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63/1501

63~灯りの残った部屋

 『ハラルが来る』


「もう後ろにおりますよ」

 『おやまあ、いつの間に?』

「幌馬車の後ろをゆっくりと、しずか~について参りました。ハッセ殿もほれ、ここに」


ハッセ。それはアグニアの亭主。浜の小屋でミカルとラーシュたちにサバとニシンを振る舞った腰の曲がった初老の男。

 「アグニア。久しぶりだのう。元気にしておったかい? 今な、ハラルと一緒に様子を窺っておったんじゃ。ミカルが小屋に閉じ込められたのを見ておったのでな、参上したわけじゃ」

 

 『元気もなにも、腰が曲がった同士。若い頃も今もお前さんとは目線が同じになりよった』


 「ハハッ!夫婦といえど一緒に暮らしたのは数年。わしは世界の海を渡り歩いておったからな」  

 『会う度、いつも新鮮じゃわい。ハハッ』


 

 「でだなぁ、去年の指輪の話じゃがハラルから浜の漁師小屋で聞いたわい。わしの力が必要と聞いた。何をすればよいのだッ?」


 『城の中に一緒に入ってもらうのじゃ』

 「中に?」

 『中と言っても庭先まで。あとはドロテアが城内から出て行くのを待つのみ』

 「ほう」

 

 『ハッセ。喉の調子はいいかい?』

 「喉?」

 『声を出してもらわねば困るんじゃ』

 「なにかの物真似かい?」

 

 『そのままで良いよ。ハッセの声はそのままモノノケ。魔王の声じゃからな』

 「?」

 


 『ま、中に入りましょう。ハラルお前もついて来い。え~と、後はぁ、ゲルーダ。よろしくな』

「承知致しました」

 『ハッセの声が聞こえたら、梯子を砦の壁に立ててぇ、、』

「いえいえ、聞こえる前には梯子の上に登っていないとなりませんっ」

 『あ、そうだ。聞こえてからでは遅いな』


ーーーーーー


 アグニアとハッセ、それにハラル。

城壁の扉をくぐった。曲がった腰から首を上げると、そこには巨大な白い城が現れた。


「アグニア殿。凄い城でありますな!美しい!」

 『シッ! 声がデカいわ!ハラル!』

「あ、初めて入りましたので、つい驚いて、、、」



 『この中にドロテアが生け捕った男たちが住んでおるんじゃ』

「おーぅ!」

 『シッ!声がデカい!』


 

 「わしは北向きの部屋と聞いたが」

 『お前さん。右のナナカマドの木。そっちが北。そこに回り込めばその部屋の窓が見えるはずじゃ。で北に立ったらその東』

 

 「東から2番めの部屋じゃな?」

 『そう。そこまで行ったら、ナナカマドの後ろに隠れるのじゃ』


「俺は隠れるかな?この身体」

ハラルが言った。


 『お前なんかよりデカい幹の木じゃ。安心せい』


 

ーーーーー

 『そろ~り、そろ~りじゃ』

3人は庭の石畳を逸れると、ヤギに一声メエと鳴かれたものの、庭を横切り、ナナカマドの木の後ろに回り込んだ。


 「東から2番目というとぉ、、、あの部屋じゃな。どの部屋も灯りが点いているから一目瞭然じゃ。目の悪いわしにもよ~くわかる」

ハッセは指で、窓の数を数えた。

 

 『こんなに庭先まで明るく照らされては、、、』

アグニアは少し困惑した。


「あれ?アグニア殿。一つずつ消えていきますよ。部屋の灯りが!」

 ハラルが言った。

 

 『あ、本当じゃ。どうしたことかい?』


「真っ暗になってゆく、、、」


 しかし、ひとつだけ灯りが消えなかった部屋があった。

東から2番目。ラーシュの部屋であった。




 

※本日、初めてパソコンツールで絵を描いてみました。

やり方が分からず苦労してしまい、アナログ画(いつもの鉛筆画)と変わりませんでした。

上達するまでご勘弁を。

けど、私の場合とこの小説。アナログの方がいいかな。


掲載したのは試し書き。

51話の「引き出しから大きな指輪」

試し書きなので指輪の絵だけです。トホホ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 早く、ドロテア様のお顔が見たい! 指輪、綺麗ですよ✨ 色鉛筆の繊細な絵も好きです。
[良い点] ラーシュの部屋で何が起こっているのか。とても気になる幕引きで続きが楽しみになります。また、アグニエ婆さんの悪巧みもまた、味のある人物たちと相まって、とても読み応えがありました。明るさが肝、…
[一言]  ドロテアが致す場面はエグそうで想像したくないですね。 笑    作者様はお料理にもお詳しいんですね。  びっくりです。  北欧名物、白夜の登場ですね。  描写がとてもキレイです。  でも登…
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