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165/1501

165~掌の鍵

 西からの一本道。

ヨーセスとペトラ婆さんは、連れだってヴィーゴとオロクを捜しに出た。

夕暮れの西日は2人の長い影をその砂利の道に敷いた。


と、その影の脳天が立った。

人影に照らされた。


 『あれ? ヴィーゴとオロクじゃないかい?』

「ほんに。歩き方でわかるわい」


 『お~い! ヴィーゴとオロクぅ! なぜこんな所を歩いているぅ?』

ヨーセスは2人に手を振った。


 「おー!ヨーセス!!いたいた!」

 「なぜって、お前が俺たちに鍵を渡した後、アデリーヌを捜しに行くと西に向かったからだよ!」

 「西って、この道しかないだろ?」


 『ああ、まあな』


 「で、アデリーヌはいたかい? ん? なんでペトラがいるのさ?」

 『ああ、アデリーヌはいたさッ。この西の農夫の娘だった』

 

 「えっ?どういうこと? あの娘は北東バルデの娘じゃなかったのかい?」

 『家に帰ったってことさ』

 

 「???」

 『そんなことよりさ、お前ら手ぶらだけど宝はどうした? 見つかったかい?』

 「それがさ、なんもない。引き出しや箪笥、汚い鏡台の上もガチャガチャ探したけど【Ⅰ-M】なんて物は無かった」

 『一つも?」

 「ない」


 『あッれ~?おかしいな。やっぱりタリエ侯爵に貢いじゃったのかな、、、』



「あるわけないじゃない。ハハハッ! だから言ったでしょ。鍵のお礼は【I-M】って入ってないやつを2,3と。元々無いんだよ!」

ペトラが笑いながら言った。


 『なんだ?知っていたのかい?ペトラ』

「何年奉公していると思ってんだい。しかもあのガサツな2人。そんなものあったって、その辺にポイ。その辺にポイッってことは、その辺になければないということ」

 

 『ややこしいが、意味はわかる』


「で、ヴィーゴとオロクや。もちろん鍵のお礼に首飾りか何かを盗ってきたであろうな?」


 「ん?あ、いや」

※「な~んで?わたしは確かに言いました!【I-M】じゃなくていいからと!」


 『まあまあ、ペトラ。ではとにかく一つも無かったんだ?』


 「いや、宝ではないが、一つだけあった」


 『は?どういうこと?』

 「ペトラが持ってた物だ」


「は?わたし?なんで? わたしは何も持ってはおらんよ」

 

 「今はね。ほらッ」


ヴィーゴは握っていたてのひらを上に向け、パッと指を開いた。


 『ん? 鍵じゃないか。あの館の玄関扉の?』

「それがどうかしたんかい?」

ペトラも覗き込んだ。


ヴィーゴを取り囲んだ4人の影が、更に東に伸びた。


 「あ、ごめん。逆さまだ」

クルッ

 「ほらッ」


「あッ~!」

 『あ~ッ!』

「イブレート様の!」

 『刻印!!』

4人は互いの頭を摺りつけながら、しばらくその鍵を青目に落とし込んだ。



挿絵(By みてみん)

文中※ペトラが言った「鍵のお礼」

   第102話~「上が変わろうが市民の暮らしは変わらない」

   下から9行目辺りで確かに言っている証拠があります。


※本日、前話164~「アデリーヌが作ったカツラ」と2話更新しております。


いつもお読み頂き誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今夜も楽しい読み物をありがとうございます! 2話連続でテンションが上がりました。 やっと4人が一緒になれましたね。 最後の注釈助かります!なんとなく覚えてるけど確認したいとき利用させてい…
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