30~バカ!バカ! ハラル!
(あ~、あのバカ!)
「それはもう、ドロテアさま!ポルトガルの奴らをちぎっては投げ!馬乗りになっては袋叩き!」
『ふふ、凄いじゃないか』
「金棒と剣を振り回してでございまして。なぁ、お前ら!」
(、、、、)
残りの賊たちは誰も返事をしなかった。
(あ~バカバカバカ! ハラルの大馬鹿!)
アグニアの婆さんの腸が煮え繰り返った。
『ほう、ハラル。それは見てみたかったな。お前の戦いぶり』
「あ~、ドロテアさまにお見せしたかったぁ~」
『で、ここには何点ほどあるのだ?』
「はい。数えましたところ184点!皆素晴らしくも美しいもんばかり!」
『ではもし私が全部買うと言ったらいくらになる?』
「えッ、全て! 全部ですと、、アグニア婆さん、どうしましょう?」
「ワシは知らんがな。今来たばかり」
「どうでしょう、本来であればドロテアさまの財産の半分は、、それほどの品々でございますが」
『ハラル。お前私の財産を知っているのかい? ハハッ』
「あ、すみません」
『お前、この品々をせしめる為に多くのポルトガル人を殺したのであったな』
「それはもう、ちぎっては投げ、、」
『人殺しというわけだな。大量殺戮』
「あ、はいぃ」
『この国の王。フレデリク様に密告しようか?』
「ゲッ!」
『ポルトガルとは友好関係にある王であられるからなぁ。それはそれはお怒りになる。この品物はたぶん、フレデリク王への貢ぎ物だったのではあるまいか? それが知れたらどうであろう、、そうだなあ、、火炙りかぁ、水責めかぁ? 可哀そうにのう』
(だから言うなと!バカバカ!ハラル!)
アグニアは地団駄を踏んだ。
『というわけでだ。いくらにする? ただとは言わぬよ。 お前の気持ち次第』
「え、は、あのぅ、、あ~アグニア婆さん、、どういたしましょう?」
「知らんがな。アホ!」
『ではこうしよう。安く叩いても可哀そうだ。ちぎっては投げしたのだろうしな。ハハッ! うちの男爵、ヘルゲの一生分の小遣いではどうだろう?』
ハラルとアグニアは頭の中で金額をはじいた。
答えは同時であった。
「安すぎますっ!!」
『ハハッ!ほう、知っておるのかい夫男爵ヘルゲの小遣いを? ハハハッ~!』
「だいたいは。噂で」
『ま、考えておいてくれ。で、私はこれからマウリッツの城に向かうのだ。その者たちに何か手土産をな、この品の中から12点ほど。あ、1人増えたので13だ。今買ってゆく』
「現金?」
『値段が決まってないのに払えるか!』
「、、、」
『ヨーセス、ヴィーゴ。この中から選べ。装飾の品が良い』
「はっ! かしこまりました!」
ゴン!
「痛たたたッ!」
ハラルは小屋の裏でアグニアに脛を蹴られた。
頭を引っぱたきたかったが、大男に手が届かなかった。
ハラル
画・童晶




