55~アグニアとハラルの ひそひそ話
マウリッツ城の城壁の扉。その鍵は二つ。
持っているのはドロテアと、魔女狩りにあった色男たちを連行していたミカル。
そこが開かなければ、城に入る事は到底できない。
『ハラル。なにか良い方法はないかい?』
「なにがですか? 鮭の焼き方ですか?」
『バカもん!お前はいつもいつも、、、ここまで話してきてわからんのか?!』
「ハハッ!わかっておりますよ!その指輪が欲しいんでありましょう?」
『話の回り道はいらん! お前は行動力は人一倍だが、おつむの方がチト弱い』
「あ、アグニア殿。俺をバカにしましたね? いい考えがあるのですがね~」
『どうせろくでもない案であろう。フン!』
「どこかこの辺りでも良いのですが、魔女を見つけましょう」
『目の前におるではないか』
「いえいえ、こんなクソババアではなくて、もっと若くて結婚している女でございますよ」
『えいッ!!』
「痛ッて~!」
アグニアは思い切りハラルの膝小僧を蹴った。
『クソババアは余計だ! お前は明日から飯炊き男にするぞ!』
「飯炊き?、、、男?」
『まあ良い続けろ。大した話ではないと思うが』
「で、魔術使いに仕立てた女を探し出したら、きっとその男はドロテアの標的にされる」
『色男の嫁ということかい?』
「そうです。それでなければ意味がありません」
『しかしそれは大変な事だ。色男を旦那に持つ女を見つけ出すのが』
「そうなれば魔女の方はどうでも良いのですがぁ、ドロテアは必ずマウリッツ城にその男を監禁し、身体を貪りに向かうはず」
『ふふッ、間違いないな』
「その時、必ず城壁の扉の鍵は開けられる」
『ほう、若い魔女に色男の亭主。その段取りまでこっちでつけてしまおうということだな。たまには頭を使えるんだな。ハラル』
「しかし、今、城は氷の世界。ドロテアですら行き来もできない。来年雪が溶け出す頃までに魔女を探し出しましょう。ホントの魔女でなくてもただ、若い色男が亭主なら誰でも」
アグニアは曲がった背中のまま腕を組むと、土間の暖炉に背を向けた。
『あのな、ハラル。それなら一つワシに心当たりがある』
「ほう、さっきは大変だと言っておきながら」
『ふと思い出したんじゃ。この村の山手。なだらかな芝の丘の上。若い農夫がおる』
「良き顔の男?」
『ああ、ワシの亭主にしたいくらい』
「ご冗談を」
ゴン!
痛ッッ~い!また蹴ったぁ!
『なぜ知っておるかというとな。時々、、、月に一度くらいか、その農夫の畑で採れた野菜とこの村で上がった魚を交換に来るんじゃて。夫婦揃ってな』
「名は?」
『確かぁ、ラーシュ』
「妻は?」
『アデリーヌと言ったかのぅ』
「わかりました。ではその女を魔術使いの女に仕立て上げ、ヘルゲ男爵とドロテア夫人に密告致しましょう」
『色男を亭主に持つ女と言えば、すっ飛んで手下共が来るであろうな。ハハッ』
「で、そのアデリーヌという妻の器量は?」
『それも目の覚めるようなベッピンさんじゃ』
「、、、勿体ないな」
※第7話「アグニア婆さん」にまたまた挿絵を掲載。
15分で描いた、、、小説も書かねばならぬし、時間が無い。




