27~アデリーヌとキルケ
『ここはどこなんです?私はこれから一体どうなるんです?』
ヨーセスの店の地下室。ランプでもなければ真っ暗闇だ。
壁は古い木造の板張り。
カビのすえた臭いがムンムンと漂っていた。
「まあ、そこに座りな」
キルケはテーブルの下から二つの椅子を取り出した。
自分がその一つに座ると、座ったままもう一つの椅子を足でテーブルの反対側に押した。
「見えるかい?椅子。これだ」
キルケは押した椅子にランプを照らすと、そこにアデリーヌを座らせた。
アデリーヌが椅子におさまるとキルケとアデリーヌは向かい合った。
女の顔にランプを当てた。
「美しい女だな」
画・童晶
『そんなことより、わたしはこれからどうなるのですか?!どうするおつもりなのですか?!』
「いや~、ドレスを纏うと見違えるな。こんな美しい女子見たことがない」
『答えてくださいな!聞いていることに!』
キルケはランプをテーブルの真ん中に置いた。
「おうおう、悪い悪い。俺はキルケという。 ドロテアさまの下で色々とな、働かせて頂いている。
でな、ここはヨーセスの店だ。ヨーセスというのも俺と同じドロテアの手下みたいな者さ。ただな、ちょいと違うのはヨーセスはドロテアさまの一番のお気に入り。この店だってそうさ、ドロテアさまの息がかかっている。 奴は我々手下の中でも特別待遇。金も持っているし、俺達を小間使いにすることだってできる。金にものをいわせてな。 ここにお前を運んできたのもヨーセスの言いつけ。このことをドロテアが知っているのかどうかは俺達も知らない。 知っているならドロテアさまとヨーセスになにか理由あってのことだろう。つまり俺達はな~にも知らないのだ。ただヨーセスにここにお前を連れて来て、その服を着させておけと言われただけさ」
『何も知らずにこんなことを、、、』
「金だよ金。 だけどさッ。お前は魔女という身なんだよ。こうして生き延びていることだけでも有難いと思いなよ」
『私には主人も子もおります』
「ああ、知ってるよ。ドロテアさまはそう言う輩に目をつけるからな。 ただな、殺されてしまっては亭主とお子には二度と会えぬが、生き延びてさえすればそういう日も、、、あるかも知れんな」
『では、殺されない方法は?』
「ドロテアさまとヨーセスの言うことに逆らわないことだなッ」
キルケはもう一度ランプを掲げると、アデリーヌの顔の辺りを照らした。
「おや?」
『なんです?』
「そのドレスの衿」
キルケはその首にランプを近づけた。
「ハハッ!お前ぇ!それ後ろ前だ!」
『仕方ないでしょ!こんな服!着たことないんですから!』




