199~マウリッツ創成期物語7・「北海帝国の王妃」
極北の街マウリッツ。
アイスランドやスウェーデン、デンマークの人々も北の楽園の噂を聞きつけ、こぞってこの地に足を延ばした。
出来上がった商店街に人と物は溢れ、その群れの靴底の擦れに、ヒースの花の石畳の減りは早く、民は始終石の入れ替えをするほどであった。
街道にざわつくのは花のようにとりどりなお国言葉。噂は国中に広まった。
イブレートに命を下した王。カール1世。
わずか半年足らずで退位すると、その2か月後にはオルデンブルグ朝のクリスチャン1世に冠が与えられた。もちろんこの町の噂は王クリスチャンの耳にも届いていたが意に返さず。
彼は北海帝国の一つ。デンマーク・コペンハーゲンの中心部クリスチャンスポー城の宮殿で悠々とその生活を楽しんでいた。一つの帝国とはいえ、連合国。
他国のようなノルウェーの北の街には、全くもって興味を示さぬようであった。
それはクリスチャン1世をこの地に出向かせたくはなかった妻。
いわゆる王妃であった。
この王妃。錬金術伯の長女。
コペンハーゲンにおいて、時のデンマーク王クリストファー3世と結婚し、同日王妃として戴冠したが、子供を授かることなく王クリストファーは3年後に亡くなった。
未亡人となった王妃。翌年には敵対していた枢密院と貴族に配慮し、神聖ローマから新しい王を迎え入れることになった。
それがクリスチャン1世。
それが二度目の結婚。
彼女は再びその王妃の座に返り咲いた。
しかし、この北欧の帝国についてはローマ人の王よりも彼女の方が一枚も二枚も上手。
クリスチャン1世はなんの疑いも指示もせず、彼女の言うがままに従った。
噂に聞く極北のマウリッツ。
王が興味を示しても、その王妃は雪と氷に覆われている財産薄い地を罵った。
「身も凍る地。暖かいなど噂にすぎませんわ。花など咲くはずがありません。格下の貴族たちが私達にそちらに目を向かせ、そそのかし、出掛けようものならその隙に宮殿を乗っ取るつもりでいるんですわ。騙されてはいけません。ここから出てはなりません」
この王と王妃。
4男1女を儲けた。
子息たちは成人すると次々とこの北欧各国の王となり、マルグレーテという1人娘はスコットランド王と結婚した。
ただ王妃は末息子のフレゼリクを寵愛し続けてきた顛末か、
長男オラフはいつの間にか、この宮殿から消えていた。
ローマから迎えた王クリスチャン1世。
それを選択し4男1女を儲けた王妃。
名をドロテア・フォン・ブランデンブルグと言った。
賢く精力的な女であった。
↑クリスチャン1世
※第1話に、なんと!漫画家さがを様から頂きましたドロテア夫人のイラストを掲載致しました。
見事な彩の絵となっております!
是非ご覧ください!
※ドロテア・フォン・ブランデンブルグ
この時代に実在した王妃です。大まかですがこの通りの歴史といわれています。




