38~マズい!地下室に降りて来た!
ガチャリ
「お、キルケ戻って来たかい。ヘルゲはどんな様子だった、、あれ?なに?この人たち?」
「ベルゲンからのお客様だ。タリエ侯爵さまの使いの者たちだそうだ」
「ん?どうするの?」
「あ、お前には言ってなかったが、ヨーセスに言われていたんだ。留守中にベルゲンからのお客様がお見えになると思うから、そうしたら店を開けてやってくれと」
「値段わかるの?」
「 、、、だいたいはぁ、、聞いている」
キルケはトールの耳元に近寄った。
「でな、お前はアデリーヌを見張っておいておくれ。気づかれたらとんでもないことになるからな」
「ああ、わかった」
そう言うとトールは地下に降りて行った。
「あー、ではではタリエ侯爵の使いの方々さま。じっくりとご覧になってくださいまし」
「おい、お前!他の客が入って来てしまっては困る。扉を閉めておけ」
「あ、扉を閉めてしまいますと、中が真っ暗闇でして」
「では、店の前に一人立たせておけ!」
「おい、イワン!お前立ってろ。他の客が来たら、今日はタリエ侯爵の使いの者が来ていて貸し切りだと言え!」
ーーーーーーー
「っほ~う!凄いなこれは!金銀財宝の店ではないか!」
「なにかお気に召す物でもありましたらなんなりと」
「全部でいくらだ?」
「はッ!ぜんぶ~!店の物全部ということですか?」
「なんだ?ダメなのか?」
「いえいえ、ビックリ致したしだいで。たぶんでありますが、そのカバンの中の金で足りるかと」
「ほ~う。安いもんじゃないか。タリエ侯爵さまもきっとお喜びになる」
(フン!あれだけの金があるなら、この店の物なんかいくらでもよいわ!)
「ん?お前そこの階段はなんだ?お前の後ろ。そうそうその奥。 地下に降りている階段だが」
「ん~、あ、これは仕事場です。ヨーセスの仕事場」
「怪しいな。見せろ!その部屋!もっと凄いものを隠しておるんじゃないか? どけ!」
ズカズカズカ
「真っ暗だな」
「あれ、お客様どうされましたか?」
地下にいたイワンが言った。ロウソクランプ一つの灯りであった。
「テーブルだけか、、? ん?その奥の立っている女のようなぁ、、」
「あ、暗くてわからないかと思いますが、マネキンでございます。飾り付け用のマネキン」
「しかし、そのドレスは一級品のようだな。それもくれ」
「はいはい、わかりました。今すぐに脱がせまして上に持って参ります。上でお待ちください」
「わかった」
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「おい!アデリーヌ。脱げ!早く!またいつ下に降りて来るかわからん!早く!」
「いやですわ!着替えをください!私の着ていた服はどこにあるのですか?」
「あれは、ヘルゲの館の井戸の中だ。お前が飛び込んだと見せかけるためにな」
「は?私が飛び込んだですって? なぜそのような?」
「いいから、早く! 脱いだらこのテーブルクロスでも巻いておけ!ランプは消しておく」
そう言うとトールは、アデリーヌに背を向けて椅子にドカと座った。
(あ、背を向けなくても暗闇だ)




