表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/1501

88~ヨーセスとアデリーヌ

 (あ、そうだそうだ。キルケたちは俺の言った通りにやってくれたんだろうか? ラーシュの妻を地下の部屋に連れて来ているのであろうな?)


 ヨーセスは昼間でも真っ暗なこの店の地下。

そこに降りて行った。


 突然別の男が現れる驚き。そこに気を使ったヨーセスは、階段を降りながら小さな声でアデリーヌを呼んだ。

 「ラーシュ殿の奥様はいらっしゃいますか?」


 アデリーヌはキルケやイワン、トールの声とも違うぬし、魔女とも呼ばぬその言葉に身じろぎながら朴訥と返事を返した。


「はい、いらっしゃいますが何か?」


 ロウソク一つの部屋。階段から数段上にその男の長い足がユラユラと映った。

 「ヨーセスと言います。この店の主人です」


コツコツと鳴る木靴の音と一緒に、その男が目の前に現れた。


美しい金髪がロウソクの火に揺れた。若い男だった。

 「食事はされましたか? 寒くはないですか?」


アデリーヌは少し驚いた。それは魔女に対する言葉使いに相反するもの。


「あ、はい、少し食べましたが、、、お洋服も調達して頂いたので寒くもございません」


 「それはなにより」

そう言うとヨーセスはテーブルの上のロウソクを受け皿ごと手に持って、アデリーヌの顔を照らした。

 「お噂通りのお顔立ちでありますね。ん?あれ? 調達した服って、、、俺が用意した服じゃないぞ。どうしたのだ?この服は?」



「はい、キルケさま達3人にそれぞれご用意して頂きまして。ほら、足元にももう2着」


ヨーセスはテーブルの下に腰を屈めると、ロウソクを照らした。


 「やっぱり、俺の用意した物じゃないな。安っぽい服だ」

「私にとっては着心地の良い服ですわ」


 「青いドレスは知らないかい? 俺が用意していった物だ」


「あ、最初はそれを着てくれと言われたのですが、お客様がお見えになったとかでその服は売ってしまったようですわ」


 「売ったぁ? 誰に?」

「それは知りません。脱げと言われて一日ほど、このテーブルクロスを巻いておりました」


(本当に客が来たんだ)

 「あの青いドレスは今お前が着ているものとは桁が違うんだ。貴族どころか王族の召し物。いくらで売ったんだい?」


「いえ、ですから私は何も」


 「ん~ん」

ヨーセスはアデリーヌの正面の椅子に座ると、腕組みをしたまましばらく押し黙った。





話しかけたのはアデリーヌであった。

「私はこれからどうなるのでしょう? 魔女として扱われるなら、火炙り?海に突き落される? ここはあなたのお店なんでしょ? そこに閉じ込めるならその店の主人。あなた様は何か知っているはずですよね?」


 「だよな。服のことなんかより、そっちが心配だ」


「当たり前ですわ。それに夫や赤子のこともですわ」



 「あっ、会って来たよ。旦那さまに。ラーシュって言うんだろ? たくましくて、この辺りでは見かけない美しい顔立ちの男だった」


「え、どういうことですぅ? 私の家に行ったのですかぁ?!」


 「家?家じゃないんだが、、、そうそう、ヤンも抱いて来た」


「え!ヤンを抱いた? 亭主の名前も、息子の名前もなぜ知っているのですか?」


 「螺旋階段の上でユラユラとあやして来たよ。可愛い男の子だ」


「は?螺旋階段?」




※本日87話アグニア婆さんのキャスト紹介と、88話。

2話投稿致しております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ