14~薪割りの2人の男
ヘルゲは家の周り、その付近を一晩中捜し廻った。
「どこに消えたのだ、、」
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「ヘルゲ殿~!おはようございま~す!いらっしゃいますかぁ~!ヘルゲ殿ぉ~!」
ヘルゲの館の白壁が、朝の淡く黄色の陽を受け、それを地の芝に照らしていた。
屋根の上にいたピピと鳴く小さな鳥が、その声に驚き羽ばたいた。
「いない? 家の裏か?」
回り込んだ2人の男は、そこでヘルゲを見つけた。裏の入り口で枯葉の掃き掃除をしていた。
「あ、いたいた。おはようございます。ヘルゲ殿」
「んん? なんだお前らは?誰だ?その黒いホっ被りは?」
すると2人はその頭に被っていた布を取った。
「あ、すみません。キルケとイワンであります」
「おお、お前らか。で、なんでそんな格好を?」
「いえ、今日から魔女の番人を頼まれまして。ドロテアさまに」
「知っておるが」
「はい。ドロテアさまから、番をする時は魔の気に気をつけろと仰せつかったので、このような格好に。で、今からわたくしキルケが夕まで。そこからはこのイワンが一晩。イワンは一度ご挨拶にと付いて来たのであります。で、その女はどこに?」
「知らん!おりゃあせん!消えたっ! 今な、探しながら掃き掃除をしていたんじゃ! なにがあってもやらんとドロテアに怒られるからな。 ん?まさかお前らじゃないだろうな、、アデリーヌを連れ出したのは?」
「いやいや、わたくし達は今来たばかり」
「だよな、、」
「しかるに、その魔術使いの女はどこにいたんです?」
「そこの薪小屋だ。お前らがいつも薪をしまってくれとる小屋だ」
「もう一度、覗いてみましょう」
「おりはせん。今しがたも覗いたばかりだ」
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ガラッ
「ほんとだ。いない」
2人はその小屋の天井から床まで見渡した。
「なんだこの錨? 鎖もある」
「それはその女を縛り付けてあった物だ」
「ん~、これなら逃げられるはずはない」
「あれ?これはなんです? この焦げたばかりのような床は? まさか本当の魔女? ドロンした跡? 火と共に消えた?」
「馬鹿をいえ」
「なにかボヤでも起こしましたか?」
「知らん」
「あれ?ヘルゲ殿。その靴」
「なんだ」
「黒く焦げてますが?」
そう言うとイワンはヘルゲに膝まづくように屈んだ。
スッ
イワンが人差し指でなぞった手には、埃建つような煤がついた。
「これって、ちょっと前ですね。もっと前に焦げたならこうは付きません」
「なんだ。それがどうした」
「ここで消しましたね? ボヤ火事も知っていますね?」
「それが?」
「まさかまさかとは思いますが。もしかしてこの火事のどさくさ紛れにその女が逃げてしまったとか?」
「その前からおらんわ!」
「ん?では、夜この小屋に入ったという事でよろしいでしょうか?」
「あ、ま、まあな」
「お言葉ですが、その火事を理由に逃げ出したとかと言って実は、、」
「実は?なんだ?」
「ドロテアさまにわからぬように匿ってっておられるんじゃあ?」
「なにを言う!」
「少しばかり頂ければ。そのぅ、ヘルゲ殿のお小遣いからぁ。黙っておりますから」
「わしを脅す気か?わしはなんもしとらん!」
「またまたぁ」
「よいから、アデリーヌを捜すんだ!わかったな!小遣いはその後だ! 全くぅ、人の足元を見よって!」




