129~震えるミカル・運び出す男たち
「そうだった!悪いがお前らも来てもらえないかい?」
「どこに?」
「この城壁の外に小屋があってな。ドロテアがお前らを連れて来たミカルたちの為に造った小屋。知っているだろう?お前らをここに連れて来たミカルたち3人」
「それが?」
「わたし達が縛りつけて、小屋に閉じ込めたんだ。鍵を奪おうとしたんだが無かった」
「で、試しに外鍵の丸太を外したら、俺たちが出て来ちゃったってことかい?」
「、、、そういうことだ。両手を塞いじまった。だから、その小屋の薪をくべる事ができない」
「あッちゃ~!この寒さだ!凍え死んでおるぞッ! 急げッ!」
『テオドール、助けるのかい?わざわざ?』
ラーシュが聞いた。
「ああ、あいつらは根は悪くないのさ。ドロテアの指示のまま動いておっただけ。ほれ、ここに俺たちを連れて来る道すがら、ドロテアや海賊の悪だくみを洗いざらい話しておったろ?お前にも」
『確かに。火も持って来てくれたし、サバやニシンも手配してくれた』
「本当に悪い奴らなら、何も話はしないし、飯の用意なんかするかい?」
『ドロテアに頼まれていたからだろ?』
「だったら、飯や薪の手配はしても、ドロテアの陰謀などわざわざ話すかい?」
「表に出てくれ!」
ゲルーダがそう言うと、最初に扉を跨いだのはラーシュ。
他の12人。罠ではないかと右左。辺りは静かなものだった。
「あの小屋だ」
ゲルーダとセシーリアは走り出すとその小屋の扉を開けた。
パタン!
「寒ッ~!」
薪の火はとっくに鎮み、中は凍えんばかりの冷たい空気。ミカルたちは枯れ草の上でぐったりと横たわっていた。
「起こせ!起こして暖かい場所へ!」
「ゲルーダさま!縛った紐はどうします?」
「解いている時間はない!男たちに城内に運び込ませるんだ!」
ぞろぞろと駆けつけた男たち。
「何年ぶりだろう?外の空気」
「テオドール!しみじみ浸っている場合じゃないよ! 早く連れ出して! 死んじまう!」
どかどかと小屋に入る男たち。3人を数人掛かりで担ぐと、城内に移した。
セシーリアが言った。
「こうやって力仕事の男たちを見ると、なるほど美男ばかりですね」
「何を言ってる!セシーリア!今そんなことを言っている場合じゃない! ま、確かにそうだけどさ、、、」
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「どこか開いている部屋はあるかい?」
ゲルーダがテオドールに聞いた。
「一階にはないよ。二階のぅ、、、ラーシュの向かい。南向きだ。丁度いい」
「大丈夫かい?二階まで担いでいけるかい?」
「これだけの人数だ。わけはない」
横になって担がれていたミカルが薄く目を開いた。
「この中で誰より力があるのは、この女だけどな。ハハッ」
そう言うとミカルはまた目を閉じた。
担いだ彼の身体はブルブルと震えていた。
「この部屋だ。誰も使っていないし、、まだ開けたこともないが」
「鍵は?」
「この城に鍵の付いている部屋はないよ」




