187~ドロテア物語11・「生業は海賊」
「ドロテアの旦那様。あのぅ、お爺様が、、、」
「お亡くなりのようなのですが、、、」
「そちらの方は? 悲しくないのですか?」
「わかってる!わかってる! しかし今はそれどころではないのだ!」
「それどころ、、、って」
ポンッ!
「抜けた!」
ニーナの父親は、土の中からズボとシャレコウベを引き抜いた。
「旦那様。その頭蓋骨。もしイブレート様の物でありましたら、私達は持ち帰りたく思います。いくらここがマウリッツの城内といえ、この野ざらしはいけません。私達がお墓を立て手厚く葬りますので、こちらにお貸しください。ここに墓を立てたとしても、あなた達に管理はできますまい。さあ!お貸しください」
「ど~うぞッ」
「えらくすんなりと」
「俺はマウリッツの民ではない。イブレートがいかに優れた北の皇帝であっても関係はないのだ。ほら!」
ニーナの父親はその頭部の骨をポイとエスキモー達に放り投げた。
(なにかさっきまでと違う。私達の船を助けてくれた旦那様と違う)
コロロロロン
「ん?」
器のような丸い頭蓋骨から、紫に光る物がエスキモーの足元。葉を除けた芝土の上に転がった。
「お!これだこれだ!」
ニーナの父親が手に取ったのは紫の指輪。
「お!なんだ?なんだ?」
「それを探していたのですか?」
「なんだそれは?」
「ハハハッ!これは今朝方、うちの娘ニーナが海岸で拾ったものだ。俺の物だ」
「おやおや。宝石には人を変えてしまう力があるようですね。瞬く間に欲に駆られたというわけですか? どうりでさっきまでの旦那様と別人。マウリッツの悪魔でも降りて来たような風体」
「バカを言うな!俺の娘が見つけた物を取りに来て何が悪い!」
「あなた様はお爺様をお捜しに来たんじゃ?」
「両方だ!」
「しかし、朝方出掛けたばかりのお爺様。いくら持って行ったとしても、土の中のドクロ。そのまた口の中。そこまで埋まりますか? 本当に御捜し物ですか?」
「なにを言っている!紫の大きな宝石だと娘は言ったんだ!」
「この紫の月明かり。それにしてはガラス細工のような光り方でございますね」
「なんだ?綺麗に光っておるぞ!そんな物じゃないのか?」
「それは、紫水晶でございますよ。大した価値はありますまい。まるで懺悔王のイミテーション」
「なぜわかる? お前らはただ、バレンツの海を行き来しているだけの北の田舎者だろ? こんな物、見た事もないのではないか? 冗談を言うんじゃないよ!ハハハッ!」
「はい。北のツンドラの田舎者であります」
「ほら、ヘラジカと戯れているだけであろう?」
「もちろんですとも。ただ、、、」
「ただ?なんだ?」
「私達の生業は、海の盗賊でして、その件に関しては一級の目を持っております」
※前話「186話~ドロテア物語10・紫のドクロ」に挿絵を掲載したのですが、、、ちょっとラフな感じで、、、納得してませんが一応差し込みました。
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