表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/1501

19~アグニアは海賊?

南西バルデ。

 アデリーヌが捕らわれた丘の麓。漁の村。

空はどんよりと灰色に染まり、西からの強い風が白い波の泡を天高く舞い上げ、民家の屋根に潮を吹きつけていた。


 そこに現れたのは黒塗りの幌付き馬車。

ドロテア一行だ。

漁から戻ってきたこの村の男衆。漁網の片付けの手を止めた。


「なんだ?あの馬車は? 屋根が付いている」

「黒く光っている」

「あんなもんに乗って来るのは、ドロテアさましかおらんだろう?」

「行ってみるか?アグニアのババアの家の前で止まったぞ」


 


 『お~い!アグニアの!アグニアの婆さんはおるかい~?!』

馬車の中から座ったままのドロテアが、その家の玄関口に声を上げた。

「お~い!アグニアの婆さんや~!」

追い討ちをかけるように隣に座っていたヨーセスも声をかけた。

が、返事は無かった。


 隙間だらけの板張りのボロ屋。通りからの小声でも耳を通すさまの家だ。

居れば必ず聞こえるはず。



「あ、これはこれは。ドロテアさまでございますね」

馬車の真横に歩み寄ってきた中年の漁師が声を掛けてきた。

 

 『そうだ。ドロテアだ。そんなことより、アグニアの婆さんはどこへいった?』

「はいはい、それを言おうと思いまして。ババアは二日ほど前でしたかな? 北の方へ出向くとか言って出て行きました」

 

 『は?あの婆さん一人で?』

「それは分かりませんが。数日薪まきに火はくべぬから、漁から戻って来たら自分達で火を焚けと言って」


 『ああ、そうかい。この丘の上のラーシュとアデリーヌの事が聞きたかったのだが』

「あ、あの連れて行かれた美しい魔女のことですか?」

 

 『、、美しいはいらん、、、お前らはその2人がどんな奴だったか知っているかい?』

「素性をですか? あまり農民との交流がないのでわかりませんが、、若い夫婦というくらいですか」

 『その程度ならいらん話だ。アグニアが北へ向かったのなら、私達も同じ。婆さんの居ないこの村に用はない』



ドロテアがそこを出発すると、通りには多くの漁民が軒に出てその馬車に手を振った。

「ドロテアさま~!お気をつけて~!」

「お身体をお大事に~!」

「またお会いできる日を楽しみにしておりま~す!」


ポッカポッカッ ガタゴトガタン

 『まったくもって、魚臭い村だ』

「さようでございますね」

ドロテアの言葉にヨーセスはすかさず相槌あいづちを打った。


 『で、アグニアの婆さん。北へ向かったという事は、また何か良い品でも分捕ったか?』

「自ら出向くようでは、よほどの品。それ以外には北へ向かう理由などございませんからな」

 

 『もう一つ楽しみが増えたわい。ハハハッ』


「あそこの漁民でさえ、あのババア夫婦こそが海賊のぬしなぞと誰も知りませんからな」


 『しかもじじいは、ほとんどこの村にはおりはせん。いつも浜小屋で私と宝を待っている。サバとニシンを焼いてな。ハハハッ』


挿絵(By みてみん)

※11~浜辺の小屋に、またまた私の描いたデッサン風イラストを掲載致しました。

宜しかったらご覧くださいませ。

また拙い絵ですが、あくまでイメージという事でお許しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ドロテアの悪巧みが進められている一方で、なにか抜けの有りそうな雰囲気がいいですね。このあたりになるとノルウェーの風土にも慣れてきたような錯覚を覚えます。 [一言] アグニア婆とドロテアがど…
[良い点]  やはり、背景の描写がかなりわかりやすく、そしてしっかりしてるので、それだけで雰囲気が作られています。  前のお話の青いドレスと牛革のブーツ。  端的な説明なのに、絵が想像できます。 […
[一言]  執筆、更新ご苦労様です❗  ヨーセスの目的は何なんでしょう❔    ドロテアとヘルゲにはいた~い目に遇って欲しいです。  色々と交錯さていて、どうなるのかめちゃ気になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ