62~ミカルが女に縛られた?
『ドロテアは城に入ったか?』
「入ったようでございます」
「あっ!鉄兜がしゃべったっ!」
ミカルが小声で叫んだ。
ドロテアが乗っていた幌馬車。
そのバケットの下から、顔を出したのはアグニアの婆さん。
「あっ!あのババア!」
ミカルは二度叫んだ。
『おうおう、ミカル殿。悪いが手を引っ張ってもらえんか? 腰が上がらぬ』
「まったくぅ。なぜこんな所まで付いて来たんだよぅ?」
『悪いがその2人も一緒に引っ張ってくれないか。腰が沈み過ぎて手におえん』
「仕方ねえなあ」
ミカルと連れの2人はトボトボと馬車に近づくと、バケットから出されたアグニアの両手を掴んだ。
「よいっしょ!」
「はぁ~?なんだよ。軽いじゃないか」
「自分で立てなかったのかよぅ?」
『重い軽いの問題じゃないよ。ワシの腰の問題じゃ。お前らも腰を悪くするなよ』
「婆さん。俺たちをいくつだと思ってんだよ。まだそんな歳じゃないよ」
『そうかい、そうかい。では後ろを振り返ってごらん。腰を抜かすから』
「はぁ~?なに言ってんだい?」
『いいから後ろを』
ミカル達3人は、クルリと後ろを振り返った。
「うぁあぁあ~!!」
「なにをするんだ!お前ら!」
そこにいたのは、馬を下りた鉄兜達。
ミカル達に、槌と斧を振り上げ今にも振り落とさんばかりであった。
『ハハッ! ミカル。動くんじゃないよ。今からワシの言うことを聞くんじゃ。そうすれば殺すようなことはせん。黙ってその小屋に入っていてもらおう』
「なにを言う! 俺たちはドロテアさまの警護として、ここで見張っているんだ。お前の指示なんかに従わん!」
『黙れと言ったであろうがぁぁ!』
アグニアがそう言うと目の前にいた鉄兜が、持っていた斧を更に深く振り被った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ婆さん。一体なにをしたいんだ?」
『ゲルーダッ!』
アグニアのその声に反応した鉄兜が、ミカルの頬っぺたスレスレに斧を走らせた。
ミカルは腰からその場にヘタリ込んだ。
『ハハッ!若い男でも腰が抜けるんじゃ!わかったか!ハハハッ! おい!ゲルーダ!縛っちまいな!3人共じゃ!』
鉄兜達は腰を抜かしたミカル達を起こすと、その両手に縄を巻き、後ろ手にキツく縛りあげた。
『連れていけ! 3人ともじゃ!しばらく小屋に閉じ込めておけ!』
3人はさっきまで居た、ドロテアの造った暖炉のついた城壁の外小屋に放り込まれた。
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「おい、なんだよ。アグニアの奴。人が変わったようだった」
「ああ、なんなんだい? なにをしようとしてるんだい?」
「こんな事、ドロテアさまに見つかりでもしたら」
「そうさッ。俺たちだってドロテアのお気に入りのはず」
「許すわけがない」
「でさ、さっきの鉄兜。「入ったようでございます」って声。聞いたかい?」
「ああ、聞いた。ありゃあ女だ」
「でさ、もうひとつ。ゲルーダって」
「ああ、女の名前だな」
「あいつの兜は、今朝ミカルが、、、ほら卵のピクルス。くれくれないでもめた」
「あ、あの馬鹿力の!」
「え、あれって女だったってこと?」
3人は縛られたまま小屋に押し込まれた。
「食い込んで痛えよ。あの馬鹿力女!」
※第30話「バカ!バカ!ハラル!」に、ハラルのイメージ画を掲載しました。
いつもの色鉛筆画です。
宜しかったら是非ご覧になってみてください。
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