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25~ドロテアの楽園

 『えっ!それではこの城から出られないということじゃないか!?』

「まあ、そういうことになるな」

 

 『いつかは出られるのだろ?』

「ん~、それは俺にもわからんがぁ。ドロテアが亡くなった時か、、、」

 

 『そんなもの!いつかわからないじゃないか!』

「だから、わからんと言っているんだ。それにな、例えドロテアが亡くなったとしてもだ、こんな北の果てなど誰も来ん。忘れ去られ、ほっとかれて、扉は閉められたままになるであろうな。いくら城とはいえこんなところで戦争を起こす者もおらんであろうし、分捕ったところで使えぬ領地だ」


 『おいおい、それではここで一生を暮らすことになるではないか?』

「その通り。そういうことだ」

 

 『妻とはもう二度と会えないということか?』

「言っておくがな。この俺、テオドール。お前と同じ運命を辿たどって来たのだ」

 

 『えっ、ではテオドール殿も奥様を?』

「そうだ。妻がどこでどうしているのかも、生きているのかさえもわからないのだ」

 『、、、』


「よほどの器量良しなら、男爵ヘルゲの餌食。そうでもないならバレンツの海にドボンだ」


ラーシュは頭を垂れた。


 『では俺達は何のためにここで生かされてるのだ?』

「ドロテア夫人のためだ」

 『夫人のため?』

「ドロテアだけがこの城に入れる唯一の女。俺達の妻はヘルゲの餌食か死。そしてその夫たち。俺達がドロテアの餌食というわけだ」




 コツコツ コツコツ コツ

キリストの戦争と勝利の天井画。真っ白な壁に大きな振り子時計。

それらにたくさんの影が映り込み、揺れた。


 テオドールの背後から、ぞろぞろと螺旋を降りて来たのは皆美しい男たち。着飾った姿と立ち居振る舞いは貴公子然としていた。

 「ようこそ」

「ようこそ」

 「ようこそ」


 『お前達も皆?』

「左様ですよ。皆、妻を魔女に仕立て上げられここに収監された者達でございますよ。あなた様と同じ」

その中の一人の男が言った。

 


 『収監?収監というなら、刑務所みたいなもんではないのか! なぜこんなにも着飾っているのだ?』

「それはな、、」

 

 

 『あ、言わなくていい。なんとなくわかったよ。ドロテアのためだな、、』


「その通りだ。だから俺達は常に美しくいねばならんのだ。格好だけではないぞ。この城だって薄汚れては許されぬ。皆でちりひとつないように磨いているのだ。そう、この天井から吊り下がっているシャンデリアも、その彫刻もだ。つまり、」

 『つまり?』


 「ここはドロテアの楽園なのだ」

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラーシュの置かれた状況がだいぶよろしくなく、独特の場所に来てしまったことがよく分かりました。城内のさりげない描写が時計や絵画など、場を想像しやすくて良いと、思います。 [一言] こういう状…
[一言] おぉ、ドロテアの城……監獄ですな(>︿<。) ラーシュどうなっちゃうのか……
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