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62/1501

62~ミカルが女に縛られた?

 『ドロテアは城に入ったか?』

「入ったようでございます」


 「あっ!鉄兜がしゃべったっ!」

ミカルが小声で叫んだ。


ドロテアが乗っていた幌馬車。

そのバケットの下から、顔を出したのはアグニアの婆さん。


 「あっ!あのババア!」

ミカルは二度叫んだ。


 『おうおう、ミカル殿。悪いが手を引っ張ってもらえんか? 腰が上がらぬ』

「まったくぅ。なぜこんな所まで付いて来たんだよぅ?」

 

 『悪いがその2人も一緒に引っ張ってくれないか。腰が沈み過ぎて手におえん』

「仕方ねえなあ」

ミカルと連れの2人はトボトボと馬車に近づくと、バケットから出されたアグニアの両手を掴んだ。

「よいっしょ!」


「はぁ~?なんだよ。軽いじゃないか」

「自分で立てなかったのかよぅ?」

 

 『重い軽いの問題じゃないよ。ワシの腰の問題じゃ。お前らも腰を悪くするなよ』

「婆さん。俺たちをいくつだと思ってんだよ。まだそんな歳じゃないよ」


 『そうかい、そうかい。では後ろを振り返ってごらん。腰を抜かすから』

「はぁ~?なに言ってんだい?」


 『いいから後ろを』


ミカル達3人は、クルリと後ろを振り返った。


「うぁあぁあ~!!」

「なにをするんだ!お前ら!」


そこにいたのは、馬を下りた鉄兜達。

ミカル達に、つちと斧を振り上げ今にも振り落とさんばかりであった。


 『ハハッ! ミカル。動くんじゃないよ。今からワシの言うことを聞くんじゃ。そうすれば殺すようなことはせん。黙ってその小屋に入っていてもらおう』

「なにを言う! 俺たちはドロテアさまの警護として、ここで見張っているんだ。お前の指示なんかに従わん!」


 『黙れと言ったであろうがぁぁ!』

アグニアがそう言うと目の前にいた鉄兜が、持っていた斧を更に深く振り被った。


「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ婆さん。一体なにをしたいんだ?」


 

 『ゲルーダッ!』

アグニアのその声に反応した鉄兜が、ミカルの頬っぺたスレスレに斧を走らせた。


ミカルは腰からその場にヘタリ込んだ。


 『ハハッ!若い男でも腰が抜けるんじゃ!わかったか!ハハハッ! おい!ゲルーダ!縛っちまいな!3人共じゃ!』


鉄兜達は腰を抜かしたミカル達を起こすと、その両手に縄を巻き、後ろ手にキツく縛りあげた。


 『連れていけ! 3人ともじゃ!しばらく小屋に閉じ込めておけ!』

3人はさっきまで居た、ドロテアの造った暖炉のついた城壁の外小屋に放り込まれた。



ーーーーーーー


「おい、なんだよ。アグニアの奴。人が変わったようだった」

「ああ、なんなんだい? なにをしようとしてるんだい?」

「こんな事、ドロテアさまに見つかりでもしたら」

「そうさッ。俺たちだってドロテアのお気に入りのはず」

「許すわけがない」



「でさ、さっきの鉄兜。「入ったようでございます」って声。聞いたかい?」

「ああ、聞いた。ありゃあ女だ」


「でさ、もうひとつ。ゲルーダって」

「ああ、女の名前だな」

「あいつの兜は、今朝ミカルが、、、ほら卵のピクルス。くれくれないでもめた」


「あ、あの馬鹿力の!」

「え、あれって女だったってこと?」


3人は縛られたまま小屋に押し込まれた。

「食い込んで痛えよ。あの馬鹿力女!」




※第30話「バカ!バカ!ハラル!」に、ハラルのイメージ画を掲載しました。

いつもの色鉛筆画です。

 宜しかったら是非ご覧になってみてください。


いつもお読み頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外な急展開で、とても面白かったです。アグニアと鉄兜の繋がり、意外で意表をつかれました。表題とも相まって、楽しく読ませて頂きました。
[良い点]  62話まで読んでいるところです。  物語性豊かでとにかくおもしろいです。  そして読みやすい文章もいいですね。  「カザマンス」のときも思ったのですが、ずいぶんいろいろと調べられ、また勉…
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