44~ヘルゲ男爵が来ちゃった!
『裸だ!裸だ!アデリーヌが裸でどこかをうろついているぅ!捜さねばっ!捜さねばっ!』
「ヘルゲ殿!井戸はどうするのですか?!直して置かないとまたドロテアさまがお怒りになられますよ!」
『ペトラ、、、料理番の身分で何を言っておる。原因は氷だ。もう少し日が照って来ればそのうち融けるっ!』
「この底の魔女の服は?」
『置いとけ、置いとけ!そのまま井戸の中に。そうすればアデリーヌは裸のまんまだっ。ハハッ』
(バカな男だ。なぜこんな奴が男爵なのだ、、、まっ父親も爵位を持っていたし仕方ないけどさっ)
「お昼のお食事はどうされるんですっ?」
『いらん!いらん! それより素っ裸のアデリーヌちゃんだ!』
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ヘルゲは港に近い石畳。ドロテア通りまで走って下った。
耳には帆船のうねる音がバタバタ、ザブザブと聞こえていた。
『どこに消えたんだろうか? キルケとイワンもどこを捜しておるんだか?』
ヘルゲがキョロキョロとしながら、ヨーセスの店の前に来た時だった。
ガタッ
店の扉が開いた。
『ん?ヨーセスはおらんはずだが?』
ヒョイと顔を出したのはトールであった。
(あ、ヘルゲッ!マズい!)
『あれ?トールじゃないか? お前、ヨーセスの店で何をしている? ここはドロテアの店でもあるのだぞ』
「あ、あッ。そのぅ、つまりぃ。ヨーセスに店番を頼まれましてぇ」
『お前に?』
「私では力不足でしょうか?」
『普通ならキルケに頼むであろう? なぜお前如きに?』
「いえいえ、頼まれたのはキルケです。けど今朝は、、、そうそうヘルゲ殿の館に行かねばならないからと」
『、、、あ、そうか。うちに来たんだった』
「ねッ」
『しかし、店番て言っても、店を開けてないじゃないか?』
「あ、今からです」
『そんなことより、お前アデリーヌを見かけんかったか?』
「はて?アデリーヌとは?」
『魔女だ。可愛い~魔女のアデリーヌちゃんだ。しかも裸』
「いえ、全く。全然。知らない」
(確かに裸同然で店の地下にいるけどさッ、、、)
『ちょっとばかり走って来たので、喉が渇いた。お茶でもあるか?』
「あ、あ、あ~、中にお入りになるということですか?」
『当たり前じゃないかっ。ここはヨーセスの店。金を出してるのはドロテア。ドロテアが出しているという事は、その旦那。つまりわしの店でもある。入れろ』
(回りくど~い!)
「しかしここには湯もありませんし、茶の葉もございませんよ。私は店番を頼まれただけで勝手がわからないですぅ」
『なら仕方ないな。 お、そうだそうだ。キルケとイワンを見かけなかったか? 奴らにもアデリーヌを捜すように頼んだんだが』
「全く。全然。知らない」
『店番を頼まれたのがキルケなら、時機にここに戻ってくるであろう? わしは疲れたから、少し店の奥で休ませてくれ。な~に茶はいらんよ。いらん』
そう言うと、ヘルゲは勝手に店の扉を大きく開けた。
※またまた、絵を載せました。
22~夜霧のマウリッツ城。
今回は色付け無しの鉛筆のみ。拙い絵ですが宜しかったら是非。
いつも後載せでごめんなさ~い。




