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46/1501

46~海賊・首領はマルク

 ヨーセスの店の調度品、宝飾品。

数々の宝をすべて盗んで行ったのはベルゲンの海賊。

それは嘘ではなかった。

このヨーセスの店の噂はそこで知った。ただこの海賊、タリエ侯爵とドロテアが密接に繋がっていることは知らなかった。



 『おうおう、戻ってきたか。どれ見せてみろ』

そう言ったのはマルク。この海賊の首領。まだ若い男だった。


ヨーセスの店に来たリーダーの男の名はオード。

「マルクさま。こちらの船室に」

オードはいかりの彫刻を施した木のドアを開けると、その部屋にマルクをいざなった。 

 

 『お~!これはぁ!』

「どうです、マルクさま。見事な品々でございましょう。とくとご覧ください」


 『凄い!よくやった!』

マルクはそのひとつ、金銀で細かく細工を施した髪飾りに手をやると、頭の上に刺した。

 『どうだ?オード』


「マルクさまのそのお綺麗なお顔立ちには、とてもお似合いでございますよ」


マルクはオードに近寄るとその肩をギュっと抱きしめた。

 『これでまたひと儲けができるな』

「ひと儲けどころか、大儲けでございましょうな。ハハッ」

若い首領はオードの頬にキスをした。


 『しかし、こんなにいとも簡単に強奪できるとはな。さすがオード』

「ちょろいもんでした。タリエ侯爵の名前を出した上に、ヨーセスという店主もおらず、代わりのアホ共がカバンの中も確認せずにわたしたちに、どうぞどうぞ!と」


 『ではドロテアもいなかった?』

「もちろんです。その為の朝駆け。ドロテアはそんなに朝早くは出かけませんからな。といいますかでかけられない」

 『なぜ?』

「なにしろ化粧の時間で半日とか」

 『俺は会ったことがないが、そんなに醜い女なのかい?』

「いえ、わたしもないのですが、心はもっと醜い奴だそうでございますよ」


 

 『タリエ侯爵さまにはいくつか貢がねばならない』

「この海域で私達が仕事できるのもタリエ侯爵さまの黙認のおかげ。それにはまた、この中のいくつかを差し上げなければなりません」

 

 『小物入れを欲しがっていたと。なにか良いものはないかと言っていた』

「でしたらこの、色とりどりの宝石を埋め込んだ木箱はいかがでしょう。底には見事な彫り物をしてございます。それとこの青銅に金を散りばめたペンダント、、それからぁ、、、」

 

 『ひとつでいい。そこまでする必要はない。しかもこれらは中々手に入らない品々。売りつけるなら侯爵より公爵さま。あるいはその上の大公様。それだけ貴重な品だ。きっと欲しがる。そうなればわたしたちが航行できる範囲も更に広がる。タリエにはひとつでいい。いままで充分差し上げている』

「わかりました」




 『では出発だっ!帆は立てたかぁ~! 風に乗れ~ぇ!』

マルクのその声にオードは甲板に出て、両手を高々と上げた。

「お~!」


港には6台の荷車が転がっていた。

 

挿絵(By みてみん)

タリエ侯爵

※本日は都合により、お昼に投稿いたしました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そつなく悪事を働けていたようですが、果たしてどうなのか興味が尽きません。今までにも思わぬ展開があって面白かったので。タリエ侯爵と繋がっていたというのも、意外性があって良かったです。そしてド…
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