじいちゃん】って人居る?」
「はい。居ますよ」
「ちょっとその人に紹介してくれない? 作って貰いたいものがあるんだ」
「わかりましたっ!」
ということで、私たちは着替えて、一度デッドエンドへと転移した。
私、ふぶき、リシアちゃん、そしてふぇる太でやってきた。
「皆びっくりするから、もうちょっとサイズ変えられない?」
『やってみるぜ!』
ぽんっ。
『できたぜ!』
なんと一瞬でできるようになるなんて。
『なんかふぇる美の声がしたぜ! それの通りにやったら、できたんだぜ! 魔力を体外に放出するイメージだって!』
ふぇる美、有能。
あの子に全知の力持たせたの正解だったなー。
「ダヴィンチじいさんとこいきましょ」
リシアちゃんに案内して貰い、ダヴィンチさんちへとやってきた。
「すみませーん」
「ふぇー……? なんだぁってぇ~……?」
小屋のなかには、一人のおじいちゃんが椅子に座っていた。
ぷるぷる震えてる。
「領民は皆、人外兵士になったんじゃあなかったのかの?」
とふぶき。
「いや、訓練したいって名乗り出た領民だけだよ、パワーアップさせたのは」
普通に、他の領民もいる。
「ダヴィンチおじいちゃん! ミカお母様が! 用事だってぇ!」
ダヴィンチさんの耳元で、リシアちゃんが叫ぶ。
ふんふん、とうなずいた後、彼は言う。
「え、なんだぁってぇ~……」
難聴系主人公か。
いやまあ、結構お年を召してるし。
「こやつが彫刻を作ってくれるのかの?」
「うん、全知全能でしらべたら、すんごい器用な人だってことが判明してさ」
全知全能には領民の適正だけで無く、得意なことも書いてあるのだ。
今更だけどダヴィンチじいちゃん……まさか、レオナルド的な人……じゃあないよね。
名前が同じだけだよね。うん。
「困りました。どうしましょう、ミカお母様……ダヴィンチおじいちゃん、耳が遠すぎて……」
「なるほど。では……」
私はKAmizonのページを開く。
Amaz●nで売ってるものは、KAmizonでも売ってるのだ。
で、私は必要なものを買う。
「はいこれ」
「なんですかこれ?」
「補聴器」
「ほちょー……き?」
Amaz●n……もとい、KAmizonってってマジで何でも売ってる。
補聴器すら売ってるのだ。
「音を聞こえやすくする道具だよ」
「そんなアイテムが! すごいです!」
まあ私が凄いというか、ちきゅうのかがくってすげえなんですが。
あ、でも補聴器ってバッテリー式か。
じゃあ、補聴器を《眷属になろう》で、魔化しておく。
ええと、【24時間365日動く補聴器】と。
「ダヴィンチおじいちゃん」
「ふぇー……? なんだってぇ~……?」
「ちょっとお耳を拝借」
私は魔化した補聴器を、じいちゃんの両耳にはめる。
「おお……聞こえる……聞こえるぞぉ~……!」
良かった、これで私の声が聞こえるようになった。
「ねえ、ダヴィンチおじいちゃん」
「皆まで言うでない。わかっておるぞ~~?」
「え、そう?」
「うむ。お嬢さんの像を、作ってほしいのじゃろう?」
「そうそう。話が早くて助かるよ。頼める?」
「無論じゃあ!」
よしよし。
私たちはアベールの街の中心へとやってきた。
どしん! と石の塊を■から取り出す。
「えらくデカくて、丈夫そうな石じゃのう?」
ふぶきが私の取りだした石を見上げながら言う。
「どっから採ってきたのじゃ?」
「ダンジョンの壁」
「はぁああああああ!?」
ふぶきが驚愕している。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃあないのじゃあ! ダンジョンの壁は破壊不可能オブジェクトなのじゃあ!」
読んで字のごとく、壊せない物体のことを言うらしい。
「うん。丈夫な素材ないかなーって検索したら、出てきたからさ。とってきたの」
「どうやって!?」
「サツマ君に頼んで、ねー?」
ぴょこっ、とサツマ君が私の肩の上にのっかる。
「な、なるほど……神鎚ミョルニルのスキル【超錬成】を使ったのじゃな……」
超錬成は、万物の形を変えることができる。
だから、かつんと一発叩いてもらえば、こうしてダンジョンの壁から石の塊を抽出できるのだ。
「うむ? なら、そのハンマーを使えば、女神像も一発でできるのではないかの?」
超錬成を使って?
サツマ君がぷるぷると首を横に振るった。
~~~~~~
サツマ君が女神像を作れない理由
→眷属ごときが、主たる女神様の像を造るなんて、恐れ多い
~~~~~~
「だってさ」
「まあ……気持ちの問題なら、しょうがないかの……」
ということで、私が神だと知らない、ダヴィンチおじいちゃんに、女神像作って貰うことになった。
「まかせんしゃい! お嬢ちゃん!」
ちゃきっ! とダヴィンチおじいちゃんが、ノミとハンマーを手に取る。
「しかし主よ、破壊不可能オブジェクトなんじゃぞ……? ただの人間に、削り出しなんてできないんじゃ……?」
言われてみれば。
神鎚ミョルニルを貸すべきか。
「大丈夫じゃあ、見ておれ……」
すっ……とダヴィンチおじいちゃんが石の塊に耳をつける。
「聞こえる……聞こえるんじゃあ……石の……声が……」
「え、こわ……なに……? ホラー?」
とツッコミを入れるふぶき。
「聞こえた……! 石の声! ちぇすとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
かーん! と、ダヴィンチじいちゃんがハンマーで、破壊不可能オブジェクトを叩く。
ぴきっ!
ぱっかーーーーーーーーーーーーーん!
そこには、見事な、私そっくりの石像が建っていた。
「ハンマー一振りで彫刻が!? どういう原理なんじゃあ!?」
「物を作るときの基本じゃあ。まず、素材となるものに、じっと耳を傾ける。そして、その素材の声を聞き……一気に削ることで、作品を完成させる……とな!」
「一ミリも言ってる意味がわからんのじゃあ!?」
~~~~~~
ダヴィンチ
【種族】半神(※一時的)
【スキル】神の耳
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~~~~~~
神の耳
→万物の音を聞き分ける。音から材質の堅さなどの情報を聞き取ることが可能。
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~~~~~~
ダヴィンチの変化
→ミカから貸与された、神の力が付与されたアイテムを装備することで、芸術の神に一時的にランクアップしてる
~~~~~~
「多分補聴器に、私が魔化したことで、神の力が付与されてたんだって。で、それを装備したことで、ダヴィンチおじいちゃんの才能が目覚めて、芸術の神状態になってるんだと……」
だからハンマー一発で、彫刻が完成したみたい。
「まーーたやらかしておるのかっ!」
ねー。
「ま、なんにせよ、女神像完成したわけだ」
「これで本当に魔族が襲ってこなくなるのかの……?」
「さぁねえ。あーあ、都合良く魔族が襲ってこないかなぁ」
そのときだった。
ヴォンッ!
『イチワ・デ・キエリュウ兄さんの、敵を討ちに来たぞ! この、【ジカイ・デ・キエリュウ】様がなぁ!』
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