《余話》今はただ
池の底、浮かんでいく泡を見つめながら、アディーリアは吐息をつく。
リーがここへ来てくれたのは二日前。
まだ二日しか経っていないのに、もう寂しい。
リーがここへ来るとわかってから、父にリーからの絆も結んでいいかと尋ねたが、まだ早いと却下された。
せめてリーからの気持ちが伝われば、こんなに寂しくないだろうにと思う。
片隅でしょんぼりしていると、四番目の兄が近付いてきた。
「アディーリア」
「ユーディラルお兄ちゃん」
落ち込んでいる理由はわかっているのだろう。ユーディラルは何も言わずに寄り添ってくれた。
そのままふたりで浮かんでいく泡を見つめていたが、やがてユーディラルがぽつりと呟く。
「…寂しい?」
こちらを見ずのその言葉に、アディーリアは少しびくりとしてからユーディラルを見返した。
「寂しいけど。リーが来てくれないと会えないんだもん」
自分で答えた言葉に落ち込みながら、アディーリアはうなだれる。
「アディーリアから会いに行けたらいいのに」
本当は人の姿にだってなれるのに、まだ一度も池から離れたことがない。
同じくまだ外出許可の出ないユーディラルも、そうだね、と少し沈んだ笑みを見せた。
「父さんの許可、出てないからね…」
兄妹ふたりは水面を見上げ、今はただ、溜息をついた。
読んでいただいてありがとうございました。
『双子のエルフとはぐれ火龍』
これにて完結いたします。
レストアシリーズ二作目。
『小さな黄金龍の冒険』
タイトル通り、メインはアディーリア。
年が明けてからの開始予定です。




