166~テオドールの見解
マウリッツの城
寒さに震え、城壁の外の小屋に閉じ込められたミカル達3人。
ゲルーダ達に助け出され薬箱のある部屋。
薪を焚かれて身体が暖まったのか、すやすやと居眠りをしていた。
部屋の様子を伺いに来たのは、テオドールとニルス。それにラーシュとゲルーダだ。
「こいつら、気絶したままなのか、ぐっすり眠りについてしまったのか分らんな?」
「よく見てみろ、このミカルの顔。笑ってる」
「あれま、本当だ。気持ち良さそうだ」
「突いてみろ」
テオドールに言われたニルス。ミカルの頬をちょいと抓った。
「おい!痛ッい!」
「あ、生きてる!」
「こいつらはそんなにヤワじゃないからな。ハハッ!」
「お前らなにをするんだ! これから俺たちをどうしようとする気なんだ?!」
抓られたミカルが怒鳴った。
「まあまあミカル殿。怒りなさんな。ほれ、俺たちの後ろにいるこのゲルーダって娘が思い出してくれたから。お前達が縛られてることをさ。だから助かったんじゃないか。お礼を言っておけ」
テオドールが言った。
「ああ、ありがと、、、じゃないよ! そもそも俺たちを縛り付けて小屋にぶっこんだのはこの女じゃないか! 俺が礼を言う必要などあるかい! ゴホッゴホッ」
「ほらほら、気絶しておった身。ようやく身体が暖まったところだ。 騒ぐでないよ。まだ寝て置け」
「ん?して、この臭いは?なんぞ?」
ミカルが天井にその高い鼻を向けた。
テオドールも鼻を上に向け、クンクンと部屋の空気を吸い込んだ。
『そう言えば、、嗅いだことのある臭い』
ラーシュが言った。
「ああ、これか。これは薬の臭いだ。ユニコーンの角だ」
「は?なにを訳の分からない事を。ユニコーンなぞ伝説!おるものか」
「飲むか? 体にムキムキと精がつくぞ。病み上がりには持って来いだ!」
「?病んでないし」
「しかし異様な臭さだ。この部屋にはおれん」
「さっきまではそうでもなかったのにな」
ヴィーゴが応えた。
「この暖炉は使われた形跡がなかっただろ? だからずっと冷たい部屋のままだった。それがこの薪を焚いた熱で温められて、こんな異臭を放ちはじめた」
「なるほど」
「おい、ミカル。臭くても大丈夫。薬の臭いだ。嗅ぐだけでも効き目があるぞ」
「アホ!いい加減なことを言うなッ」
「まあ良い。もうしばらくここで安静にしておれ」
薬箱のある部屋に、様子を伺いに来たテオドールとニルス、それにゲルーダ。
そう言うと、その戸をパタリと閉めた。
「ニルス。外鍵を掛けて置け。なにをしでかすかわからん。ほれその足元のガチャリを」
「ああ。けどこの部屋は鍵があるのになぜわざわざこんな簡素な外鍵をつけたんだろう?」
「向かいのラーシュの部屋の扉。ここだけ粗末な戸だろ? しかしそれはおかしい」
「他の部屋の物より新しいのにな」
「俺の勘だが、このラーシュの部屋がイブレートの部屋。戸は盗まれた。向かいはその参謀の部屋。となるとだ、その簡易な外鍵も頷ける」
「なんで?」
「信用しとらんのだ」
「ほう?」
「いつこの薬箱の部屋の者に足元を掬われるかわからない。しかし非常時にはすぐに呼び出さなければならない。それが参謀ってことさッ」
「確かにこの足元の鍵なら、爪先でポイッとやればいい。ガチャガチャしなくても」
「しかしこんな鍵でも中からは容易に開かないさ」
「なるほど」
それを聞いていたゲルーダ。
ポツリと言った。
「お前らそっくりだな。話し方といい、そのエクボといい」
※前話 「165~掌の鍵」に挿絵を掲載致しました。
宜しかったら是非ご覧ください。
※このバルウの部屋の簡素な外鍵については「136話~鍵付きの部屋は魔物の部屋?」の上から6行目辺りで触れております。




