表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/1501

65~稀な癖

 「ここでございます。ドロテアさま」

ラーシュの部屋に上がってきたのは、ドロテアとテオドールとラーシュ。それにヨーセスとヴィーゴの5人だった。

幌馬車の騎手3人はホールを張っていた。

 


『この部屋かい?ここは確かトナカイの角が壁に取り付けられていた部屋」

 「そうであります」

テオドールはスッとその部屋の扉を開けた。


「おいおい、お前ら!この部屋は俺のものなんだろ?勝手に覗くんじゃないよ」

後ろからヤンを抱きかかえて付いて来たラーシュが言った。


『ハハッ。この部屋はお前のものだが、城は私のもの。私が先に開けて何か問題でも?』

ドロテアの左足は既に部屋の敷居をまたいでいた。



 「では、ドロテアさま。あとはこのヨーセス殿とヴィーゴ殿に任せて、わたしは失礼いたします。他の者にはすぐに寝るように伝えてございますので」


『おうおう、テオドールやありがとう。今宵はゆっくりと床につきなさい』


 「おやすみなさいませ。ドロテアさま。極上の夢を」

『お前も、よい夢をな』

テオドールはそこまでの役目を終えると、自分の部屋に戻って行った。




 「ではドロテアさま。中へ」

ヨーセスがドアを大きく開けた。

 

「おい、待てよ! 「では中へ」じゃないよ!ここは俺の部屋だ!」


 「あ、その前に、ラーシュ! その子は俺が預かる。邪魔になるからな。部屋の外だ」

ヴィーゴがここに乗せろと言わんばかりに両手を差し出した。


 「やだよ。初めて会ったお前なんかに誰が預けるかい!」


『ハハッ!噂通り威勢がいい男だな』

ドロテアがそう言って笑った。

『ではヴィーゴ、今日はお前が部屋の中に入って一部始終を見ておるんじゃ』


 「ゲッ!」

 

『ゲッではない。たまにはいいだろう』

「たまにはというか、初めてでございます、、(出た!薄暗がりのへきが)。が、それはいつもヨーセスの役目では?」

 

『役目など決めてはおらんよ。今日はヴィーゴに見ていてもらう。 その子はヨーセス、お前が預かってドアの外で見張りを頼む。泣き出したらホールにでも連れておゆき!』


そのとき、空気を読んだかの様にヤンが突然泣き出した。

 ホギャ~!オギャ~!


「あッ!わッかりましたぁ!今、下へ連れてまいりま~す!」

ヨーセスは嫌だった役目を逃れたかと思うと、ラーシュの手からヤンを奪い、バタバタと螺旋階段を降りていった。


「いい子だいい子だ。いいタイミングで泣きおった。しばらくホールでゆっくりしようや。ヤンちゃん!」

ヨーセスは階段の一番下。その段に胡坐あぐらをかいて腰を下ろすと、ニコニコとヤンのホッペをつねった。



 

 「おい! 今の奴、ちゃんとヤンを見ていてくれるのであろうな!」

「ま、お前次第だ。ドロテアさまの言う通りにしていれば手出しはせん」

ヴィーゴは上目遣いにラーシュの顔を見てニヤリと笑った。

 

 


『では、ラーシュ、ヴィーゴ。中に入りましょう』

 

 「は??なんで?この男も?」


『私はこのぅ、そのぅ、、、誰かに見てもらってないとぅ、、、そのぅ、、、気持ちがたかぶらないと言うかぁ、、、』


 「稀なへきだな。ま、誰がいようと俺には関係ない。ただ、ヤンにだけは手出しをするな!」


 


 ドロテアとラーシュを差し置いたヴィーゴ。

ズカズカと部屋に入るとベッド脇の小窓の扉を開けた。

そこから外に身を乗り出すと、壁伝いに他の窓をグルリと見渡した。

 「他の部屋。すべてランプが消えましたね」



※前話64~「ご一緒に御2階へ」に挿絵を掲載致しました。

宜しかったら是非ご覧になってみて下さい。


いつもお読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そ、そんな趣味が(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ