103~「ネネツ族?」
『ヘルゲ!どこまで逃げるつもりだい?私は足がヤギの腹のようにパンパンだよ!』
「ドロテア!仕方ない!お前のせいだ! 宝をバンバン買い漁り、魔女狩りと称して男を漁りぃ!」
『ハアハア、火事に魔女狩りと男漁りは関係ないわ!』
「火事ってのは神のぅ、、天の配剤だ! 昔は火事が起きれば魔術使いが念術を唱えて消しおったわ!」
『だからそれがどうした?』
「ハアハア、つまりだ!お前が次から次へと魔術使いを殺しちまうからこういうことになるのだ!こんな時のために働いてくれる魔女がいなくなってしまったではないか!ぜ~んぶ!ぜ~んぶいなくなったわい!このわしに少しでも悪戯をさせてくれても良かったのにぃ!」
『アホ。これは自然に起きたり、誰かの間違えで火が着いてしまったのとわけが違うだろ!海賊が着けた火だ!呪術や魔術とは違うだろ!ハアハア、息が切れるわ。』
「お前が無茶なことばかりするから、神が怒ったんだ!」
『お前、私をバカ扱いしておるだろ?』
「ああ、いつかは言ってやらねばと思っておったんだ!」
『お前こそ単なるデロデロの女好き。しかし私は違う』
「なにがだ? どこがだ?」
『ヘルゲ。お前はこんな時のために何か手を打ってあるのかい? 領主だろ? 逃げておるだけではないか?』
「では。なにか? お前はなにかしておるのか? 領主夫人ッ」
『火を祈りの術で消せばいいのであろう?』
「そうだ」
『いつも近くにおるではないか? 私が雇った召使いの料理番が』
ヘルゲとドロテアは相手の顔を見るでもなく前を見ながら、走りながら言いあった。
「なんだ? ペトラのことか? ペトラがどうかしたのかい?」
『マーゲロイ島から連れて来た』
「ああ、知っているよ。それがどうかしたのかい?」
『出身はマーゲロイ島ではない。ネネツ族。顔を見ればわかるだろ?この辺りの者共とは違う』
「ハアハア、いやいや、わしらの街は多民族だ。色んな人種がおるでの。顔を見たって、、どこの者かなぞ気にはせん。で、ネネツってのは?」
『マウリッツの更に北東。北極圏だ。そこに住むエスキモー』
「トナカイを遊牧してる奴らか?」
『そうだ。して、その肉を生で喰らうのさ』
「生肉を食うのは、、、魔術使い」
『わかったか?ヘルゲ男爵どのッ。私は常に魔術使いをそばに置いていたというわけさ!』
「けど、行っちまったぞ、ペトラ。魔術使いの意味が無いではないか!?」
『だから私は、召使い如きに「裏切者~!」っと言ったのさ、、、』
「けど行っちまったな」
『ああ、行っちまった、、、』
※前話102話に挿絵を掲載しました。
逃げるドロテアとヘルゲ。お暇するペトラという感じ。
尚、挿絵の表現上、煙や建物の位置関係等はデフォルメしてございます。
拙い絵でありますが宜しかったら是非ご覧ください。
あくまで雰囲気ということで。




