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164/1501

164~アデリーヌが作ったカツラ

 ヘルゲの館の遥か西。

畑の中の一軒家。

ヨーセスは、アデリーヌの父親と話を続けていた。



 「ヨーセス殿。アデリーヌにお会いしていかれますか?」

爺様はスクと椅子を立った。

 

 『今、アデリーヌは中で何をしておられるのです?』


「カツラを作っているのでありますよ。自分の髪を切ってしまったので」

 『ドロテアとヘルゲの髪で? けどさっき三つ編みをしていたじゃないか?』


「あいつらはフサフサと一角獣のたてがみのような毛をしております。たわわな毛で幾つも作っておるようでございます」

 『その爺様の禿げた分もか?』

横にいたペトラがプッと噴いた。

「ヨーセス殿。何を言われますか?わしはもうそんな未練たらしいことをする歳ではござりません」


 『まだ農機具小屋にも沢山の髪が残っていたし、作ってもらえば良いではありませんか?』


それを聞いた爺様。返事もせずにアデリーヌを呼び出した。

「アデリーヌや。ヨーセス殿がお帰りになられますぞ。どういたす?」


 カツラ作りの手を止めたアデリーヌ。

出来たカツラを2つ3つ手に、ヨーセスの前に現れた。


 『アデリーヌ。どこに行ってしまったかと思いましたよ』


 ニコと笑ったアデリーヌ。

魔女狩りで連れて来られて以来、この娘の笑顔を見た事がなかったヨーセス。

頬を緩めて笑って返した。


 「ヨーセス殿。これをヘルゲとドロテアに」

『これを?って、カツラをかい?』

 「はい。こちらの短いものをヘルゲに。この長い方をドロテアに」


『は?どうした風の吹き回しだい? 自分で奴らの髪を切り刻んでおきながら』


 「あの2人は、この辺りにカニの化け物がいると信じて逃げ帰ったようですので」

『それが?』


 「今はきっと丸刈り頭」


「そう。丸刈りだった」

ペトラが笑った。


 「これをくれてやるから、もう二度とこの辺りをうろつくのではないと、、、カニ女が言っていたと告げてくださいませ」


 『気味が悪いな、、、』

 

 「そういうことです」

 『そういうこと?』

 「そう思われればしめたものです」

 

 『確かに。髪を切り刻んでおいて、カツラにして返すなど何か得体の知れぬ恐ろしい奴だと』

 「ハハハッ。そうですそうです!」

 『渡してみよう。どんな顔をするか』


 


 『では、爺様。俺の知らなかった話。たくさん聞かせてもらった。ありがとう』

「良いのですよ。イブレート様にてございますから」


 『あ、そうそう。では爺様のお名前はバルウ家の末裔ということなのであれば、バルウ爺様でよろしいのですね?』


「そうでございます。なのでこの娘。アデリーヌ・バルウにてございます」

 『カニ娘じゃないもんなッ! ハハッ』


ヨーセスとペトラは、連れだってバルウ爺様の家を出た。


ーーーーーーーーーー


 『ペトラの家にもあるんだろ? あの物干し、、ではなくてもう片方の槍』

「ございますわ」

 『それでお前も【I-M】の文字を知っていた? で、それはどこにあるんだい?』


「うちも物干しにしてありますわ。ハハッ」

『お前も物干しかい!』


「あ、それよりも何よりもヘルゲの扉の鍵はどうしました? それを探しに来たのですよ。私は」


 『ん? ヴィーゴとオロクが持っているはず。奴らにヘルゲの館の荒探しを頼んだんだ』

前話「163~館に戻ったヘルゲとドロテア」に挿絵を掲載致しました。

宜しかったら是非ご覧くださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  かつらと言うまた何か意味深なアイテムが登場しました。  どうなるのかなあ。  じい様の「未練たらしい」と言うセリフが可笑しくてばか笑いしてしまいました。笑笑  童晶様の笑いのセンスにやられ…
[良い点] いきなりハゲにブッ込むなんてヨーセスったら笑 カツラを渡されるなんて不気味すぎますね! アデリーヌに笑顔が戻って本当によかったです。 こちらまでホッとしました。 ヴィーゴとオロクは鍵閉…
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