133~城の部屋割
『ゲルーダ。お前はなぜそんなにくわしいんだ? しかも女子のくせに』
「おい!新入り! 女子のくせにとはなんだ! 差別するのも甚だしい!」
『いやいや、悪い悪い。だってな、俺の女房なんてそんなことには全く疎かった』
「島に住むとはそういうことだ。知らずに生きるすべがあったら教えて欲しいくらいだ!ハハッ」」
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「よろしいですか、ヨーセス殿。東から2つ目。その南向き。日の当たる部屋でございます」
「そこにバルウがいたと?」
「そうです」
「バルウ殿は城の中に住んでいた?」
「ヨーセス殿。バルウに「殿」はいりませんよ。バルウでよろしいかと。バルウはイブレートの護衛です。ヨーセス殿はその上に立っておられたイブレート様の遠いご子息」
「いや、それは大昔の話」
「まあよろしいです。今言った通り、いつ何時のことを考えれば、そこに住むのは当然でございます」
「確かにね。しかし爺様。なぜそれをお知りに?」
「ちょっとお待ちを」
そう言うと爺様は、さっきアデリーヌが入っていった部屋の扉をノックした。
「アデリーヌ入るぞ」
椅子に腰かけていたアデリーヌは、たじろぎながらも、それが父だと知るとまた深く腰掛けた。
『お父さま。あの男は? ヨーセスという男ではないですか?』
「ああ、そうだ。イブレート様だ」
『イブレートぅ?』
「また話す。とにかくお前はここに座っていろ」
というと、その部屋の北の隅。置かれていた木箱の底から巻かれた紙を取り出した。
「かなり古いからな。両手でそ~と持たぬとボロボロと千切れてしまう。アデリーヌ、わしが出たらまた扉を閉めといてくれ。手が塞がっておる。 あ、それから。ヨーセス殿がその頭を見たらひっくり返るからな。出て来るんじゃないぞ」
『殿?』
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「ヨーセス殿。これでございますよ」
「なんですか? この茶色く薄汚れた紙は?」
爺様は巻いてあった紙をクルクルと広げると、テーブルの上。紙の左右を両手でピタと止めた。
「んんん?」
「お分かりになりませんか? マウリッツの城に行ったことがお出ででございましょっ?」
「あ、城の図?」
「そうであります」
「建物の絵など見たことも無いから、どこがどっちで何がなにやら」
「よろしいですか。ほれ、ここです。こっちが西向き。こちらが東向き。なぜなら
ここにナナカマドの木が描かれております。腐ることなく生えておるならこちらが南東」
「そっか」
「ということは、この東から2つ目の部屋。南向き。なんて書いてあります?」
「B,,,バ、ル、、、バルウだ!!」
「そうです。バルウ」
「その北側。向かいの部屋でございます」
「王冠の印」
「たぶんイブレート侯爵様のお部屋」
「そうなのか? 他の部屋と大きさが変わらないぞ」
「庶民的なお方であったことがうかがえます。それにバルウが護衛の先鋒の騎士であるなら、この位置は当然の部屋割りかと」
「なるほど」
「北からは攻めて来る者はございません。なにしろエスキモーとは懇意。来るなら南。2階からの一望はここが最適」
「そこでその部屋か、、、」
「敵に対してだけではありません。バルウはイブレート様の番人。イブレート様のお身体のことも気遣っておられたようです」
「そうなの?」
「体が逞しかっただけではありません。お頭も大変よろしくて、ここで薬を調合しておったようです」
「なぜそこまでわかる?」
「逃げのびて来た2本の槍に結びつけてあったようです。イルカの皮袋にユニコーンの角を砕いた粉がたわわに」
※前話「132~捨てられたイッカクという女神」に挿絵を掲載しました。
けど、どうも動物を描くのが苦手で。涙
※文中の爺様はアデリーヌの父親ですよ。
歳をとってから産んだ子なので、こういう表現になってます。
分かり辛かったとしたら、私が未熟ということです。ごめんなさい。




