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85/1501

85~帰って来たヨーセス

 ドロテアは確かに言った。

マウリッツ城に収監された男たちの妻は、魔術使いという言い掛かりをつけられ皆、隠修士たちによりバレンツの海にドボン。


 しかしそれは見せかけ。実際はベルゲンの船に乗せ、タリエ侯爵にあつらえ品として送り込んだと。


 彼ら隠修士は元々マウリッツの子孫。イブレートの名を聞けばそちらに従うのは当然。

ドロテアにはさげすまされた生活をしいたげられてきた者たちはもちろんのこと、ヨーセス・イブレートに従った。

 それはヨーセスに従わずとしても選択は二つに一つ。無償で殺人を犯すことと、ヨーセスから金を頂戴し殺さずに逃がすこと。選んだのはもちろん後者だ。


 彼らは海に魔術使いを引きずって行くと、後はイブレートの末裔ヨーセスに全てを任せた。


 ヨーセスは自分の店の売り上げを小出しに、ベルゲンの船員を買収した。

船に乗せたと見せかけ、そのまま女を連れて帰った。


 


 ベルゲンからの船は、年に数度だけの寄港。

その時とばかり、船には多くの貢ぎ物も乗せられていた。

ドロテアからタリエ侯爵への贈り物だ。


 ドロテアは女を送る度、タリエ侯爵に宝を送ったと伝えていた。

宝というのは女という意味。人身売買を公にできないドロテアがそれを暗号のように使っていたのだか、タリエはそれを間に受けた。



 つまり、タリエ侯爵のもとには一人として魔女と疑わしき女は送り届けられてはいなかった。


 ヨーセスはドロテアの上の上をいった。




ーーーーーーーーーー


 ガチャリ ガチャ


『おーい!キルケ~!イワンはいるかい~?!』


店の扉を開けたのはヨーセス。

『あれ?店の中が明るい』


いつもなら天井や壁からぶら下がっている装飾品や調度品。窓さえ遮ったそれらは昼間でも店内を暗くしていた。


『ん?なんだぁ?あッれ~?なにもない』



ーーーーーーーーー


 (あッ!マズい!ヨーセスが帰って来ちまった!予定より随分と早いじゃないか!)


 一人、アデリーヌの番をしていたトール。

今日はキルケとイワンと、このからの店の言い訳。

その対策を練る日であった。


 トールは口をポカンと開けたまま暗い地下から階段を上った。


「おっ!ヨーセス!無事であったかい?! 早かったな! アデリーヌも無事。この下に見事収めた」


 『おい、トール。その前にいう事があるであろう?』

「え、なにが?」


 『なにが?じゃないよ。店に入ればわかるだろう? 一目瞭然。どうしたんだ? もぬけの殻じゃないか』


「あ~、え~とぅ。キルケとイワンが売ってしまったんだよ」


 『全部?誰に? そんな金持ちがこの辺りにいるかい? それにな、誰が来ようとこの店の品を売っていいと言ったかい? で、その売った金は?』


「え~と、お見えになったのはタリエ侯爵様の使いの者達でして、、、」


 『タリエ~?』



ガチャ


 「お~い!トールぅ!昼飯買って来たぞ~!アデリーヌちゃんの分もあるぞ~!」


そこに入って来たのはキルケとイワンであった。


※本日も懲りずに挿絵を挟みました。

載せたのは、79~「そこは触るな!鍵じゃない!」です。

宜しかったら是非ご覧ください。

いつも拙いイメージ画ですみません。

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