表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

186/1501

186~ドロテア物語10・「紫のドクロ」

 「庭にもおらぬのかぁ、、、」

ニーナ・ドロテアの父親。暗くなった城の庭。その周りを一周した。

初めてここを訪れたエスキモー3人も、はぐれぬようにとその後をついて周った。


 「もう行く宛がない。あれだけ大声で叫んだんだ。いれば返事をするはずだが」

 

 

「少し休みましょう」

 エスキモーのピケルがナナカマドの下を指差した。

ふんわりと溜まった落ちた葉。4人で腰を下ろすには充分過ぎるクッション。

彼らはそこに尻を落とした。

 ピケルが頭の後ろで手を組むと、葉の上に仰向けで寝転んだ。

紫の満天の星空。降って来るようだった。


「んん?」

寝転んだそこ。頭の上から背中、つま先まで柔らかい塊を感じとった。

「なにか!この下に!」

ピケルはすぐに立ち上がると、風に積まれていた葉を両手ではらった。


パサパサパサ!


「うわぁ~!うあぁ~ッ! 出たぁ~!」


 「これはぁ!! お爺様ぁ!」

叫んだニーナの父親。ピケルと一緒に葉を除けると、その動かぬお爺様の体を抱き起こした。

 「お爺様!お爺様!」

起こした首は何も言わずコクリと垂れた。


ピケルがお爺様の鼻の下に人差し指を当てた。

「、、、息をしていない」


 「生きていないのか? 心の臓は?」

ピケルが鼻の下に当てていた手を、お爺様の胸の真ん中に当てた。


「ピクリともいわん」


 「悪いが葉をどかしてもらえぬか?」

「ん?なぜ?」

 「いいから。いいから」


そう言うとニーナの父親はお爺様のズボンや上着のポケットに手を入れた。


(どこにあるんだ? ない、ない。どこにやった?)


「旦那さま。何をしているのです? なにかお探しでも?」


掃い除けられた葉。暗い紺色の地面に掌を当てるとその上をさすり出した。


「なにか? なにを? お爺様は見つかったのですよ」


ニーナの父はそれには答えず、今度は少し土を穿ほじった。


コツン!

(あった!)


それは紫の月明かりに、オーロラ色に光った。

(丸い!これだ!サファイヤだ!)


ニーナの父親は彼らに背を向けて座り込むと、その周りの土を取り除き出した。


エスキモーの3人は立ったまま、その姿を見ていた。



 (嘘だろぅ?! デカすぎる!)

犬掻きのようにバタバタ穿ほひり出したニーナの父。

出て来たのは人の頭ほどの玉。

 

 「うああ!うああ!こ、こ、これはぁ~!シャレコウベではないかぁ~!」


 その白いドクロ。土から突き出ていた脳天。

夜の月明かりに照らされ、紫のオーロラ色に光っていた。


挿絵(By みてみん)


「誰のものだ?! まさかっ!まさかっ!」

お爺様の体を横に避けると、皆一斉に土を掘り出した。


 砂になった白い骨。薬の臭い。

その埃が一緒になって彼らの頭上に舞い上がった。


 芝土の下から出て来たのはプールポワンの錆びたボタン。

重ね革の貴族のブーツ。

兵や騎士の物ではない事は明らか。


 「まさか?イブレートさま?!」


お爺様は取り除いた土と葉に、その横でまた埋められていた。


※前話185話に挿絵を掲載致しました。


いつもお読み頂き誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ