41~ドロテアとタリエ侯爵は繋がっていた
ドロテアを乗せた幌馬車はマウリッツの城に向かっていた。
パカポコ ポコパカ
『ラーシュとはどんな男だろうな? ミカルが言うのには今まで見た事もない顔立ちの、筋骨逞しい男と聞くが』
「ミカルが言うなら間違いないでしょうな。奴はこれまで何人もの男たちをマウリッツまで送り届けていますし、皆綺麗な美しい男ばかり。その中でも一番と言うのなら」
『ヨーセス。お前は淡々と言うのぉ?』
「え、なにか?」
『妬きもちは妬かんのか? おい、ヴィーゴ!お前もだ!』
ドロテアは横でウトウトしていたヴィーゴの頬を抓った。
「あ、あ、あ~、すでに焼き尽くされておるのでありまして」
「そうです、そうです。ドロテアさまがそのラーシュとやらに抱かれてしまうのかと思うと」
ヨーセスも追い討ちの言葉を発した。
『居ても立っても居られないというわけか? 嘘を言え!さっきまで大鼾をかいて寝ておったくせに、、』
ドロテアはプイと上を向いた。
「そう言えばさっきの浜の小屋の品々ですが」
ヨーセスはすかさず話を変えた。
『それがどうした?』
「ハラルたち海賊に、わたしの店に運び込んでもらうのはいいのですが、店の中はもう品物でいっぱいで置き場がありません。どうしたものかと」
『手狭か?確かにいっぱいだ。しかし、私が何も考えずにいると思っているのか?』
「なにかお考えでも?」
『ヨーセス、お前ベルゲンの町に店を出してみんか? あそこは私達の町に比べたらそれはそれは大きな町だ』
「ベルゲン!そいつは凄い!やってみたいとは思いますが、あそこはタリエ侯爵の領地。そんなことがまかり通るのですか?」
『私を誰だと思っている。ハハハッ!』
「バルデに名を轟かすドロテアさまでございます」
『私とタリエ侯爵さまとは親密に繋がっている。ヘルゲも知らぬことだがな』
「えっ、タリエ様と?繋がっている?」
「あ、俺!妬きもちを妬いてしまいます!」
「バカ!ヴィーゴ!そこは妬くとこじゃないよ!」
『何人の女をタリエ侯爵に送り込んだかのう』
「え、女を?誂えた?」
『そうだ、なにか問題でもあるか?』
「あ~、いえいえ。しかしいつの間に? どこで? わたしたちも知らないうちに」
「どこの女達ですか?」
『どこって。ほれ、今から行くマウリッツの城の男たち。その女房達。つまりは魔女としてひっ捕らえた女だ』
「あ!ではあのアデリーヌとかいう女もですか?」
『もちろんっ。だから死なせん。生きて私に奉仕してもらうのだ』
「ん~、けど今まで魔女は海にドボンッではありませんでしたか?」
『落とした所を見たことあるかい?』
「あ、無い」
『海に落とすと見せかけて、寄港したベルゲンの船に乗せていたのだっ』
「誰が?どうやって?わたしたちは手を下しておりませんが?」
『人を死に至らしめるとみせかけているのだ。形的にはお祈りが必要だ。お前らには無理だ』
「修道士さま達ですか?」
『隠修士たちだ』
ポコポコ パカパカ
【隠修士】画・童晶
※隠修士
3世紀頃から、世俗を離れ、孤独に清貧の暮らしを送るキリスト信者の人々がいました。
彼らを隠修士といいます。




