49~キルケとイワンの胡散臭い作戦
「どうする? キルケ」
「どうするも何も、取り返すことは、、、」
「できないよ」
「ヨーセスにも会う事はできないし、ましてやドロテアなんてな」
「トールは?」
「そのうち代わりの奴が行くと思うが、俺たちが戻って来ないのも」
「この街には住めないよ。店を勝手に開けて売りさばいちまったんだからな」
「売ったんじゃなくて盗まれたんだよ」
「金額にしたら、、」
「人生3回繰り返したって払えない」
キルケとイワンは考えあぐねた。
床にゴロンと転がると、頭の下で両手を組んだ。
「なあ、キルケ。あの魔女。アデリーヌだっけ? あいつの仕業にできないか?」
「え、どうやって?」
「魔女なら悪人だろ? 魔術を使えば何でもできるしさッ。魔女に仕立て上げるんだ」
「あいつが魔女でないのはドロテアだってわかってるだろ?」
「けど、本物の魔術使いだったら? ありえなくはないだろ?」
「まさか~?」
「しちまうんだよ。本物に」
「ほう」
「あの女が魔術で全部消しちまったってさッ」
「はぁ?それはどうかな?しかも一部始終をトールが見ていたんだぞ」
「ん~、そしたらぁ、、この白紙の札束の一番上だけは本物の金だろ? これを数枚トールに渡せば?」
「黙って味方に付いてくれるか、、、」
「じゃ、ヨーセスの店にすぐ戻った方がいいな」
「そうだよ。忘れてたけど俺たちはアデリーヌを捜すという名目でヘルゲの館を出て来たんだよ」
「あんな女好きのヘルゲじゃ、きっと通りまで下りて来る。俺たちがいつまで経っても戻って来なきゃ尚更だ」
「来る前に!急がないと!」
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「あいつらどこまで行ったんだよ、、、ヨーセスの婆さんの家なんてそんなに離れちゃいないし」
トールはロウソクのランプを持って、地下の階段を上がると店の扉を少し開けた。
「まだいるよ。ヘルゲ。しぶといなあ」
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キルケとイワンは家を飛び出した。
「魔術でお宝を消したなんて、ドロテアとヨーセスが信じるかなあ?」
「もう少し、、こう、、なんていうのかなぁ、嘘っぽく言えば俺たちが疑われるからさ、上手い言い方がないかな?」
「消したというか、ベルゲンの海賊をその魔術で呼び寄せて強奪されちまったとかさ。召喚術とか使って」
「だったら、店の奥まで荒らされてアデリーヌだって連れて行かれちまうはずじゃないか?」
「あの店には宝石や大きな水晶なんかも沢山あったろ? それを利用すれば更に大きな魔術を使えそうじゃないか? アデリーヌは品物は強奪されたが、身はそのぅ、、魔女術で守れて追い返せたとかさッ」
「ちょっと御伽噺くせえな」
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走って戻ったキルケとイワンがヨーセスの店の辺り、その四つ角が見えた時だった。
「あれ?」
「あれは、ヘルゲ?」
「やっぱりいた」
「もしかして、トールと?」
「まさか事の顛末、全部話しちまったか?」
2人は乾物屋の壁に身を隠した。
※またまた拙い色鉛筆の絵を掲載。
第4話「裸足のラーシュ」
本文の中ほどに差し込みました。
宜しかったら是非ご覧になってください。




