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135/1501

135~一角獣ヤン?

「策略結婚」

 「そのことをアデリーヌは?」


「無論知っております。バルウ家を背負って、ここから北東バルデまで出向いたということでありますよ。アグニアとペトラの用立てということであります」

 「なんという、、、」


「見た目は、、、親として言うのも気恥ずかしいのですが、穏やかで美しい女子おなごではあります。が、一旦火が着くと野蛮なことでも平気でやり遂げる娘でありましてな、、、」


 

 「ああ、それでか。やりすぎるくらいの演技でしたよ。俺でさえ彼女に本物の悪魔が乗り移ったと思ったくらいでしたから」

ヨーセスはテーブルの上、頭を抱えた。


「ハハッ。ヘルゲやドロテアの髪もパツパツとチョッキンナでありましたからな。ドロテア以上でありますよ」

 「確かにバルデの農村から連れ去られる時も、街を引き回された時も。それに俺の店でも坦々としていた、、、魔女狩りにあった他の女たちは皆、半狂乱だったというのに」


「当たり前ですな。そう仕向けたのですから。ただここに来た時は、魔女狩りは恐ろしいと泣いておりました。坦々と、、、こらえていたのでありましょうな」 


 「しかし、爺様は親ではありませんか? そのようなことをして肩身が狭くはないのですか? 辛くはないのですか? アデリーヌに申し訳ないとは?」


「この歴史は血で血を洗った暗黒な歴史であります。一つの家族の犠牲など、、、語れないほど辛く大きなものなのであります。これがバルウ家のやり方なのでございます」

  「誠、恐ろしい、、、」

「致し方ありませんな」


 

 「で、その子。ヤンはどうするのでありますか?」


「ヤン。その血は勇猛果敢なバルウの血。血気盛んな猛者ラーシュ一族。極北の寒さにも耐え頭脳明晰なエスキモー。その全ての血を一身に受胎しております。どれほどの人間になってしまうのか」


 「恐い、、、」


「西のヘラジカと呼ばれるラーシュ。イッカク海獣と呼ばれるエスキモー。馬に跨る賢者バルウ。その3つを足してごらんなさい」


 「足す?」


「一角獣ユニコーンでございましょう? ヤンは伝説の獣になるのでありますよ」


 「伝説の獣?」


「しかしながら、ここまではバルウ家のやり方。一族としての復讐は終わりです。しかし、もしこの先をお考えになられるのなら、ヤンをあなた様ヨーセス殿の参謀として差し出しましょう」


 「おいおい、爺様!ちょっと待ってくれ! マウリッツの復興とは言ったがまだ、、、しかもヤンはまだ赤子。少なくともまだ20年は先のことだ」


「何年でもお待ち致しましょう」


 「いやいや、待つのはこっちだよぅ」


ーーーーーー



ドンドン! ドンドン!

『おーい!爺さんいるかい~!開けとくれ~!』


 「爺様。誰か来たようだが? 隠れた方がいいかい?」

「あの声はペトラ。大丈夫だ」

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