59~夕飯はニシンの塩漬けビスコットサンド
※本日は2話投稿しております。
「ラーシュ!下に降りて来てくれ!夕飯の支度をするぞ!手伝ってくれ!ヤンも一緒にだ!」
鍵の無い部屋はバタと開けられた。
テオドールだった。
『支度? ヤンも一緒じゃ手伝えないぞ』
「大丈夫だ。厨房にもゆりかごが吊るされている。それに寝かせて時々揺らしてやればいい」
『なら。けどあれだろ?城の壁まで取りに行くのが先だろ?』
「それもな、今朝、夜の食事の分まで放り込まれているから大丈夫だ。今日は早めに夕飯を済ます。いつもはもう少し遅いのだがな。お前のせいだ」
『俺?』
「つまり、夕飯の材料まで投げ込まれたという事は、奴らは今夜何か用事がある、、、ということだ」
『で、なんでそれが俺なの?』
「ドロテアが来るということではないかなっ?」
『ドロテアが? 今夜?』
「そ、夕飯を食べにな」
『先に食べてしまっていいのかい?』
「メインディッシュはお前だからだよ」
『ばかな、、、』
「それよりなにより、お前まだ着替えて無かったのかい? 先に着替えろ。ニルスに今朝渡されたやつだ。早くしろ」
テオドールは部屋から出て行った。
『こんなものを着なきゃならないのかい』
それは、汚れ一つないプールポワンの白。暖かいベルベットの生地であったが、ラーシュの胸ははち切れんばかりの浮き上がった筋肉。首から下の3つ目までボタンが締まらなかった。
下に履いたタイツも同じく、今にも引き千切れそうであった。
『履き辛いし息苦しいなぁ。パツパツだ。貴族の奴らってのは格好の為だけによくもまあ、こんな物を』
独り言を言うと、ラーシュはヤンをゆりかごから下ろし、階下に降りていった。
「こっちだ。こっち」
ニルスが螺旋階段の西。間口の空いた大広間から手招きをしていた。
「広間の左手の奥が飯を作るところでな。そこだけ土間になっている」
『土間?そこは農民と同じかい?』
「ああ、薪が必要だからな」
『飯は出来上がった物が運ばれて来るって言ってなかったかい?』
「いつもはな。けど夕飯の分まで持って来る時は材料だけさ。だいたい材料をみれば何を作ればいいかわかる」
『へ~。大したもんだ』
「お前もそのうち分かるようになるさっ」
『分かる前にここを出て行きたいけどなっ。で、今日は何を作るんだい?』
「ここはな、朝の方が豪勢なんだ。夜は軽めだ。ドロテアが俺たちを太らせたくないんだろうな」
『まこと、至れり尽くせりだな』
「今日はな、ニシンの塩漬け。発酵させたやつだ。それをこの固いパンに挟む。ビスコットってやつにな。でぇ~最後にぃ、、スパイスにナツメグをフリフリ」
『俺にとっては充分。軽めではない豪華な食事だ』
ニルスは説明をしながら、ラーシュの胸元をパチクリと覗いていた。
『なんだニルス。どうかしたかい?』
「お前。その服。裏返しだ」
画・童晶




