122~ヨーセスの取り調べ
ヘルゲの館。その山手。
農夫の家を訪ねたヨーセスは、その爺さんからアデリーヌという名を聞いた。
今この部屋の扉を開けた三つ編みの女だ。
「爺様!今の女をここに呼んでくれ!アデリーヌなんでしょ?!」
「それが、どうかしたのかい? お前になぞ用はないであろうに」
「いえ、とっても大事な魔女なので、、、いや、女なのでありますよ」
「魔女とはなんだ! お前もドロテアの一味か? わしにとっては大事な一人娘だ!用件はなんなのだ?あ~?」
「えぇっ!娘?!」
「そうだ!可愛い娘だっ!」
「アデリーヌは北東バルデの更に東。その農夫のラーシュの妻ですよ?」
「嫁に出したのだ」
「え、本当に? それをこの町の者は誰も知らない? ヘルゲやドロテアも?」
「誰にも言っとらんし、お披露目もここではしていない」
「なぜです?」
「あのな。よく聞け。わしの妻はドロテアによって殺された。魔女の言い掛かりだ。その娘が大ぴらな事ができるかい? また魔女というレッテルを貼られ殺されてしまうじゃないか。しかも旦那になるラーシュ。目も覚めるようないい男だ。ドロテアに目を付けられる。こっそりとこっそりとだ、、、おっとマズい! わけのわからん輩に口を滑らせた!」
「ご安心を。私の敵はヘルゲ夫妻であります。それには爺様の娘アデリーヌが必要なのでございます」
「よくわからんが、、、」
「では聞きましょう。まずこの三つに編んだ黒髪はどなたの物でございましょう?」
ヨーセスはアデリーヌから抜いた髪の束をテーブルの上に置いた。
「確かアデリーヌはサラリとした淡い栗色の髪でございました。この髪は縮れたゴワゴワの固い黒髪。しかもヒョイと抜けた」
「知らんがな」
「変装ですか? しかしこの辺りは人の気配がない。こんな髪の束など集めようがない」
「人の気配? わしがいるじゃないか」
「髪の毛がないじゃないですか、、、ツルツルで」
「失礼極まりないな」
「カニの化け物というのは、、、ハサミを持っているということでしょ?」
「、、、」
「切られたのは、この見覚えあるゴワゴワの黒髪。これ、ヘルゲとドロテアの物じゃないのですか?」
「知・ら・な・い」
「ここに来る前にこの近くの農機具小屋にちょっとお邪魔したのですが」
「なんだ勝手に」
「勝手に?という事は、やはり爺様の小屋。そこの干し草の上に黒い髪がたくさん落ちていました。となりますとこれがヘルゲやドロテアの髪ならば、あの小屋で切られた髪を拾い三つ編みを作ったのはアデリーヌ」
「、、、」
「はい、決まり!その通りということでございましょう?」
「、、、」
「ということはヘルゲとドロテアは今、タコのような頭?ですね?」
「プッ」
爺様が噴いた。
※第69話「ドロテア夫人も逃げる!」に挿絵を掲載しました!
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