12~海賊とドロテアの秘密
『海賊ってのは、こう、、力自慢のぅ、筋骨隆々の大男や太った男達ではないのかい?』
「ハハッそりゃ迷信だ。奴らはただの盗っ人。もっとセコい。あのな、この辺りによその国の船が入るだろ。 するとな、難癖付けたりゴマを摺って船から下ろしちまうんだ。で、その隙に金品や家具を強奪しちまうんだ。」
『戦うんじゃないのか?その者達と』
「戦ったら負けちまう。口でちょろ負かす」
『さっきの爺さんにやった金は? 晩飯代にしては重そうだったが?それも奴らの稼ぎかい?』
「ま、そういうところもちょこちょこセコいが、あれは別な用件だ」
『別?』
「ここだけの話だが、あれはドロテアさまからの金だ。実はな、奴らがせしめて来た物はほとんどがドロテア行きだ」
『なんだ、急に呼び捨てかい』
「つまり、ドロテアはここの海賊を黙認している上に、その盗んだ物を献上させている。あ、いや金は払っているから、、、買い取ってるってわけさ。しかもその事をヘルゲは知らん」
『ヘルゲ様まで呼び捨てかい』
「噂では、男爵家の金はドロテアがすべて仕切っておってな、懐の中。ヘルゲはその小遣いでやり繰りしておるとか。それを皆知っているから、ヘルゲの言うことには耳を貸さない。ドロテアの言うことばかり聞いておる」
『なるほど』
「この賊たちも手なづけてるってわけさっ。そうそう、海賊っていってもな、別に盗みにはなんでもありさっ。奴らは山賊にだってなるのさ。良い品があれば海も山も関係ないからな」
『ひどいやつらだ。そんな風には見えん風体の爺さんだったが、、』
「それがもう、騙されてるってわけさ。ハハハッ!」
『そうかぁ、、』
「この小屋だって、漁の小屋の風情をしているが、実は奪った金品をここに仮置きしているのさ。今は何もありはせんが、よその国の船が入ればここは宝の山。藁や炭が置いてあるのはそれらしく見せるため。隠すのも藁の中」
『それで魚の臭いもしないし、綺麗にしてあるってわけかい?』
「ま、そういうことだ。まさかこんな掘っ立て小屋に、金になる物がしまってあるなど誰も思わんだろ?」
『ところで、ミカル?だったけ? お前そんなに俺にしゃべっちまっていいのかい? 俺が言っちまったらドロテアさまに殺されちまうぞ』
「大丈夫だ。お前がドロテアと話す機会はもうないよ」
『はっ?無い? 俺はこれから裁判に向かうのであろう? ドロテアさまもおいでになるって』
「あ、お、そうであった。失敬!失敬! まっ、では黙っててくれ。おっそうだ!お子にミルクを与えねばならんのではないか? さ、早よ早よ!」
ギャーギャー
「ほれ、泣き出した」




