29~宝が凄すぎまして
『お出迎えが大勢のよう』
それはラーシュやミカルがマウリッツ城に向かう前、一泊した浜の小屋であった。
木造の浜小屋の周りには多くの人だかり。
明け方のことであった。
ドロテアはその歓迎ぶりに驚いたが、少し様子が違ったようだ。
『あれま、誰もこちらを見向きもしないぞ。なにか運んでいるようだぞ』
「小屋の中に仕舞いこんでいるみたいですが」
『この椅子の下のババアは、これを聞きつけて馬車に潜り込んだのだな』
「きっと、そのような用件かと」
ヨーセスは答えた。
パカパカ ポコポコ
「あ、あれは!ドロテアさまではないか!?」
「馬車が来る!」
朝日と波の反射を受けた黒馬車は、逆光の中、浜小屋まで光を放っていた。
その後ろには浜の砂煙がモンモンと立ち昇っていた。
馬に跨った先頭の3人が手綱を引くと、浜小屋の目の前で馬車は止まった。
椅子の下のバケットの扉がパカと開いたが、今度はそこに留まったアグニアであった。
「なにをしている?」
ヨーセスが馬車の中からその中の一人に尋ねた。
「へ、へ~。丁度良いところにお出でくださいましたヨーセス殿。おやおやドロテアさままで」
そう言ったのはハラルという海賊の首領。首領とは言ってもアグニア夫婦に雇われている大男であった。
そこにいた30人の海賊たちは運び込む手を止め、馬車の前に一列に並んだ。
ドロテアが幌枠から顔を出した。
『これは一体なんだい? なにかせしめたのかい?』
「はいはい。今回の代物は超のつく一級品でございます。たぶん見た事も無い物かと」
『ほほぉ、どれ見せてくれ』
ヨーセスが先に降りると、ドロテアに手を差し伸べドレスの裾が砂に当たらぬように捲った。
「中へ中へ。どうぞどうぞ」
ギギギ
浜小屋の扉を開けると、そこにはアグニアが腕を組んですでに品定めをしていた。
『婆さん。早いな。いつ馬車から降りたんだい?』
「そんなことより、見てごらん。この品々。ハラル、説明をし!」
「はいはい、え~とですね、これらの物は遠い遠い大海の果て、東洋の清の国の物でございます」
『清?』
「わたしたち以上の文化を持つ東の国の品々。青磁の輪花鉢、紫壇製の木箱。それからこちらが、青銅の水差しにぃ、、これがシャムの金葉の表文」
『なんだそれは?言ってることがわからんが、、』
ドロテアはそれら一つ一つを手に取った。
『見事な作りの物ばかり。確かに見た事もない』
「そうでございましょうな。この金銀漆器の髪飾り、西洋の物とは全く違います」
『どこで手に入れたのだ? 東の国の船がこの辺りを行き来しているのかい?』
「いえいえ、これらを買い上げて来たポルトガルの船がどういったわけかノルウエー海流に乗ってしまい、この沖合。わたしたちの岬の農園下で座礁しておりまして、助けて差し上げたというわけです。」
『助けたとは上手く言ったもんだ』
『殺ったのかい?』
「はい、今回だけは」
『宝が、、』
「凄すぎまして」
※20~脱げたアグニアのズロースに、またまた拙い絵を載せました。
宜しかったどうぞごらんください




