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42/1501

42~また出た!アグニアの婆さん

「隠修士というと、あの乞食のような奴らですか?」

 『そうだよ』

「あいつらは修道士なのにそんなことを?」

 『するさ。金さえ出せばなんでもするのさ』


「しかし、ドロテアさまは上はタリエ侯爵から、下は隠修士まで操られているとは、、、流石でございます」

 『用は金だ。お前らだって本当はそうだろ?』

「いえいえ、滅相もありません」

 『金じゃなきゃ、妬きもちの一つも妬いてごらんよ。ハハッ』

「、、、」



パカポッコ パカポコ

 『ちょっと悪いが私はお小水をしたくなった。馬車をとめてくれ』



「おーい!馬をとめろ~!」

ヴィーゴが馬に乗った3人の男に、幌の枠から身を乗り出して声を上げた。

「お小水の時間だぁ~!ドロテアさまがお漏らしをしてしまう!止めろ~ぅ!」


 『ヴィーゴ。余計な事は言わなくて良い』



手綱を引くと馬車は浜の砂と石ころを飛ばしながら、ゴンゴンと止まった。


「ちょっとお待ちください。お小水の器を持って参りますので」

そう言うとヨーセスは馬車から降りた。

しばらくの砂煙が落ち着くと椅子下のバケットを開けた。

 パカッ



「うわ~!」

 「はい、ごきげんようぅ」


「な、なんだ!アグニアじゃねえか!まだここに入っていたのか!いつの間に~ぃ?!」

 「いつの間にって?浜小屋の品定めが終わってすぐにじゃ」


 

 『ん?どうした?ヨーセス。誰と話しておる?』

ドロテアが幌枠から身を乗り出して椅子の下を覗いた。

「まだここに。この中にアグニアのババアが入ってるんです!」


 『はぁ?』



アグニアがバケットから顔を出すと、ドロテアと目が合った。

「あ~、これはこれはドロテアさま。ついて参りました」


 『なんで? お前この先に用はないだろう?』

「ないと言えばない。あると言えばある」

 『なんだそれは?』


「ほれ、ワシもそろそろ老い先が短いのでな。一度オーロラを見たくてな」

 『見た事がないのか?』


「いや~、子供の頃にみたようなぁ、見なかったようなぁ」

 『ついて来たのはそれが理由か?本当に?』

「本当に」


 


 「おい!アグニア!どうでもいいからちょっと一回出てくれ!小水の器が取り出せない!」

「ゲッ!ワシは小水の器を枕にしとったんかいな? どうりで寝付けなかったわけだ」


 「早く!ドロテアさまが我慢できんと言っておられるわ!」


 『アホ!ヴィーゴ!また余計なことを!言っておりゃあせんわ!』


 アグニアが外に降りると、ヴィーゴが器を取り出した。

それを馬車の後ろに置くと、ドロテアがまたがった。

ヨーセスとヴィーゴはドロテアのドレスの裾を少し捲って手に持つと、ぼんやりと海岸線を眺めた。


 「この器。またバケットに入れるのかい?」

アグニアは不安そうに言った。

 「当たり前だ」

ヨーセスは笑って答えた。


 「もうすぐ着くが、嫌ならアグニア、ここで降りろ」

 「いや、もうすぐなら嫌でも乗って行く」


パカポコ パカパカ



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― 新着の感想 ―
[良い点] ヴィーゴのデリカシーのなさが面白かったです。相手がドロテアとはいえ、言ってもいないことをドンドンと。ちょっとドロテアも嫌な思いをしてもらい、溜飲も下がりましたが。ただ、自分と他人を繋ぐのが…
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